教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/25 TBS系 世界遺産「モロッコの白い迷宮都市」

モロッコの白い城塞都市

 北アフリカ・モロッコのテトゥアン旧市街は、白い壁の建物が並ぶ美しい町である。内部はまるで迷路のようで、その中に数百年使われている水路が続いている。


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 東西1キロほどの町は斜面に家が立ち並んでいる。町は高さ5メートル以上、総延長5キロの城壁で囲まれた城塞都市である。出入口は7つの門。中には公共の水場があって、常に出ている水は誰でも自由に使える。市街は迷路のようだが実は目印がある。中央に三本線があるのがメインストリートで、これを辿れば必ず門にたどり着く。二本線は路地で一本戦は行き止まりとなっている。

白い建物が並ぶテトゥアン旧市街

 この町を作ったのはスペイン人。フランス語やアラビア語が一般的なモロッコで、テトゥアンでは20世紀にスペインに植民地支配されていたことからスペイン語が多い。この地域のスペインとの関わりは深く、実際にスペインのグラナダの町とテトゥアンは似ている。イベリア半島には8世紀からイスラムの王国があったが、しかしキリスト教勢力の拡大で、アンダルシア地方を最後に15世紀末に滅ぶ。この時に数十万のイスラムの人々がアンダルシアからモロッコに逃れ、川を辿ってテトゥアンに行きついたのだという。だから都市はアンダルシアに倣ったのだという。イスラム教徒にとっては噴水は楽園の象徴だという。スークという市場は人で賑わい、革製品や陶器の交易で繁栄した。

 

 

今も使われている地下水路にスペインから伝わったタイル装飾

 テトゥアンの町中の水場は地下の水路網によって成立している。スクンドと呼ばれるこの水路の管理をする専門家がおり、配管のトラブルなどをメンテしている。しかし今はなり手がいなくなっているとか。山の斜面にいくつかある水源からこのような水路を張り巡らせたのだという。管理人は配管が詰まらないように定期的に清掃をしている。これらの水路は今も町の人々の暮らしを支えている。

 交易で財を成した商人の邸宅は、富の象徴である噴水が据えられ、柱はゼリージェと呼ばれる色タイルで装飾されている。一つ一つタイルを並べて模様を作ったもので、専門の修復職人がいる。これらのタイルはスペインのアンダルシアから伝わったものである。これがテトゥアンで独自のゼリージェとして発展させた。ゼリージェの色は5色だが、そのうちで緑色はモスクにだけ使われる神聖な色なのだという。

忙しい方のための今回の要点

・モロッコのテトゥアン旧市街は斜面に白い建物が密集する美しい城塞都市である。
・迷路のような通路は、三本線があるのがメインストリート、二本線が路地、一本線は行きどまりという目印になっている。
・8世紀からイベリア半島にはイスラムの王国が存在したが、キリスト教勢力の伸長でアンダルシア地域を最後に15世紀に滅亡、その際に数十万人のイスラムの人々が海を渡って都市を築いた。
・テトゥアンは斜面にある水源からスクンドと呼ばれる無数の地下水路を引いており、その配管を管理する管理人が巡回している。
・邸宅やモスクではゼリージェと呼ばれる色タイルの装飾があるが、これはそもそもスペインのアンダルシアから伝わって独自の進化を遂げたものである。

 

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・いかにもエキゾチックという印象の町です。ただあまりにも路地地獄なんで、火災とかの防災面は大丈夫なんだろうかと心配になるが、石造りの建物が多いから大規模火災は少ないんだろうか?

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