教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/16 TBS系 世界遺産「山々すべて段々畑!標高1800m天空の村」

 エチオピア南部の山岳地帯コンソには、山の斜面に延々と続く段々畑という特殊な風景が見られる。この段々畑は900m~1800mの間に展開し、村人はその山上に2mの石垣に囲まれた集落内に生活している。この段々畑は村人が400年に渡って作ってきたものだという。また集落が石垣に囲まれているのは、近くの遊牧民の襲撃を警戒してのものだとか。

山頂に住む理由

 山頂に水はなく、中腹にある水場から女性達が水を汲んで運び上げる。こんな山頂に住まずに麓に住めば良いと思うところだが、麓は日中は40度を超える上にマラリアを媒介する蚊がいるので、そこに住むことはできないのだという。そこで村人は山頂に木と泥で壁を作り、近くの草で屋根を葺いたキノコ型の小屋を作って生活しているのである。

 段々畑のメリットは、標高によって作物を変えることが出来ること。こうすることによって何かの作物が不作でも、他の作物で補うことが出来るし、収穫期をずらすということも出来るのだという。ただコンソの農業は完全に雨頼みであるため、雨期の到来が遅れたりしたら、清めのための祈りをするのは村長の仕事であるという。

 コンソの村の人々の主食はソルガムという高タンパクな穀物を発酵させて作ったチャガという酒。この酒は各家庭で大量に作られるが、保存が利かないためにチャガが出来ると大勢が集まって一緒に食事をするのだとか。

段々畑と共に生きる人々

 この辺りの土地は地面を耕すと玄武岩がゴロゴロと出てくる。そこでこの石がそのまま畑の石垣の材料にある。石垣の建造は村人が協力して行う。400年前からそうやって今日の景観が出来上がったのだという。そしてこの畑は同時に墓でもあり、亡くなった村人は畑に埋葬されて、自分の子孫達を見守ることになるのだとか。

 なかなかに凄い光景であるが、これが人間の手だけで作られたというのが驚きである。現代なら灌漑農業をするところだが、ここの農業は完全に雨頼みだと言うことで、明らかに効率は悪いがこの方が土壌中の塩分などにやられにくい農法でもあると考えられる。だから400年も段々畑を続けて来れたのだろう。しかし今日のように西洋文明が世界を席巻している時代に、この村人の素朴な生活はいつまで続くことやら。

 


忙しい方のための今回の要点

・エチオピア南部の山岳地帯のコンソには、標高900m~1800mの山肌に一面の段々畑が築かれた集落がある。
・村人は山頂に住んでおり、これは地上の暑さとマラリアを媒介する蚊から逃れるためである。
・村人の主食はソルガムという穀物から作った酒。
・この段々畑は村人が400年に渡って共同で建造してきたものである。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・村人の共同作業なんかを見ていると、日本の農村の原風景につながるものを感じます。どこでも農業地域というのは集団の輪が強くなるものです。この辺りは遊牧民族との文化の違いです。ヨーロッパ人などの狩猟採取の民族は、どうしても攻撃的で侵略的になります。