教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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1/27 BS-TBS にっぽん!歴史鑑定「平家物語の真実 清盛の娘・建礼門院徳子の悲劇」

 建礼門院徳子とは平清盛の娘で安徳天皇の母。平氏一門が全滅した後に、一人だけ生き残って一族の御霊を弔う生涯を送った女性である。その彼女の物語。

 

六道をすべて経験したと語った建礼門院徳子

 平家物語の最終巻は建礼門院徳子の物語なのだが、そこには彼女が隠棲していた大原の寂光院に後白河法皇が訪ねてきたというエピソードが書かれている。これは今までは創作だろうとされていたのだが、最近の研究では他の資料にもこの時期に後白河法皇が大原を訪れていることが記されており、どうやら真実らしいということになったとのこと。そこで二人が語った内容だが、平家物語によると徳子が「自分は今生で六道を体験した」と語ったらしい。

 六道とは仏教の用語で「天上道」「人間道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」のことである。それぞれの世界にそれぞれの苦しみがあり、人は輪廻転生をしてこれらの世界をグルグルと回りながら解脱して極楽へ行くことを目指すという考えである。

 

天上道であった若き日々

 徳子の幼き日は天上道であった。父である清盛は後白河法皇と緊密な関係を保ち、それを元にして次々と出世を重ね、ついには太政大臣にまで上りつめる。そして次には天皇の祖父となるべく徳子を高倉天皇の后(中宮)にする。一種の政略結婚だが、6最年下の高倉天皇との夫婦仲は良かったという。ただなかなか子供が生まれず(結婚時の高倉天皇はまだ14歳だというから、そもそも子供の作り方もよく分かっていないのでは)清盛もイライラとするが、彼女が24歳の時についに皇子である高倉天皇が生まれる。彼女は何不自由もない生活を送っており、このような生活が今後も続くと考えていたというで、天上道というわけである。

 しかしここで清盛と後白河法皇の対立が表面化、清盛が後白河法皇を幽閉するという事件が起こる。そして高倉天皇は退位して安徳天皇が即位。こうして清盛は念願であった天皇の祖父となるわけである。

 

次々と押し寄せる悲しみと苦しみ

 だが間もなく高倉上皇が病死、そして清盛までも突然亡くなってしまう。平氏一門は息子の宗盛が継ぐが、そこに木曽義仲の挙兵があって平氏は都を追われてしまう。この際に高倉天皇を連れて三種の神器も持ち出すことで政権の正当性を謳ったのだが、後白河法皇に逃走されてしまったことで事態が変わる。後白河法皇は木曽義仲に平氏追討の院宣を下したので、平氏は朝敵となってしまうのである。

 平氏は太宰府へと落ちていくのだが、そこにも追討の手が迫り、小舟で海に逃げ出すことになる。その際に平清経が逃亡生活の将来を悲観して海に飛び込んでしまう。このように愛する人たちの別れや会いたくない人物が迫ってくるというのが人間道の苦しみなのだという。

 小舟で海を漂流する平氏一門は水や食料もない状況を経験している。これが餓鬼道になる。

 なんとか屋島に到着、ここで勢力の回復を図り、京の奪還も可能ではという状況になるのだが、ここで義経に一ノ谷で大敗、再び逃亡の旅へ。さらには屋島にも攻め込まれてとひたすら戦続きになる。これが修羅道だという。

 そしてついに壇ノ浦。平氏は奮戦するものの多勢に無勢で源氏に追い込まれる。もはやここまでと徳子の母の二の尼は安徳天皇とと共に海に飛び込む。そして徳子も海に飛び込むのだが、海に沈む前に捕らえられて生き延びることになってしまう。この際に彼女が目にした光景はまさに地獄道であった。

 

残った畜生道と六道体験の意味

 ・・・畜生道だけが抜けているがと思うのだが、それについては平家物語の読本(琵琶法師などが口伝で伝えたもの)は都に行く際ら徳子が平氏一門が竜宮城で龍となっている夢を見ており、それが畜生道なのだとする。また別の本では徳子が船上で兄たちと近親相姦の関係になっていたのが畜生道とのことなのだが、どうもどちらにして徳子に六道コンプさせるために無理矢理にでっち上げた話のようである。

 なぜここまでして徳子に六道コンプさせる必要があるかだが、徳子を六道コンプしたことで神聖な存在にする必要があったからだという。では徳子の神聖化の必要性なのだが、これは当時の都の人などが平氏の怨霊を恐れており、それを鎮魂するという意味では神聖化された徳子が平氏の御霊を弔うということが必要だったからだとのこと。都の人々を安心させるための仕掛けだったようだ。

 とにかくまさに地獄を見た女性であるが、最後には極楽往生した様が記されているとのこと。何か死んでまで利用されているような気もしないでもない・・・。

 

 夫婦仲の良かった亭主は先立ってしまい、息子は争いの中で自殺させてしまうというかなりツラい人生を送った人です。何よりもこの時代の女性ですので、自らの人生に対しての選択権が全くないというのがツラいところです。まあ平氏の怨念云々抜きにしても、せめて彼女ぐらいは安らかに最後を迎えて欲しいという気はするでしょう。

 権力争いの渦中に巻き込まれたわけですが、清盛にしても後白河法皇にしても強烈に権力を狙っています。ところで権力ってそんなに魅力があるんですかね? 私は富貴は欲しいとは思いますが、べつに権力を振るいたいとは思いません。もっとも安倍のような無能な上に国の財産を私物化するような輩に権力を握らすぐらいなら、いっそ私が握った方がなんてことは思いますが(笑)。もっともそれでも、その後にまともに権力を行使しようと考える輩が登場すれば、いつでも権力の座など譲ります(笑)。私はどちらかといえば、即位しても面倒な政治なんて放り出してすぐに譲位し、東山文化を花開かすタイプだな(笑)。

 

忙しい方のための今回の要点

・平氏の生き残りである建礼門院徳子は、平家物語によると後白河法皇と対面して「今生で六道を経験した」と語ったとされている。
・徳子に六道を体験したと語らせた意図は、平家物語は平氏の怨念を鎮める鎮魂の意があるので、徳子を神聖化することで怨念を抑えるという意味だという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・私は例えば自分が政治家になったとして、有能な政治家になれるとは思いませんね。私に一番欠けているのは大を生かすために小を殺す勇気。政治家は時にはこういう非情な決断を求められます(安倍なんかは逆に小である自らの取り巻きを優遇するために、大である国民を切り捨てまくってますが)。昔から清濁併せ呑むなんていうんですが、残念ながら私はそういう大きな度量がありません。

 

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