キリマンジャロの水の恵み
前回はキリマンジャロ頂上の氷河の観察をしたが、今回はそのキリマンジャロの水が生む風景だという。
熱帯にもかかわらず山頂に氷河のあるキリマンジャロは水資源も豊富である。標高4200メートルの辺りでは火山岩の間に多くの泉があるという。これらは川となって山を下っていく。その周辺にある奇妙な植物がジャイアントセネシオ。寒冷な高地でありながら高さ8メートルもある草だという。枯れた葉を防寒のためにまとったその姿は独得なものがある。
多くの動植物を養い、有名なコーヒーを産み出した
標高3000メートル付近にはハート型の森がある。地下水によって生まれたもので、その下にはさらに深い森がある。これが熱帯雨林である。一年中濃い霧に包まれており、雨も非常に降るのでこれが水の恵みとなる。この湿気のためにコケの楽園となっている。木から多くの地衣類がぶら下がっている。インド洋からの湿った風が山に当たって雨を降らすのだという。孤立しているので固有種が多いのがこの森の特長だという。さらに標高1500メートル付近には豪快に水が落ちる滝がある。柱状節理の崖から水が流れ落ちている。
ここからさらに下るとサバンナになる。キリンなどの野生動物の宝庫である。乾期には雨が少ないが、キリマンジャロからの水が湧き水としてあふれ出しており、この水が野生動物を養うのだという。このような泉は野生動物にとっての命の水場となっている。水浴びをする象の姿などが見られる。付近のマサイの民も乾期には家畜に水を飲ませるためにやって来るという。タンザニアの森の中に夢のような青い泉があるが、これもキリマンジャロの水が湧き出した冷泉だという。さながら天然のプールである。
キリマンジャロと言えばコーヒーが有名だが、そのコーヒーを産み出したのもキリマンジャロの水だという。麓のコーヒー農園によると葉に夜露が付くことで乾燥から守られ、水はけの良い火山灰の土に寒暖差の大きな気候はコーヒー栽培に最適なのだという。
忙しい方のための今回の要点
・キリマンジャロからは大量の地下水が流れ出しており、それが生態系を養っている。
・湧き水の周辺からはジャイアントセネシオという独得の巨大な草が生えている。
・標高3000メートル以下には熱帯雨林が存在し、湿気が多いことからコケの楽園となっている。
・さらに麓のサバンナに水が湧き出しており、これらは乾期には多くの動物にとっての貴重な水場となっている。
・キリマンジャロはコーヒーが有名であるが、夜露で葉が乾燥から守られ、水はけの良い火山灰土に寒暖差の大きい気候はコーヒー栽培に最適なのだという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・この年中枯れない豊富な水も氷河から流れてきていると思うのだが、もし氷河が消失したらキリマンジャロの水資源にも影響が出そう。となるとかなり大きな生態系への影響が懸念されるところ。
次回の世界遺産
前回の世界遺産