教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/14 テレ東系 ガイアの夜明け「食品もう捨てない ワケアリ品9割引!スーパー新勢力」

 現在問題となっている食品ロス。それに絡んだビジネスを紹介。

居酒屋チェーンやコンビニでの食品ロス削減の取り組み

 食品ロスが問題になっている昨今、和民では宴会の最初の30分と終わりの10分はおしゃべりよりも料理を食べてもらおうという運動を行っている。また持ち帰り用のパックなども用意するとか。食品ロスを防ぐための取り組みである。

 またファミマではレジ横のおでんを廃止して、パック入りのおでんに切り替えるという方針を掲げている。今のおでんは常に食材を入れておく必要があるので、ロスが多いのだという。これに変わるのがレンジアップおでんで、定番具材の入ったパックをレンジで加熱して客に渡すのだとか。確かにロスは減るがそれで美味しいの? もっとも私は現状のおでんも買いませんけど、あまりに衛生的に問題ありそうだから。多分食品ロスの問題だけでなく、こっちの問題も背景にあるような気がする。

 現在、年間600万トン以上の食品が食べられずに捨てられているのだという。これを何とか減らすというのは既に社会的要請である。それに取り組む企業や一流シェフなどが登場する。

 

ワケアリ品を特価品として販売するスーパー

 東京・埼玉に10店舗を展開するスーパーみらべる。ここの商品を見るととにかく安い。即席麺が3食で98円などのとんでも目玉商品が登場する。実はこのスーパーの安値の秘密は賞味期限なのだという。つまりは賞味期限が迫っている商品を仕入れて、それをことわった上で特価で販売するのである。スーパーには1/3ルールというものが存在し、例えば賞味期限が6ヶ月の場合、製造日から2ヶ月以上経った商品は仕入れない、さらに2ヶ月以上たった商品は販売しないというルールがあるのだという。つまりはまだ賞味期限が2ヶ月残っているにもかかわらず、この時点で廃棄か返品(返品された商品は当然のようにメーカーの方で廃棄されるのだろう。雪印のように再利用していないのなら。)になる。また季節限定商品なんかも季節を過ぎると価格が暴落する。この店ではそのようなワケアリ品を仕入れて安価に販売しているのである。これからも仕入れルートを広げていきたいとしている。

 

ワケアリ品を手がける卸会社とワケアリ品販売店

 一方ワケアリ品を手がける会社も存在する。アイムライズという会社である。主に食料品や化粧品卸の会社なのだが、5年前からワケアリ品を扱うようになったという。社長の佐藤亮一氏によると、在庫を抱えて困ったメーカーに対して何とかしたいと取り組むようになったのだという。特に食品類は食品ロスを減らしたいという考えがあるのだという。この会社が手がけるのはワケアリ品を抱えたメーカーとそれを販売する商店のマッチングであり、会社自体は在庫は抱えない(でないとリスクが大きすぎてビジネスにならない)。

 去年11月にオープンしたワケアリ商品の専門店「エコロマルシェ」は店頭商品の半分をアイムライズから仕入れている。この店では容器に変形があるようなワケアリ品だけでなく、賞味期限切れの商品までを扱っているという。賞味期限が切れたからといって、それがすなわち商品の品質が悪化するわけでもない。そこをわきまえた顧客が多く訪れているようである。また商品を持ち込む業者なども存在する。

 

タピオカ9トンをさばけ!

