2019年9月、アメリカのウォルターリード陸軍研究所で製薬ベンチャーのCEOである赤畑渉氏が画期的で重要な試験に挑んでいた。
画期的なマラリアワクチンを開発
彼が開発しているのは世界で大勢の命を奪っているマラリアのワクチン。マラリアは現在薬が開発はされているが、これらは非常に高価であるために使用できる者は限られており、安価なワクチンの開発が期待されていた。今回、赤畑氏が開発した新型ワクチンの効果と安全性を確認する試験が実施されたのである。
試験はまず30人の被験者にワクチンを接種してもらう。そして抗体が出来た3週間後にマラリアに感染した蚊に刺されてマラリアを発症するかを見るというものである。もしここでマラリアが発症した場合には薬で治療することになる。
今までマラリアのワクチンは多くの企業が開発に挑んできたが、実用化されたのはたったの1種類であり、それも効果は40%程度しかないという。これでもマラリアの根絶は難しい。赤畑氏のワクチンは動物実験では90%の効果を示しており、これはマラリアの根絶を目指せるレベルのワクチンである。
赤畑氏が開発した画期的技術
赤畑氏のワクチンはVLCという遺伝子を抜いたウイルスの殻の表面にマラリアの抗原を散りばめたものである(遺伝子が抜いてあるのでウイルス自身は増殖力を持たない)。表面にいかに多くの抗原を散りばめられるかがワクチンの強さに影響するとのこと。赤畑氏はこのVLCの製作にチクングニアウイルスという通常の4倍のサイズのウイルスに注目し、その殻を合成するDNAを解析することで、大きい上に中の遺伝子を抜いても壊れることのないVLCを製作することに成功したのだという。しかもこのVLCは大腸菌を使って大量生産が可能とのこと。この大きなVLCの表面に480個のマラリアの抗原を埋め込むことに成功したのだという。
マラリアは蚊から送り込まれた三日月型のマラリア原虫が肝臓に達し、肝臓の細胞に潜り込んで発症形態という丸い形になって増殖する。これがマラリアの感染だという。そして増殖した原虫が血液を通して体中に出て行って赤血球などを破壊して毒素を出す。これがマラリアの発症である。こうなると最悪の場合には脳や腎臓の機能不全を起こして死に至る場合があるという。赤畑氏のワクチンはマラリア原虫が肝臓に達するまで45分間を狙って原虫を攻撃するようになっている。そのために強い効果が必要なのである。
第1次テストは成功
被験者がマラリアに感染した蚊に刺された3週間後、マラリアに感染した被験者は1人もいなかった。なおその後の3ヶ月でもマラリア感染の報告はないとのこと。まず第1段階の実験は成功である。次は赤畑氏はマラリアの流行地域であるコンゴで臨床実験を計画している。この結果によってはマラリアの制圧が可能となるかも知れない。
非常に画期的な驚きの研究です。こんなすごいことをしている日本人もいるんだということに驚きました。日本の組織は保守的すぎてなかなかイノベーションが出ないと言われていますが、いるところにはいるということで安心します。赤畑氏の研究の成功を祈ると共に、彼に続くさらなる人材が登場することに期待したいところです。
忙しい方のための今回の要点
・ベンチャー企業の赤畑渉氏が開発したマラリアのワクチンの臨床試験が行われることになった。
・現在マラリアの治療薬はあるものの、非常に効果であるために安価なワクチンの登場が期待されている。
・赤畑氏が開発したワクチンは、VLCという遺伝子を抜いたウイルスの殻の表面に多数のマラリアの抗原を埋めたものである。大きくて頑丈なVLCを用いて大量の抗原を埋めたことによって強力なワクチンを開発することに成功した。
・30人の被験者にワクチン接種後にマラリアに感染した蚊に刺されてもらったが、マラリアに感染した被験者は1人もいなかった。
・赤畑氏は次はマラリア流行地であるコンゴでの臨床実験を計画している。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・偉い人というのはいるところにはいるものなんですね・・・。トランプのように世界を滅ぼしかねない馬鹿もいる一方で、このように人類を救う英知も登場する。本当に人って様々です。