歌川広重の代表作「東海道五十三次」。その最後の絵が京都の三条大橋を描いた作品である。しかしこの絵には実は大嘘があるとのこと。
この絵の構図から見れば、絵の左側が江戸の方向で手前が京都になる。つまり旅人は向こうから歩いてきているのだとか。ただここで問題になるのが背景の山。広重は手前に見える東山連山の奥に山陰を描いており、これは比叡山と言われているのだが、実際の比叡山は全然違った方角にある。比叡山の方角は鴨川のもっと上流側にあるのでこの画角では画面内に入ってくるはずがないのである。また三条大橋も広重の絵では木製の橋となっているが、三条は大橋はそもそも木製ではなく石の橋だったとのこと。
つまりは広重は実際の風景を見て写生しているのではないということ。どうやら観光ガイド的なものを下敷きにして作品を描いていたようだ。広重によると「写真(しょううつし)をなして、これに筆意を加ふる時はすなわち画なり」とのこと。つまりは写生で物の形を自分の中に取り込むと、それを筆の赴くままに再び形にしたものが絵であるということらしい。要するに絵にする時には立体の組み替えなんて問題でないということだろう。実際に広重の東海道五十三次の箱根の絵なんかを見れば分かるが、あり得ないような急傾斜を描いているが、実際に心情的にはあれがピンとくるというやつである。現実以上に現実っぽいと言うことだろうか。西洋にもそういうタイプの風景画はあった。
なお広重はこのシリーズの大ヒットの後、名所江戸百景などの作品を製作しているが、そこには手前に大きく障害物を描く「近像型構図」(俗に実相寺アングルなどという呼び名もありますが)を駆使するなど、より自由で前衛的な絵画になっている。結構そういう遊びが好きな人だったのかななどと思ったりする。
ところで来週から「新 美の巨人たち」となって番組が大幅にリニューアルされる模様。しかし予告を見ていると、又吉が出てきたりなどと中途半端に軽薄な番組になって、一気に面白くなくなるのではとの嫌な予感しかしない。最近は作り手がミーハー化してるというか、単にレベルが下がったと言うべきか。NHKの番組なんかでもつまらないのが増えてきた。いよいよ私の見る番組が減ってきそうである・・・。