3000年前の古代文明
今回のテーマは唐突に中国の古代文明遺跡。中国でのロケまで敢行しているが、この番組単独でそんな予算が出そうには・・・ということで、実は今回の内容は以前にNHK-BSで放送されている。で、また再放送もするようだ。というわけで合わせ技である。NHKお得意の放送素材の有効活用かついかにもこの番組らしい他の番組の宣伝でもある。
今回のテーマは中国の四川省で発見された三星堆遺跡。3000年前の文明の遺跡として注目されているという。しかもこの文明、忽然と現れて突然に滅亡したのだという。今は畑となっている土地で城塞都市の遺跡が発見され、さらに発掘作業を行ったところ、大量の青銅器が発見されたという。これがまた独特の造形であり、奇妙なポーズを取った像が多い(別名押忍の像(笑)とか)。また何かを抱いていたらしい2メートル以上の巨大な象なども見つかっている(儀式用の象牙を抱いた王の像ではなどと推測されている)。
さらに様々な姿をしたインパクト抜群の頭像も多いが、中には目玉の飛び出した巨大な仮面(まるで赤塚の漫画のようである)なども存在する。さらに極めつけは高さ4メートルという世界最大の青銅器などの発見されている。なお三星堆では文字が見つかっていないので、発掘結果から推測をしていくしかないとのこと。
またこの遺跡が発見されたのは40年前だが、発掘された青銅器は破壊された上に焼かれた状態でボロボロだったという(ということは修復したのか?)。なお政治的動乱があったのではと考えるところだが、三星堆が外敵の侵略を受けた痕跡はないという。
文明の十字路に位置した三星堆
なお三星堆は外来文化を吸収した可能性があるという。三星堆で大量に見つかった青銅器は具象的な偶像が多く、これは西洋の特徴だという(中国の青銅器はほとんど壺など)。また黄金の杖もみつかっているが、これも西洋では王権の象徴であるという。さらにメソポタミアの様々な場面を描いたレリーフのごとく、縦型の巨像の中に順次ストーリーを描いたと思われる像もある。これらは明らかに中国のものとは異なるという。
では西洋とどのようにしてつながったか。青銅の破片を調査したところ表面に絹布の繊維が残っており、三星堆は既に養蚕の技術を持っており、シルクロードの交易をおこなっていたのではないかという。もしそうなら、今までの2000年と思われていたシルクロードの歴史が一気に3000年までさかのぼることになるかもしれないという。実際に三星堆は西との交流を考えると中国の玄関口にあたる位置になる。
さらに三星堆は東の中国ともつながっていた。湖北省で見つかった4000年前の後石家河文化の遺跡で、三星堆の青銅器とよく似た玉像が発見されたという。確かに形態の特徴が非常に類似しており、長江経由でこの文明が三星堆に伝わった可能性が推測される。さらには殷王朝とのつながりも類推されており、殷のものと同じ文様の入った青銅の容器も存在するという。様々な文化が混ざり合ったのが三星堆だったのではという。
以上、元々しっかりした歴史スペシャル用のネタとして取材した内容であるから、この番組らしからぬハードな内容となった。もっともその分、見ごたえはある。ただしこのようなハードな内容になると際立つのが佐藤二郎の不要さ。無意味なマヌケなコメントしかできないから存在の意味がないどころか邪魔になる。
それにしてもかの国は大陸の国だけに文明の歴史の奥深さはかなりのものであり、残念ながら辺境の島国の日本では遠く及ばないものである。日本はこの頃は縄文後期とのことだから、まあまだ原始社会である(最近は変な愛国心と結びついて、妙に縄文文明を持ち上げる風潮があるが)。一体文明の古さについてどの程度までさかのぼることができるかは興味深いところである。
忙しい方のための今回の要点
・最近になって中国四川省で3000年前の古代文明・三星堆の遺跡が発見されて話題となっている。
・三星堆はこの地に存在した城塞都市であり、原因は不明であるが忽然と滅亡している。
・三星堆では大量の青銅器が発掘されているが、それらは中国のものとも異なるかなり独特のものである。
・三星堆の文明は海外の影響を受けていると推測され、特に西洋との関係が注目されている。
・また絹の繊維が見つかっており、古代のシルクロード交流があったのではないかとの推測もなされている。
・なお三星堆は中国の4000年前の文明とされる後石家河文化との類似性も指摘されており、さらには殷王朝とのつながりも考えられている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・なかなかに中身の濃い内容であった。惜しむらくはこの内容は明らかにこの番組向けに作られたものではないというところ。次回からまた毎度のような薄い中身に戻るんだろうか。
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