教養ドキュメントファンクラブ

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6/7 コズミックフロントNEXT「ザ・プラネッツ ひとときの楽園 水星・金星」

 最新の探査機の観測情報に基づいて、惑星の姿をCGで再現するという企画。

灼熱惑星・水星の生い立ちの秘密

 太陽系最内周の水星は灼熱の死の世界である。しかしこの惑星の歴史を考えると、ひとときの楽園の時もあったのだという。

 水星は月とほぼ同じ大きさの惑星で、その軌道は極端な楕円軌道になっており、太陽から最も遠い時は7000万キロ、最も近い時だと4600万キロまで接近する。そして昼の気温は430度で、夜になるとマイナス170度にまで下がる。しかも太陽の重力のせいで自転速度が遅いために、地球時間に換算すると昼と夜はそれぞれ88日間も続くのだという。

 この惑星を初めて探査したのは1973年に打ち上げられたNASAのマリナー10。水星の表面の43%を撮影したが、その後も水星の大部分は謎のままだった。そして再び探査機が送り込まれたの30年後。2004年に打ち上げられたNASAのメッセンジャーである。しかしそのまま水星に向かったのでは速度が上がりすぎるため、地球や金星でフライバイを行って速度を落とし、7年をかけて水星周回軌道にたどり着いた。

 メッセンジャーは水星の熱に耐えるためにセラミックのシールドを持ち、さらに水星からの放射熱を冷ますために極端な楕円軌道を取って熱くなると離れて冷やすということを繰り返したのだという。その結果判明したことは、水星内部は核の割合が85%と他の惑星の50%前後という数字と比べた場合に異常に多いということ。このことから、水星はどこかで表面の岩盤がはがされたのだと推測された。またこの位置にある惑星にも関わらず、硫黄などの揮発性の物質が非常に多いことも分かった。

 この二つから推測された水星の生い立ちは、水星はそもそも火星に近い軌道で生まれたのだが、他の天体との衝突ではじき飛ばされて今の軌道に移動したというもの。その際に表面の多くの岩盤が飛び散ったのだという。これが現在の有力な説であるとのこと。もっともこの説も大きな天体と衝突したらその時に揮発性元素は揮発してしまうという難点はあるとのこと。だから大きな天体ではなく、もっと小さな天体と複数の衝突をしたのではとの考えもあるらしい。

 またメッセンジャーは水星の北極付近のクレーターの底に氷があるのを発見したという。もし水星が今の軌道に飛ばされることがなかったら、地球のような海を持っていたかもしれないという。

金星、その過酷な環境の理由

 その水星の隣、厚い雲に覆われた地球の兄弟星とも言われる惑星が金星である。この金星は50年代には表面には海があるのではと思われていたという。この惑星の素顔が明らかになったのはソ連の探査機による。金星表面に着陸したベネラ13号が送ってきた映像は、荒涼とした大地だった。また温度は457度、二酸化炭素濃度が96.5%、気圧は地球の89倍という生物の存在など考えようもない過酷な環境であることが分かった。

 このような地球との環境の違いがあることが明らかであるにもかかわらず、地球と金星の構成成分は非常に似ているという。何が両者の環境をここまで分けたのか。

 35億年前から40年前の地球で生命が生まれた頃の太陽は、実は今よりはずっと温度が低かったのだという。つまり金星の温度も今よりもずっと低かったということらしい。だからこの頃の金星は雨が降って海が存在したと考えられる。そして二酸化炭素や水蒸気の温室効果によって、金星は温暖な気候に恵まれていたという。

 しかしその後、太陽の温度が上がってくることで環境は一変する。大気中の水蒸気が増加することで温室効果での気温上昇が大きくなる。そしてある時、ついに臨界点に達する。暴走温室効果によって海は沸騰し、金星は灼熱地獄の惑星となったのである。

思いがけないつかの間の楽園

 なお太陽系の生涯を考えた時、思いもかけない天体に思いもかけない時に楽園が訪れるという。それは土星の衛星タイタンである。

 太陽の晩年、太陽が赤色巨星となって水星や金星が太陽に飲み込まれ、地球も太陽に焼かれる頃、外惑星の温度が上昇する中で木星や土星の衛星で氷が溶け始めることになる。

 タイタンに着陸したホイヘンスの情報によると、タイタンは氷の惑星で、表面には液体のメタンがあると考えられるという。カッシーニの観測でタイタンには液体メタンの湖があることも観測されたとのこと。メタンという有機物が存在し、そこに水が発生すれば生命が誕生することも考えられるという。

 私が昔に学校で習った頃に比べると、かなり新事実がいろいろと判明してきたなという印象。しかしこうして聞いていると、地球の現在の環境がかなり綱渡りであるということが感じられる。もしかしたら人間は自らの愚行で地球を現在の金星にしてしまう可能性もある状態になってきている。トランプなどは自分の利益に反するからという理由で温室効果の科学的根拠を否定して、環境保護の活動に対して反対の立場をとるばかりか、自ら儲かるからという理由で地球に戦争を引き起こそうとしている。そうやって死に絶えた地球を訪れた異星人は、地球がそうなった原因を推測することが出来るだろうか。

 


忙しい方のための今回の要点

・水星は異常に核が大きいことや揮発性物質が存在することから、かつて火星近くの軌道で生まれてから、天体の衝突などで現在の軌道に移動したと考えられている。
・金星はかつては太陽の温度が低かったために海のある温暖な惑星だったが、太陽の温度上昇に伴って暴走温室効果によって灼熱地獄と化した。
・太陽の晩年、赤色巨星となる頃には外惑星の温度が上昇し、タイタンなどの氷の惑星でもしかしたら生命が誕生する可能性がある。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・ここで紹介されたのは現在の「通説」ということでしょうが、これも今後の観測でどう変わるか分かりません。水星の移動の話なんかも、まだ完全には整合性がとれていないようだし。
・昔はNASAでも金星のテラフォーミングがかなり真剣に検討されていたようです。しかしあまりに環境が過酷なので、今はどちらかといえば火星の方が本命ぽいですね(そう言えば改造したゴキブリを送り込むという漫画があったな・・・)。ただどちらにしても、本当に人類が住めるような環境に改変できるかは疑問です。とにかく今は人類は地球を大事にするのが最優先。