王宮の白馬を育てた牧場
チェコでは450年続いている牧場が世界遺産となっている。ここでは年間40頭ほどしか生まれないクラドルバーという希少な白馬を繁殖させている。
その牧場はチェコのクラドルビ・ナド・ラペムという村にある。ラベ川の川岸に450年前にその牧場は作られた。現在は600頭ほどのクラドルバーが飼育されている。この牧場では白毛の馬を育てている。牧場には調教場もあり、この牧場すべてが世界遺産である。この牧場は元々ハプスブルグ家によって建設された。
一頭一千万円は下らないというその馬の血統は徹底して管理されている。クラドルバー種は馬車専用の馬で皇妃エリザベートの馬車を引いたこともある。エリザベートは馬を愛した皇妃で、その時の豪華な馬車は今も保存されている。過剰に装飾された豪華な黄金の馬車は、重いために8頭の飾り立てたクラドルバーによって引かれた。
馬車用の馬としての伝統
子馬は最初は白くないが、成長と共に白くなるのだという。親から離された子馬は3才になると調教される。最初は人が騎乗しての訓練から始まり、ここで基本的な動きが仕込まれる。この訓練を終えるとベテランの馬と組んで馬車の引き方を習うことになる。馬車を引く時のための美しく見える姿勢まで仕込まれるのだという。この馬はベルギー王家に愛されている。この儀式の伝統が世界遺産の理由だという。
牧場のある川岸は元々は湿地だった。それを水門で水の管理をして広大な牧場が作られた。現在の形には19世紀から20世紀初頭になった。自然の森のように見える調教場は、実は人工的に造られた庭園だという。厩舎は宮殿に見立てられており、放牧地は応急の庭園に当たる。この牧場では120人ほどの村人がスタッフとして働いている。1918年にハプスブルク帝国が崩壊してチェコスロヴァキアが成立する。そしてプラハの春にソ連が軍事介入して社会主義国家となると牧場にとっての受難の時代となる。白馬はブルジョアの象徴として敵視されることになる。この時期、牧場の馬はその力を活かして農機具を引いたという。しかしやがて馬車を引いたりなどで特に西側で評価が上がってきた。この間、牧場を必死で守ったのが村人達だという。
忙しい方のための今回の要点
・チェコでは450年続く牧場が世界遺産に認定されている。ここではクラドルバーという貴重な白馬が飼育されている。
・元々はハプスブルク家によって建設された物で、湿地を水門で広大な牧場にしており、敷地内には厩舎だけでなく調教場なども整備されている。
・馬の血統は厳密に管理されており、皇室などの馬車を引くのに用いられた。皇妃エリザベートは特にこの白馬を愛し、豪華な馬車を8頭立てで引いた。
・現在もベルギー王家の馬車を引くなど、伝統的な儀式に利用されており、その伝統が世界遺産の理由でもある。
・しかしこの牧場も、チェコが社会主義体制となってからはブルジョアの象徴と敵視されて苦難の時代を迎えた。そんな中で牧場の伝統を必死で守ったのは、周囲の村人達である。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・なかなかに風変わりな世界遺産であるが、伝統を伝えているという意味で文化的に意味があるということだろう。それにしても世界遺産も何でもありって気もする。
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