教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/5 NHK-E サイエンスZERO「ダーウィンもびっくり!"食虫植物"の超進化」

今回のポイント

・独自の進化を遂げた食虫植物に注目する。食虫植物は特殊な生物であるが、実は特殊ではないのだという。
・食虫植物は各地の湿地などに生息していて800種ほど存在するという。
・ハエトリソウの研究の結果、葉の内側の感覚毛がセンサーとなっており、これで虫が来たことを検出するという。
・しかし水や石が感覚毛に当たっても葉は閉じない。1回の刺激では葉を閉じるところまでは行かず、2回当たった時にカルシウムイオンが臨界値を越えて葉が閉じるのだという。
・また腺組織と呼ばれる栄養成分を検出する化学センサーがあり、獲物以外の場合には反応しないのだという。
・食虫植物は1億年前ぐらいに地上に現れたという。この時期は虫が増えた時期だという。

ハエトリグサ、内部に生えているのが感覚毛

・モウセンゴケが虫を捕らえるための粘液は虫を動けなくするだけでなく、捕らえた虫を溶かす成分がある。
・その成分は普通の植物の根から分泌されるタンパク質と共通しているという。土から栄養を吸収するための消化酵素を、葉から栄養を吸収できるように進化したのだという。
・フクロユキノシタは、低温の虫が少ない時には普通の植物として育ち、温度が高くなると虫を捕らえるように葉に袋が出来るという。
・ハエトリソウの感覚毛はその根元が折れた時に、MSL10という遺伝子が働いて電気信号を出して葉を閉じさせることが分かったが、この遺伝子は食虫植物以外でも、葉が虫に食われたことを感知して虫よけの物質を作るように指示する信号を出す機能を持っている。
・つまり食虫植物は決して特殊な植物でなくて、通常の植物がその機能を流用したものだと考えられるという。

 

 

特殊ではあるが実は決して特殊ではない食虫植物

 食虫植物は植物なのに動物を捕らえるというかなり特殊な植物であるが、実はその基本機能自体は普通の植物の基本的な機能から来ているというお話。私が以前に読んだ本で「地球上の生物の進化とは究極の間に合わせの歴史だ」と書いてあったものがあったのを思い出す。現在の生物の姿を見れば、まさにその機能を持つために設計されたように見えるが、実はその進化の過程は他の目的に使用されていた器官を、無理矢理に別の目的に転用したものだというのである。例えば人類は元々四本足で歩くべきだった動物を、直立二足歩行のために無理矢理にあらゆる機能をそちらに流用しているという。だから腰が弱点になっていたり、難産になってしまったりなどの不具合があちこちにあるのだという。

 

 食虫植物も現在のかなり特殊な生態の基本は、本来の普通の植物が別の機能のために活用していた能力を、虫を捕食するために流用したということになる。そういうことを考えると、現在は食虫能力を持っていない植物が、今後の環境変化で食虫機能を持つなどということもあり得るのではという。これはなかなかに面白い視点である。

 

 

食虫植物は実は虫を積極的に殺す能力はない

 今回の話の中でサクッと出てきた内容で、私が初めて知ったのは、食虫植物は実は虫を積極的に殺すのではなく、捕らえて動けなくして餓死させてから死体をジワジワと消化分解するのだという話。私はてっきり、捕らえた虫を直ちに消化液でドロドロにして殺すと同時に吸収するのかと思っていたのだが、そうではない模様。だから私がイメージしていた「捕らえられた虫が生きながら溶かされていく」というエグイ話でないようだ。そういえば6/28の「世界遺産」で、テーブルランズで育つサラセニアという食虫植物は内部で蚊の幼虫を飼って、その排泄物等を栄養にするという話があったのだが、その時に「その幼虫、消化液で溶かされて吸収されちまわないのか」と疑問を感じていたのだが、その消化液がそんなに強いものでないとしたら何となく辻褄が合う。ボウフラのような水生昆虫ならその中で生息できても不思議でないということか。

 

 しかしこういうメカニズムであるということは、一旦虫を捕らえると消化吸収までかなり長時間を要するということであり、その辺りの気の長さは流石に植物かなという気がしないでもない。ただそれだと栄養摂取効率はかなり悪いので、果たしてどの程度の頻度で獲物を捕らえたら生存し続けられるんだろうってのが気になるところ。ファンタジーの世界には向こうから積極的に蔓などで人間捕らえて消化吸収してしまう巨大食虫(食人?)植物なんてのが定番モンスターの一つだが、幸いにもそこまで積極的な植物はいない模様(そこまで積極的に動けたら、そいつは最早植物でなくて動物のような気もするし)。

 

 食虫植物は進化の過程での「機能の流用」の集大成ということになるが、そもそもかなり個性の強い生物であるので、まあダーウィンがこれらの毛色の変わった植物に惹かれたというのも研究者としては分かる気がする。

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