1000の仏塔に3500の建造物が並ぶ古都
昨年世界遺産に登録されたのがミャンマーの古都・バガン。ここは1000年前に初めてミャンマーを統一したバガン王朝の都である。この古都の風景を特徴付けるのは1000の仏塔から始まる3500もの建造物である。
都の中心部には今でも城壁が残っている。城壁の内側が王族のエリアであり、王宮の跡も残っている。現在は別の場所に王宮が復元建築されているが、豪華な高層建築である。バガンは240年にわたって栄えた豊かな王国だった。
古都の周囲にそびえる黄金の仏塔
建造物の中でも特に目を惹くのが、バガンの北にそびえ立つ黄金の仏塔、シュエ・ズィー・ゴン・パゴダ。ここには仏陀の歯などが安置されていると言われており中には入ることは出来ない。また金箔で覆われた建物には特に正面はなく、いずこの方向からでも拝むことが出来るようになっている。なお四辺はキッチリと東西南北の方向を向いている。
バガンの西と東にも同じような黄金の仏塔が建っている。これらの仏塔は高い位置にあるためにと置くからでも見ることが出来るようになっている。
さらに南には大河・エーヤワーディ川のほとりに黄金の仏塔が建つ。この仏塔は川の水運の目印代わりにもなっており、都を目指した荷物はここで陸揚げされるようになっていた。
巨大建造物を支えた大河
バガンで最も巨大な建物がダマヤンジー寺院である。このような巨大建築は国家の繁栄を示すものである。そしてバガン王国繁栄の元となったのは大河・エーヤワーディである。川の上流と下流には穀倉地帯が広がり、水路を整備して主食の米を安定して生産できるようにし、それらの米は川によって運ばれた。さらには建築のためのレンガなどの資材も川で運ばれた。
建造物の中でも最高傑作と言われているのがアーナンダ寺院。規模だけでなく精緻な細工が施されている。この寺院には今でも仏教徒が参拝する。バガンはカンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥール寺院と並んで東南アジア三大仏教遺跡に数えられている。しかし他の2つがその国の唯一最大の建造物であるのに対し、バガンは大小の建造物が3500もひしめいている。その違いは何が原因なのか。
3500もの建造物を建てた人々の願い
実は多くの建造物は個人の寄進によって建てられたのだという。寺や仏塔を建造することは大きな功徳となり、来世で幸せになることが出来るのである。これらを建てた人はその行いを石に刻んで残した。こうして3500もの建造物が建ち並んだのである。
4年前の大地震で多くの建物が被害を受けたが、それらの建物は現在も修復が行われている。このように破損した建物を修復することも功徳となるというのである。ミャンマーでは今日も幼い僧侶達が托鉢で回っているが、住民は食料などを与える。これも功徳となるわけである。
信仰によって築かれて信仰によって守られている古都のお話。宗教もこういったものなら平和なのですが、あっちの神よりもこっちの神の方が正しいとか言い出すと戦争の原因となるのでたちが悪い。仏教は視線が自身の内面に向かっているので比較的平和的ですが、これが外向きに信仰を広げる意図の強いカルト的な一神教は一番たちが悪い。という観点から見ると、世界的に一番たちの悪い宗教はやはりキリスト教となります。
忙しい方のための今回の要点
・昨年世界遺産に登録されたミャンマーのバガンは、1000の仏塔を始めとして3500もの建物が並んでいる。
・バガンは初めてミャンマーを統一したバガン王朝の都で、都の東西南北には黄金の巨大な仏塔が建造されている。
・バガン王国の豊かさを支えたのは大河を利用した農業と水運である。多くの建造物の建築資材もこの川で運ばれた。
・バガンに3500もの建造物が並ぶのは、個人によって寄進された寺院などが多いからである。寺院や仏塔を建立することは大きな功徳とされ、来世での幸せな生活が約束されることから、多くの人々が競って建物を建築した。
・建物の中に地震で被害を受けたものもあるが、これらの建物を修復することも功徳とされるため、現在でも多くの建物の修復が続けられている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・それにしても黄金の巨大仏塔はインパクトあります。やっぱり元々の仏教って結構キンキラキンなんですよね。なぜか日本では仏教遺跡はわびさびのイメージがありますが、あれらも本来の建造時は朱塗りに碧にキンキラキンだったはずなんです。ただそれをそのままに建ててしまうと、いかにも「お金大好き(というよりも教祖のためにそれを集めること自体が教団の唯一かつ至上の目的)」の新興宗教の建造物に見えてしまうという・・・。
次回の世界遺産
前回の世界遺産