教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/2 サイエンスZERO「外来種と固有種 小笠原諸島の変」

 多くの固有種が存在し、進化の過程が研究できる格好の場所として世界自然遺産に認定されている小笠原諸島であるが、ここが侵略的外来種の攻撃にさらされているという。

侵略的外来種グリーンアモールの脅威

 小笠原諸島の中で住民がいるのは父島と母島であるが、その父島と海を隔てた北にある兄島にはカタツムリや昆虫などの固有種が多数棲息している。しかし最近になって、その兄島にグリーンアモールという外来のトカゲが上陸したことが判明したのだという。

 このグリーンアモールは非常に貪欲に昆虫類を補食する上に、この地域には天敵が存在しない。放置すると兄島の固有種などの昆虫類が絶滅し、それがひいては兄島の自然全体の崩壊につながる危険が出てきている。このグリーンアモールは父島から何らかの方法で移ってきたと考えられるが、実際に父島ではこのグリーンアモールが侵入したことによって固有の昆虫類はほぼ絶滅してしまったのだという。

 現在はグリーンアモールの拡散を防ぐために、島内に全長3キロにも及ぶ電磁柵を設置し、さらには粘着罠(ねずみ取りに使うような粘着シート)を設置してグリーンアモールの捕獲も進めている。さらにはドローンを使った上空からの監視映像に対してAIを使用してグリーンアモールを発見するなどの試みも行われているとか。

 またグリーンアモール以外にもネズミの上陸も確認されており、これについてもカタツムリなどを補食する可能性があることから繁殖を防ぐために殺鼠剤を撒くなどの対策を行っているとか。

なんと絶海の孤島でも外来種が

 なおこのような外来種による生態系の危機は絶海の孤島である南硫黄島にも及んでいるという。父島などに持ち込まれた侵略的外来植物の種が鳥などによって運ばれて、南硫黄島で繁殖していることが上陸調査で確認されたという(この辺りは以前にNHKスペシャルで放送されていたものを流用していました)。これについてはどのように対処するかが難しいところだという。

 離島に固有種が存在する場合は多いが、こういう侵略的生物の侵入で絶滅したという例は実に多い。だから進化論発祥の島であるガラパゴス諸島なんかでは外来生物の持ち込みについてかなり神経質なほどにまで注意しているという。小笠原の場合は、どうしても人間が以前から生活している島があったので、そこのところのガードが緩かったということだろう。そもそもネズミなんて人間の生活のための物資を運搬していたら、絶対にと言ってよいぐらいどこかから侵入しますから。

 


忙しい方のための今回の要点

・小笠原諸島で昆虫など固有種の多い兄島に、グリーンアモールという侵略的外来種のトカゲが侵入して問題となっている。
・このトカゲは下手をすると兄島の昆虫を絶滅させる恐れがあるので、拡散を防ぐために島内に電磁柵を設置している。
・同様の外来種としてネズミも上陸しており、殺鼠剤を散布するなどの対策がなされている。
・南海の孤島の南硫黄島でも、父島から飛来した外来植物が繁殖している例などが観測されている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・外来種もかなり長い時間スパンを取ればいずれはそこの生態系に組み込まれるのでしょうが、その間に絶滅してしまう種が多数出てしまうんですよね。ましてや人の影響が非常に大きいとなると対策を打たないわけにもいかない。
・侵略的外来種といえば、ブラックバスなんかも問題になりました。結局は天敵がいないからはびこるワケなので、そうなると人間が天敵代わりに捕獲してやるしかバランスの取りようがないわけです。というわけでびわ湖では「ブラックバスを食べよう」という運動もありますね。