 アイムライズの佐藤社長の下にはとんだ案件が飛び込んできた。タピオカの在庫9トンをなんとかしたいというのである。取引先の会社の従業員の中国人が、知り合いから「儲かるから」と話を持ち込まれて仲間と700万円ほどを投資して、個人的にタピオカを9トンも仕入れてしまったのだという。しかし既に日本国内ではタピオカはだぶつき気味で、見事に売れなかったのだとのこと。佐藤氏はとりあえず賞味期限に余裕があること、物自体の品質は良いことを確認して引き受けることにした。

 というものの、心当たりの取引先などに連絡を取ってみたものの全く良い反応はない。当初は仕入れ原価に手数料を乗せた価格で販売を試みていたのだが、やはりこれでは価格メリットがないので厳しい。そこで佐藤氏は依頼主と交渉して販売価格を下げることにする。そしてようやくカラオケなどを手がける企業から声がかかる。商談に赴いた佐藤氏はタピオカの販売だけでなく、今後も別の取引につながる感触を得て上々である。

 

食品ロス削減に取り組む一流シェフ達

 一方でシェフの観点から食品ロス削減に取り組んでいる人もいる。日本の一流料理人が集まったシェフードでは食品ロスの削減もテーマになっており、捨てられる食材を利用しての料理なども勧めている。メンバーの一人である中国料理シェフの五十嵐美幸氏は自らの店で通常捨てられるカリフラワーの茎を利用した料理など出して好評を博している。食材を余すことなく使用するということを目指している。さらにはジェラート店の依頼で、形が悪いなどで捨てられる魚沼産べにはるかを使用したジェラートなどを開発。これも新商品として登場することとなった。

 

 食品ロスの多くは家庭で出ているとのことですが、これが頭の痛いところです。実は我が家でも使用しないまま古くなってしまって捨てざるを得なくなる食材というのはどうしても出ます。そういうのをなるべくなくすにはどうするかというのは難しい問題。

 また食べられるのに捨てられる勿体ない物というと、私はまず大根の葉っぱを連想します。大根の葉っぱはしおれやすいので、販売の段階で捨てられてしまうことが多いのですが、実際は新鮮な大根の葉っぱは十分に菜っ葉として美味しく食べられるだけのポテンシャルを持っています。炒め物にしても良し、味噌汁などの具材にしても良し、そのまま刻んで鍋物の具材などにも使えます。なぜ大根の葉っぱがもっと広く食べられないのかには以前から疑問を感じています。後、生シイタケの茎なんてのも私の好きな食材ではあります。

 また賞味期限の設定の仕方というのも実はいろいろと問題があります。というのは統一基準があるようでないからです。実際にはいつまでも傷まないで食べることが出来るような食品にまで賞味期限を無理矢理に設定しています。また保存料をタップリと使用したヤマザキのパンのようなものの方が賞味期限を長く設定できるので、保存料を使っていないメーカーのパンと比べた時、賞味期限が長いせいでヤマザキのパンの方が新鮮だと勘違いしてしまうなんてイカサマもあります(薬をタップリ使って賞味期限が長いことが、コンビニのパンがヤマザキばかりになる最大の理由である)。

 

忙しい方のための今回の要点

・食品ロスが問題となっている中、スーパーみらべるでは賞味期限が近づいた商品を仕入れて特価で販売して好評を博している。
・スーパーには1/3ルールというのがあり、賞味期限が残り1/3になった商品は廃棄するか返品されるのだという。このようなワケアリ品を専門に扱う会社もある。
・エコロマルシェでは賞味期限が近づいた食品だけでなく、賞味期限切れも含めたワケアリ品を販売している。賞味期限切れが直ちに消費期限切れではないことをわきまえた顧客などに好評を博している。
・一方、シェフの中からも捨てられる食材を有効に料理に使用しようという運動が起こっている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・いつまでも飽食の時代が続くとは考えられない(世界全体で見ると食料は足らない)ことからすると、やはり食品ロスは何とかする必要があるでしょう。結局は目の前の効率と儲けを重視したのが現在の結果ですから、やはり経済の中に何らかの形で「環境負荷」という要素を取り込む必要があります。しかし今の資本主義にそのままの形でこれを取り込むのは困難です。今こそ、新しい経済システムが世界的に求められているところだと思われます。環境と調和するということを重視する経済システムは、拡大再生産でなく0成長(時にはマイナス成長)で常態として問題なく成立するシステムである必要があるのですが、まだそんなシステムを提案している学者もいないようです。

 

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work