教養ドキュメントファンクラブ

テレビの教養系番組の感想など。かつてのニフティでのHPを新装開店

4/27 BSジャパン 新美の巨人たち「井浦新が「鳥獣人物戯画甲巻」の謎に挑む!闇夜で見つけた答えとは」

 今回は鳥獣人物戯画。現在大阪の中之島香雪美術館で公開中。客の入りがイマイチだったので「ようやくテコ入れ来た-っ!」と思ったのですが、今回扱うのは甲巻のみ。現在の展示は丙巻、丁巻になってしまっているので「残念!」という感じです。ちなみに本展は私も訪れております。

www.ksagi.work

www.ksagi.work

漫画の原点

 今回はゲストの井浦新氏がこの絵巻を見ると趣向ですが、何ら特別なことは言っておりません。後は手塚治虫によるという漫画の原点という言葉と、しりあがり寿氏による「時間の表現がうまい」というコメントを紹介しているのみ。

 この絵巻は人間社会のヒエラルキーを風刺しているのではということを井浦氏がポロッと言っていますが、それはこの絵を見た人は大抵感じることで、昔からよく言われています。

 さてこの絵の作者はハッキリしないのですが、通説としては鳥羽僧正覚猷と言われている。放屁合戦の絵を描いているかなりふざけた方(河鍋暁斎も同様の絵を描いていたと思いますが)。覚猷は三井寺の僧侶で、20年ぐらいは三井寺で修験道の修行をしたという。修験道は山岳の道なき道を渡り歩くマッチョな宗教で、自然と一体化することを目指している。見えないものを見て、聞こえないものを聞くそうな・・・ただこれを言葉のまま取ってしまうと単なる統合失調症の妄想に聞こえる。

実は夜の絵だった・・・どうでもいい気がするが

 で、この絵に関する新説としては、ミミズクが描かれていること、兎もカエルも月に結びつく夜を象徴する動物なので、これは夜の風景ではないかというもの。闇夜の中で彼は兎やカエル達を見たのではないかというもの。

 と言うことなんだが、見事なほどに中身がない! 闇夜で見つけた答えとはなんて銘打っているが、これが答えかい!

 作品についても一度も最初から通しで見せずに、断片断片をチラチラ写すだけだし、やはり美術番組としての作りがなっていない。リニューアルしてからのこの番組、前回がまあまとも、前々回はひどすぎて話にならない、今回もあまり出来が良くないというところでどうも内容が・・・。やっぱり作り手がレベル低下してるんだろうか。

 なお私はこの作品については、ちょうど平安末期の末法思想の時代で社会も不安定になっていった頃だから、そういう世相を笑い飛ばそうとしたのではと思っております。これぞ漫画の原点。


忙しい方のための今回の要点

・擬人化した兎やカエルなどを描いた鳥獣人物戯画の甲巻については、作者は鳥羽僧正覚猷だと言われている。
・覚猷は三井寺の僧侶で、自然と一体化することを目指した修験道の修行をしていた。
・彼がこの作品を描いた意図については不明。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・甲巻の展示が終わってから甲巻だけを扱うという間の悪さ。こういう点でもリニューアル後のこの番組は美術番組としてダメダメです。
・鳥獣人物戯画には乙巻、丙巻、丁巻もあるのですが、それはどうでも良いんですか? なんか扱いがひどいな。
・修験道って、本当にマッチョな信仰なんで、修行中に事故で死ぬなんて普通にあります。日本で一番危険な国宝と言われている投入堂なんかも修験道の修行場所です。で、ここでは実際に観光客が何人か事故に遭ってます(何かあってもすべて自己責任でというお断りが出ている)。