前回は人間のすべてがDNAで決まってしまうという印象の内容だが、今回はそれを後天的に変えることが出来るという話。「あなたの人生変わるわよ」とキューティハニーの台詞のようなお話です。
遺伝子のスイッチ
それに関わっているのが遺伝子の中のスイッチ。遺伝子には例えば「ガンを防ぐ」とかいろいろな情報が入っているが、それらの機能がONかOFFかはスイッチがあるというのである。そのスイッチに携わるのがDNAメチル化酵素というもので、これがDNAに作用することで、DNAがグシャグシャに折れてもつれてしまうので、その部分の遺伝子は読み取りが出来なくなる。その部分に「ガンを防ぐ」という遺伝子が含まれていれば、その遺伝子のスイッチがOFFになったということになるらしい。
実際にガン患者について検査すると、その6割がこの遺伝子のスイッチがOFFになっていたとか。そこでこのスイッチをONにする薬の研究が進んでいる。臨床試験によると3割に効果があり、中にはガンが消失した例もあるとのこと。
親のスイッチが子に引き継がれる
また親の遺伝子スイッチの情報は受精時にリセットされるので子に引き継がれないと言われていたのだが、それがどうも引き継がれるのではとの研究も出ているという。スウェーデンのある村でメタボによる心筋梗塞による早死にが異常に多いという例があり、調べたところ、祖父の代で大豊作があったということが分かったとか。祖父の代でメタボになる遺伝子のスイッチが入ってしまい、それが子や孫にまで引き継がれたのだという。そのために子供を作る前にメタボのスイッチをOFFにするために運動をしたりする精子トレーニングなるものに励む男性達も登場。
また宇宙で生活した宇宙飛行士は例えば放射線に対抗するためにDNAを修復する遺伝子のスイッチが入ったり、骨を増加させるための遺伝子のスイッチが入ったりなどの現象が観測されたとか。つまり遺伝子のスイッチのON OFFの人間の環境適応能力を司っていると考えられるとのこと。
面白い内容ではあったが、腑に落ちない点も多数あった。例えば人体の細胞の数は数十兆と言われているが、「ガンを防ぐ」遺伝子のスイッチがOFFになるというのは、そのすべての細胞で同じように一斉にスイッチがOFFになるのか? それとも一部の細胞でOFFになってそれが全体に影響するのか? DNAメチル化酵素によるスイッチ切り替えのメカニズムから見ていると、すべての細胞で必ずしも同じ変化が起こるとは思えない。と言うことは、調べる細胞によってスイッチのON OFFは違うんじゃないのかということ。
さらにスイッチのON OFFが人間の環境適応能力の元なら、祖父の代で豊作による食べ過ぎを経験したのなら、それが健康に悪影響を与えないように例えば脂肪を溜め込むスイッチがOFFになるといった変化の仕方の方が正しいように思える。それが食べ過ぎでメタボのスイッチがONになるというのは納得しがたい。
以上、どうにも腑に落ちない点がありました。その辺りは説明を省略してしまっているのか、それとも何か間違っているのか。
ところでDNAメチル化酵素を制御して遺伝子のスイッチをコントロールするという話がありましたが、これは気をつけないとかなり危険な技術ですね。例えば記憶力を高めるという話が出ていましたが、これなんか注意しないと記憶力を高めるではなく忘れるという能力を失うということになりかねません。山中さんがいろいろな作用が複雑で云々と誤魔化してましたが、多分そのようなことを指しているのかと。
それにしても気をつけないと、いかがわしい商売にすぐにでも使われそうなネタが多数ありましたね。精子トレーニングなんてもう明日にでもインチキ商売にする奴が出そう。
忙しい方のための今回の要点
・遺伝子のスイッチのON OFFによって機能が変化することが分かってきた。
・遺伝子のスイッチをOFFにするのはDNAメチル化酵素。
・遺伝子のスイッチの状態が子孫にまで引き継がれるとの説が発表されている。
忙しくない方のためのどうでも良い点
・遺伝子から情報を読み取ってガンを抑える物質を合成するというCG、明らかに前回の使い回しでしたね。前回ではあそこで合成されたのはカフェインを分解する物質でした。
・この番組を見てると、どうにも石原さとみ嬢の化粧の濃さが気になるのですが・・・。ちょっとメイクが不自然すぎませんか? 照明のせいかな?