柱サボテンの森
メキシコのテワカン・クイカトラン渓谷は、20メートル級の柱サボテンが林立する異様な景観を誇る。またここはメソアメリカン文明の発祥の地でもある。
世界遺産エリアは東京都の2/3の面積がある。ここには柱サボテンが世界でもっとも多く群生している。森の木のように見えるのは柱サボテンで、100メートル四方に最大1800本が生えている。高さ18メートルのサボテンは100年の寿命がある。また左曲がりの固有種も存在する。サボテンの中は90%が水分で、これで乾燥気候に対応している。メキシコ湾との間に2000メートル級の山脈があるために渓谷は乾燥するのだという。
この地には枯れたサボテンの芯で建設された家がある。木のような強度があるという。また秋篠宮夫妻が訪れた時に「象の足のようだ」と言ったことから象の足と呼ばれるようになったサボテンもある。
またこの地には様々な生物も暮らしている。絶滅危惧種のミドリコンゴウインコという美しい鳥も断崖を住処としている。このような生物の存在も世界遺産に指定された理由。
トウモロコシと共に暮らした先住民
またメキシコの郷土料理のトルティーヤに不可欠のトウモロコシは、この渓谷によって育まれた。この地では狩猟採集で人々が暮らしていたが、1万年前に人が暮らしていた遺跡が1960年に見つかり、そこからトウモロコシの原種が発見された。テオシントという5500万年前の植物で、これが品種改良されて実を大きくされてトウモロコシへと進化したのだという。先住民は今でも先祖から受け継がれた方法でトウモロコシの改良は続けられているという。トウモロコシの栽培が出来るようになったことで、狩猟生活から定住へと変化したという。当時の水路は今でも補強されて利用されている。また高さ24メートルの巨大なダムも造られたという。雨期の雨を蓄えてトウモロコシを栽培したのである。このような灌漑技術は4400年前から存在したという。
食糧の確保が安定する集落が築かれ、神殿なども建造された。身分の高い人のお墓も見つかっており、階級社会が形成されたと見られているという。これらがオルメカやマヤなどの古代文明を支えたという。このような文明への影響から文化遺産に指定された。
またこの渓谷では塩分を含んだ地下水を利用して2000年前から製塩が行われてきた。地下水の塩分濃度は海水の10倍以上だという。今でも多くの塩田がこの地に存在する。ミネラルを豊富に含む塩が作られている。
忙しい方のための今回の要点
・メキシコのテワカン・クイカトラン渓谷には20メートルクラスの柱サボテンが群生する。
・また固有の生物なども多数生息していて、それによって世界遺産に認定された。
・さらにこの地には1万年前から人が生息しており、トウモロコシの原種も発見された。
・彼らはその原種を品種改良することでトウモロコシを産み出した。
・大規模な灌漑施設を作ることでトウモロコシを栽培し、大きな集落なども出来るようになり、これららがオルメカやマヤなどの古代文明を支えた。
・これらの事実から文化遺産にも指定されている。
・また海水の10倍の濃度の塩分を含む地下水を利用して、塩田による製塩も行われている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・サボテンの芯を建材に使うというのがあったが、確かに高さ20メートルにもなるのなら、木材並の強度は必要だろうから建材になるわな。
・重要穀物はいろいろあるが、アジアの米、ヨーロッパの麦、南米のジャガイモ、メキシコのトウモロコシは歴史を変えたと言っても良いだろうな。
・もっとも穀物を食糧にするようになったことで、人類は糖に支配されることになったとも言えるそうだが。