教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/12 サイエンスZERO「未開の境地!"聞こえない音"の最新技術」

 人間の聞こえる音の範囲は20~2万ヘルツと言われているが、その人間の可聴帯域外の音を使用しようという技術の紹介。

 

高周波を害獣駆除に活用

 まず最初に登場するのは民家の周りに設置されている謎の装置。その装置を見ていると何もないように見えるのだが、現れた動物が突然に逃げ出している。これは動物を発見すると人間には聞こえない高周波の音を発する装置だという。動物は突然に鳴り響く大きな音に驚いて逃げるという仕掛けらしい。これは野生の動物が大体人間よりも高周波が聞こえるようになっていることを利用しているらしい。ちなみに象は人間よりも可聴域が低音よりとのことなので、もし象が現れた時にはこの装置は役に立たない(笑)。

 

高周波を生体認証に利用する

 また高調波の反響を生体認証に使おうとしている研究もある。耳道の形が人によって異なるので、そこでの高調波の反響パターンは人によって異なる。これで生体認証を使用ということ。番組で顔認証だと100%突破できてしまうという双子を使い、耳認証だと判別が出来ますという内容を放送しているのだが・・・実はこの後に開発者の先生が「5回に4回は突破されてしまった」と舞台裏をバラしてしまっている。オイオイ、正直すぎ。コジルリが慌てて顔認証だと100%だったけど、それが80%になったとフォローしてるけど、かなり苦しいフォロー(笑)。もっともこれはもっとデータが揃えば向上する可能性はある。

 

字幕を表示する高周波眼鏡

 さらには超音波を舞台の字幕などに使用しようという研究も。特殊な眼鏡をかけてもらって、そこに2万Hz前後の音を送ることで、表示される字幕が切り替わる信号になるという装置。例えばオペラなどの字幕を出すのに使用できる。電波でも良いような気がするが、電波だと舞台で使用されている無線と混信する可能性があるとのこと。音波なら特殊な装置が必要なく普通に舞台のスピーカーを使えるし、光と違って回り込むので影にならないから有利ととのこと。

 

ただし高周波の健康に与える影響も注意

 ただ高周波などには注意点もある。道路などで調べてみると2万Hz前後の高周波は結構出ている。そして人間の可聴域は2万Hzまでと言われているが、人によってはそれ以上が聞こえる人もいる(小学生などでは3万Hz以上まで聞こえたという例もあるとか)。そういう人にとっては非常に不快な大きな音になってしまい、健康に影響を与える可能性がある。なお聞こえない人にとっても体に影響がないとは限らない。

 ちなみにこれは私も経験があり。今は耳が劣化して高音はサッパリ聞こえません(ヴァイオリンの高音などはツラい)が、学生時代などはテレビのブラウン管が発するキュイーンという高周波が聞こえて、電気店に入った途端に吐き気がして逃げ出したことがあります。感じ方としては、音と言うよりも空気感が変わるというか、圧迫感のようなものがあるという感じ方です。頭の芯が麻痺するような感覚がありました。実際にテレビの電源をオンオフするとその感覚が切り替わるのも確認しましたので、気のせいではありませんでした。またメーカーによって音が多い少ないがあったのを覚えています。なお大人には聞こえないようでした。

 

低周波を検出して竜巻を予測する

 前半は高周波でしたが、低周波の方の利用も研究されているという。アメリカで研究されているのは竜巻が発生する前に起こるインフラサウンドと呼ばれる20ヘルツ以下の低周波を捕らえることで竜巻の発生を予測しようというシステム。現在の竜巻予報は精度が25%程度と低いのが問題であり、これが実用化されれば竜巻の発生を正確に予測して迅速な避難につなげることを期待されているとのこと。ちなみにこれを津波の予測につなげようという研究なども日本ではなされているらしい。これを聞いて私が素人考えに浮かんだのは、もしかしてこれって、大規模土砂崩れの予測にも使えるんじゃないだろうかということ。大規模土砂崩れの予兆として斜面の深い部分でのズレなどが起こるだろうから、それが低周波を出す可能性はあるのでは。

 

 以上、人間の可聴帯域外の音を使った新技術について。ちなみに可聴帯域外の音を使うと言えば、ネズミ駆除器などがポピュラーですが、これを昔使ったことがありますが、実際に効果があるのかどうかは怪しかったんですよね。装置が悪くて実は音波が出てなかったのか、それともネズミも慣れてしまって反応しなくなるのかは不明でしたが。そう言えば若者ほど高音が聞こえやすいというのを利用して、コンビニなどの前に高周波を出して、コンビニ前で夜中にたむろする若者たちを駆除(笑)するなんて話を聞いたことがあるが、あれってマジだったのかネタだったのかは未確認。もっともその若者たちが珍走団とかだったら、既に耳がバカになっていて聞こえない可能性も大。

 なお今回、番組中何度も「こんな音」と音を出してましたが、これらの音はすべて私には全く聞こえませんでした。私の耳が腐っているせいか、うちのAV用のスピーカーシステムが性能が悪いのか、デジタル録画の時点でカットされてしまったのか、そもそもの放送に音が乗っていないのかの判別は不能ですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・人間の可聴帯域外の音を使用する技術の紹介。まずは可聴帯域外の高周波を使用して野獣を追い払うシステム。
・また高周波の耳道内での反響パターンから生体認証に使う研究も進められている。
・さらには高周波を切り替え信号にして、字幕を表示する眼鏡などのシステムもある。
・ただし2万Hz以上の高周波も若者には聞こえる場合があるし、健康に与える悪影響は未解明の部分がある。
・アメリカでは竜巻発生前に出るインフラサウンドと呼ばれる20ヘルツ以下の低周波を検出することで、竜巻予測をするシステムが研究されている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・実のところ、20~2万Hzが可聴帯域というのはCDの規格が定まる時の根拠になったのですが、それは間違いらしいというのは後に分かってきたんですよね。実はもっと高音域もいわゆる音場感などに大きな影響を与えるというようなことが。それと本当にこの帯域内の音だけにしたら、全体の音が低音寄りになりすぎて非常に鈍重な音になるので、実際には低音をもっと上の方でカットしないと歯切れの良い音にならないことも分かってきて、CDはさらに音域が狭くなることになった。これが当時のオーディオマニアが言っていた「CDの音はLPの音に比べて悪い」という理由です。実際に私も学生時代にはそれは一発で分かりました。もっとも今では耳が腐ってしまってますので、CDの音でも十分ですが(笑)。ただそれでもMP3はさすがに音が悪すぎて聴く気にならない(MP3は帯域の問題でなく、いかにも音が間引かれているというのが明らかに分かる)。

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