教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/20 コズミックフロントNEXT「ザ・プラネッツ 私たちの命運を握る 木星」

 太陽系最大の惑星にして激しい気流に覆われた巨大惑星・木星。その質量は太陽系のすべての惑星、衛星、小惑星などを合わせたものの2.5倍もあるという(とのことなのだが、惑星の中からは木星の除いてでしょうね。でないと話がおかしい。)。観測機ジュノーの観測による木星の表面は複雑な気流の渦に覆われ、極付近は青いことも分かってきた。

木星の巨大重力がイオをかき乱す

 木星はその巨大な質量によって太陽系の他の星々にも影響を与えている。特に大きな影響を受けているのは木星の最内周を回る衛星イオ。この衛星は激しい火山活動が行われていることで知られているが、イオの大きさから考えると本来はその内部には火山活動が発生するだけのエネルギーはもうないはずである。実はこの火山活動のエネルギーを与えているのは木星の重力。イオはすぐ外の軌道を回るエウロパの影響により、円からズレた軌道を周回している。しかもイオの周回スピードは1周42時間と非常に速い。木星からの距離が変化することはイオが木星の重力によって歪むことにつながり、これが火山活動のエネルギーとなっているのだという。

 この木星は実は地球の誕生にも大きく影響しているという。我々はこの太陽系が標準的なものだと考えがちだが、宇宙の観測によるとむしろ特殊なものであることが分かってきたという。今まで惑星が観測された太陽系では、恒星の近くにスーパーアースと呼ばれる地球の数倍の大きさの巨大な岩石惑星が存在する場合が多く、地球のようなサイズの惑星が複数個存在するパターンはむしろ珍しいという。そしてそのような太陽系が誕生したのには木星が大きく影響しているという。

 

太陽系惑星誕生に大きく影響した木星大移動

 太陽系の創成期、生成した木星は太陽に接近する方向に移動し、その際に多くの星間物質をはじき飛ばした。その影響によって地球や金星や火星などはあまり大きく成長することが出来ず、小惑星帯にはケレスのように惑星に成長しきれなかった小惑星が残ることになったという。今の大きさになったのだという。また今回の内容では触れていなかったが、この際に水星が今の軌道にはじき飛ばされたということも以前の放送で解説されていた。

木星は今でも他の惑星の命運を握っている

 その後、土星の生成による重力の影響などによって木星は今の軌道に安定したのだが、それでも周辺の小惑星などに対する支配力が非常に大きいという。また現在の地球は水の多い惑星であるが、これも木星が氷の小惑星などを地球に向かってはじき飛ばし、それが地球の水の多さにつながったということも考えられるという。また木星がはじき飛ばした隕石が恐竜絶滅の原因となる大変動を巻き起こしている

 木星は今も外宇宙から飛来する隕石などをその巨大な重力で捕らえることで、内惑星を保護する役割を果たしているという。つまり表題の「惑星の命運を握る」ということはそういうことだとか。

 


忙しい方のための今回の要点

・木星は太陽系のすべての惑星(木星は除く)、衛星、小惑星などを合わせたものの2.5倍もあるという巨大惑星である。
・木星の衛星イオは、木星の重力で変形するため、激しい火山活動が起こっている。
・太陽系創成期、木星が太陽に接近して周辺の星間物質をはじき飛ばしたことで、今日の太陽系の形が出来た。
・木星はその後、土星の重力で今の軌道に落ち着いたが、それでも小惑星に対する重力による支配力が強く、木星がはじき飛ばした隕石が地球に飛来することで、海が出来たり、恐竜が絶滅したりなどが起こっている。
・今日でも木星は外宇宙から飛来した隕石を捕らえる楯になるなど、地球に対する影響力の大きい惑星である。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・こういう番組を見ていると、人類の絶滅なんて簡単なんだなという気がしてきます。木星が一つ小惑星を弾き飛ばせば、映画と違って今の人類にはそれを阻止することはほぼ不可能です。いくら人類が文明を誇っていても、気候変動で作物の生育が不可能になれば、死に絶えるしかないでしょう。考えていると人類も儚いものです。
・その儚い中でつまらん権力争いであちこちで紛争しているのだから、つくづく「愚かな人間共よ」と言いたくなってくる。
・ところでイオとエウロパが接近することでイオの軌道は影響を受けているとのことでしたが、それだったらそのことはエウロパの表面等にも何らかの影響を与えているのでは。そっちの方はまだ不明なのかスルーでしたね。