教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/7 サイエンスZERO「未来のコミュニケーションに迫る!"顔の科学"」

顔の科学

 人間が他の類人猿などと異なるところの1つが、表情が非常に豊かであることである。人は表情も使用してコミュニケーションをとっている。今回はその顔をテーマにするとのこと。

人は様々な表情でコミュニケーションをする

 番組ではまず40人の顔写真が登場するが、これが果たして何人の写真であるか。ザッと見たところ10人ぐらいはいそうに思えるが、実はたった2人だとか。表情や雰囲気などが変わることで別人に見えてしまうのである。また木の模様や壁のシミなどが顔に見えたりするパレイドリア現象というものもある。この辺りは人間の顔認識を示す認知科学の世界だという。

 人間はSNSでやたらに自分の顔を発信する者がいるように、自分の顔に対するこだわりがある。ここで実験だが、顔写真を加工して目を大きくして顎を細くする(要するに美化)を数段階にして見せて、とれが一番魅力的かを選ぶ。次に知人の写真で同様にした時、自分の顔の方が知り合いの写真よりも加工を強いものを選ぶ傾向があるという。この時の脳の働きをfMRIで血流を観察すると、他人の顔を見た時よりも自分の顔を見た時の方が脳が活発に活動し、特に側坐核が活性化されてドーパミンが分泌されていることが分かったという。なお加工の度合いを上げすぎると扁桃体が働くことで不快感(不気味だと感じている)を抱くのだという。これが不気味の谷というものだという。

 

 

表情とコミュニケーション

 人間の顔は表情を伝えやすいように進化しているという。特に目線が読み取りやすくなっているが、これは野生では行動が読みやすいと言うことでマイナスであるが、人の場合はコミュニケーションを重視したのだという。

 次はある特殊な鏡を使用した実験。この鏡に映った顔をレバー操作で笑顔や悲しい顔に変化させられるようになっている(口角と頬を上げて笑顔、口角を下げて眉頭を引き上げることで悲しい顔を作る)。この人工的に作った表情を見てもらったところ、笑顔を見た時には気分が上がり、悲しい顔を見た時には気分が沈むという現象が見られたという。つまり表情で感情もコントロールされるのである。なお会議で互いの顔を笑顔に加工した時、より多くのアイディアが出るようになったという。

 次は今時のアバターの研究。はこだて未来大学を訪問したところ、何やらアニメ顔を貼り付けた人が話をしている。この装置はデジタルカメンといって、顔の表情を読み取ってその表情に応じた表情を浮かべるのだとか。表情が分かりにくいという悩みでコミュニケーションが苦手な人に対して、分かりやすい表情を示すことでもっと自分をさらせるようになるというような効果が期待出来るとか。

 

 

 以上、人のコミュニケーションにとって重要な顔について。ちなみにコロナのマスク着用で言われ出したことだが、日本人は目の微妙な表情を読み取るのに対し、欧米人は顔の表情を主に口で読むので、欧米人の方がマスクに対して「何を考えているかが分からない」と抵抗が強かったとかいう話がある。そう言えば欧米人って、日本人から見たら明らかに過剰と思えるほど口を動かして表情を作るのは事実。それに対して日本人は昔から「何を考えているのかが分からない」というのは言われていたところ(感情を出すことがタブーとされるスタトレのバルカン星人は、日本人がモデルらしいというのは有名)。

 まあ表情で相手の感情を誘導出来るのは事実で。だから常に不機嫌な表情をしている奴は避けた方が良いと言うことになる(最近は「フキハラ」なんて言葉まであるようだが)。この表情で誘導する技術は昔からセールスマンと詐欺師には不可欠の技でもある。しかし実は普通のサラリーマンなんかでもプレゼンなどでは実に重要。やはり笑顔で自信ありげに発表するプレゼンの方が相手の心に響くというものである。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・脳の働きを見た時、人は他人の顔よりも自分の顔により注目していることが明らかであるという。
・また人工的に表情を加工した映像を鏡に映して見続けてもらった時、笑顔を見た時には気分が上がり、悲しい顔を見た時には気分が沈むなど、表情で感情も左右されることが明らかとなった。
・はこだて未来大学では、表情を読み取ってそれをアニメ顔のアバターで示すことで、表情を分かりやすくするという実験がされている。コミュ障気味の人が感情をさらけ出せることで自信を持つことにもつながるのではとのこと。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ表情というのは確かにコミュニケーションに重要ですが、人の好悪については顔の造作自体もかなり大きく影響します。以前に聞いた話では、人は左右均整で平均顔に近い顔を「好ましい異性の顔」と判断するとか。それは相手が健康で繁殖に適しているという意味だからとのこと。
・もっとも本当に平均顔そのものだと、整っているが特徴がなさ過ぎて印象が薄いとなりがちなので、ここに若干の個性の加わった顔がいわゆる美人顔だというが。

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