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3/30 BSジャパン 美の巨人たち「葛飾北斎・晩年のすごい肉筆画!奇跡的に遺った『弘法大師修法図』

 葛飾北斎晩年の肉筆画の大作が西新井大師で発見されたのが昭和58年。弘法大師が疫病を広げる鬼を封じようとする絵である。そもそも西新井大師はかつて疫病が流行った時に空海が清らかな井戸を発見して疫病を鎮めたとの謂われがある寺院で、疱瘡が流行した時に北斎が疱瘡封じの絵画として奉納したらしい。ただその存在は分かっていたのだが、最近に再発見されるまで所在が不明だったのだとのこと。寺院の奥深くに大事に収蔵されていたので、何度かの火災(第二次大戦の東京大空襲を含む)の中でも奇跡的に今日まで残っていたのである。

 この手の病除けの絵画は結構描かれているのだが、北斎の作品は何と言っても迫力などが違う。茸の生えた木は腐朽菌にやられており、これは病の象徴。そして鬼は病を撒き散らす邪悪なる存在である。その鬼とにらみ合う犬は、十二神将の一人・跋折羅大勝でこれは金剛力士(仁王)の象徴だという。そして十二神将薬師如来の守護をしているという。つまりは病と戦う力を持つものであるという。

 また手前に恐ろしい鬼、その奥に鬼とにらみ合う形の犬、そして一番奥に静かに座る弘法大師3つの奥行きで配置した構図は、有名な神奈川沖浪裏に通じる北斎の得意とする構図である。それが絶妙な安定感を魅せている。

 北斎は晩年になってもその筆を休めることがなく、100歳まで描き続けることが出来れば本当の絵師になれると言っていたという。果たして北斎が本当に100歳まで生きていたらどんな絵を描いただろうか。番組では「キュビズムのような作品を描いたのでは」とか「アニメーションを作ったかも」などと好き勝手を言っているが、実際にもう少し現実的なところで私が推測すれば、本格的な洋画を描いたのではと思っている。北斎の作品の中に洋画を意識したようななんちゃて洋画はあるが、あれだけ研究熱心な北斎のことだから、その内に画材を取り寄せて最後は本格的油絵なんて描いたかもしれない。墨絵に抜群の技術を持つ北斎が、塗り重ねる油絵の技法も習得したら・・・。どんな絵が出来上がるかは想像を超える。西洋画を背景にして浮世絵調の人物が闊歩しているような和洋折衷な作品になるかも。となれば、明治時代が来る遙か前に日本画と洋画の融合という大事を成し遂げることになる。

 ところでこの作品、私は以前に東京で開催された北斎展で目にしており、その時に「この作品こそが本展の白眉」と感じたのであるが、その感覚は正しかったと言うことか。その割にはこの作品は最後の出口近くにひっそりと地味に展示されていたのだが。なおこの時にお土産として購入したこの作品の大型絵葉書(実際には額絵と言った方が良い)は、現在私の部屋に飾られている。

 その際のレポートは以下。

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