教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/17 NHK 歴史探偵「平安のスーパースター 空海」

空海が庶民に親しまれた理由

 真言密教の祖であり、超常的な法力を持ち、各地に伝説を残しているというスーパースター空海。明らかに盛盛のエピソードなんだが、なぜ空海がこんなスーパースターになったのかに迫る・・・とのことだが、現在「空海展」が開催中(4/17時点で奈良国立博物館にて「空海」展が開催されている)なのでその宣伝企画という側面もあるようである。なお空海は他の番組でも以前に詳細に扱われており、今回の内容はそれよりはかなりザックリしている。

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 番組では高野山に取材にいっているが、空海の教えは即身成仏出来るという画期的なものであり、これは当時の世が乱れた日本においては大きな救いを感じさせるものであったという。国家を守ることを主眼にしていた仏教がほとんどの時代に、空海は民衆にも救われる道を示し、それが人々に好かれる理由になったという。

弘法大師、空海

 また各地に空海ゆかりの地があるが、満濃池は中国の最新の土木技術でアーチ型の画期的な堤防を建設したと言われている。この満濃池は現在でも雨が少ない香川での農業用水として使用されている。さらに修行の地として開いた高野山が今日まで続いている。

 

 

密教を広げるためのツールと空海伝説の真相

 さらに即身成仏を唱えた空海であるが、その一方で密教を理解するのは難しいと言っているという。その困難さを解決するためのツールとして空海が考えたのが曼荼羅だという。曼荼羅は密教の世界観を再現したものであり、仏像を三次元的に配置して密教の世界観を伝えるということは東南アジアなどの寺院にも存在するのだが、これを平面にして持ち運びを容易にしたものであるという。空海はこれを「1度見ただけでも成仏出来る」としている。悟りへの道筋を図示したものが曼荼羅なのだという。

大日如来を中心にした世界観を示す曼荼羅

 なお空海に纏わる伝説は全国各地に存在しており、その総数はおよそ3000もあるとのこと。しかし空海は何も全国漫遊したわけではない。実際は高野聖と呼ばれる人々が全国を回って空海の教えを伝えて回ったので、それが空海のゆかりの地の伝説が各地にある理由ではないかという。彼らは全国を回って寄付を集めていたのだという。それは火災で荒れた高野山の整備の費用を調達するためだったとのこと。そのことから高野山には多くの庶民の墓も残っているという。

 

 

 以上、空海伝説について。高野聖が全国回ったことで空海伝説が各地に広がったってのは、水戸光圀が各地の歴史資料を集めるために全国に使者を送ったことが水戸黄門漫遊伝説につながったってのを連想する。

 同様に全国にゆかりの地があると言えば聖徳太子なのであるが、これはなぜそうなったのかは今ひとつ定かでない。元々伝説が異常に多い人物であり、実在さえが疑われていたりするだけに、謎が多すぎである。空海は湧き水を見つけたとか、温泉を見つけたという伝説がやたらに多いのだが、聖徳太子にまでその手の伝説がある。やはりただの湧き水や温泉よりも、何やら大人物ゆかりというなんちゃって由縁を付けた方が、観光的にも有利なんて考えが、かなり昔からあったのではなんて思ったりするが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・空海は即身成仏の教えを説いたが、これは主に国家守護が目的だった当時の仏教の中では、庶民にとっての救済を説いた画期的なものであり、それが空海の人気につながった。
・ただ空海は密教の世界は奥深いので理解が困難であるとし、その教えを簡単に習得するためのツールとして曼荼羅を作り出した。曼荼羅は密教の修行方法を紹介しており、悟りに至る道を示しているという。
・全国各地に空海の伝説のある地が3000以上も存在するという。空海ゆかりの地がそんなに多くなった理由は、高野聖が高野山再興のための寄付を募るために、各地を回って空海の教えを説いたことによると推測されるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・以前に歴史鑑定で見た時に、空海ってセルフプロデュースに非常に長けた人物であるという印象を受けたのだが、空海だけでなく教団自体が広報に長けている印象を今回持った。やっぱり宣伝って重要なようである。

前回の歴史探偵

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