夏に注意が必要な脳梗塞
夏に注意すべき病気の1つが脳梗塞。脳梗塞の症状が出ているにも関わらず、熱中症と間違うことで治療が遅れてしまう例があるという。そこで今回は脳梗塞と熱中症を見わけるポイントについて紹介する。
脳梗塞は特に夏に起こりやすいということはないが、季節によって原因は変わるという。冬は血圧が上がることによる不整脈で、心臓に出来た血栓が脳に詰まる心原性脳梗塞症が増加するのに対し、夏は脱水状態になることで血管内に血栓が出来るラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞などが増えるという。そして厄介なのは脳梗塞のサインであるふらつきやめまいが出た時に、熱中症と間違えやすいことだという。
脳梗塞と熱中症の見分け方
実際の経験者によると、猛暑の朝にバイクに乗っていて左足が外れたような感覚がしたのだという。バイクを降りて屈伸してみるとそのまま後に転倒してしまったという。この時彼は右前大脳動脈解離による脳梗塞を起こしていた。これは動脈の血管壁が剥がれて血液が入り込んで血管が狭くなって発症する症状である。幸いにして彼は近所の人が救急車を呼んでくれたおかげで助かったという。
脳梗塞のふらつきやめまいを熱中症と見わけるポイントは、片側だけに手・足・顔の麻痺などの症状が出ることだという。ただ症状が弱いために気付かない例もあるとのこと。
92才の女性の例では熱中症だと思って自宅で休んでから診察を受けたところ、脳梗塞が判明したが治療の遅れで麻痺が残ってしまったという。彼女はラクナ梗塞で比較的小さい脳梗塞のために症状が軽かったのだという。脳の細い血管が詰まることで生じ、直径15ミリ以下の小さな脳梗塞がラクナ梗塞である。夏に増加するが症状が軽いから気がつかないことがあるのだという。
脳梗塞のチェック法と治療法
なお脳梗塞のチェックとしてはFASTが有名。FはFaceで顔面に麻痺が出ていないか、AはArmで目をつぶって掌を上にして両腕を挙げて10秒数え、片方の手が下がったり内側に傾いたりしないか、SはSpeechで呂律が回るか。「パタカ」を3回連続で言えるかをチェックするという。これが当てはまると直ちに診察を受けるように。TはTimeでこれが勝負である。
次の事例は急に左手に力が入らなくなったと言う例。本人は休めば大丈夫だと思ったそうだが、実は塞栓源不明脳梗塞症(どこから血栓が来たか分からない脳梗塞)だったのだという。糖尿病などがあると血管が傷つきやすいし、飲酒や喫煙の習慣が要注意で、これが血管内に血栓を作るのだという。さらに脱水状態の場合は危険である。彼女の場合は娘が#7119に電話して相談をしたことで治療につながったのだという。彼女はt-PAという薬で血栓を溶かすことで治療できた。この薬は発症から4時間半以内に使用する必要がある。それを超えると弱くなった血管が脳出血を起こす可能性があるので使用できないのだとか。
以上、夏に気をつけるべき脳梗塞。なお脱水のせいで夏に急増するのかと思っていたら、脳梗塞は実は年中通じて患者数の変化は少ないらしい。これは知らなかった。
なお脳梗塞の症状の特徴的なものは半身麻痺というのは昔からよく聞く。結局は今回もそれに注意しろということのようである。
忙しい方のための今回の要点
・夏場の脳梗塞はめまいやふらつきなどの症状を熱中症と間違えることで治療が遅れる危険がある。
・見わけるポイントは、片側だけに手・足・顔の麻痺などの症状が出ること。ただし症状が弱くて気付かない例があるので注意。
・脳梗塞のチェックとしては顔面麻痺がないか、両手を挙げて片側だけ落ちないか、呂律が回るかなどがある。治療は時間を争う。
・発症から4時間半以内なら、t-PAという血栓を溶かす薬が使用できる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・夏場はそれでなくても体調不調を起こしやすい時期なので要注意。かく言う私も今年の夏は夏バテがひどくて食欲が・・・。
次回の健康カプセル
前回の健康カプセル