砂漠の岩山の中の幻の都市
ヨルダンのペトラは200年前に探検隊によって岩山の中で発見された、2000年前の古代都市である。
ペトラに至るには岩山の間のシークと言われる岩の裂け目の道を進む必要がある。断崖は高いところで80メートル。一番手前には岩をくりぬいて作られたエル・カズネと呼ばれる建物がある。そこからさらに先に進むと都市の中央部に至る。ローマなどにも見られる半円形の劇場があるが、ここのものは岩を積み上げるのではなく、岩を切り出して作られている。4000人を収容できるこの劇場では祭祀や演説が行われたという。
周囲を取り囲む岩壁には王などの墓が作られている。全ての建物が加工しやすい砂岩を削り出して作れている。ここはナバテア王国の首都で3万人が暮らした。
豊富な水を蓄えたオアシス都市
このような砂漠の中で水をどうしたかと思うところだが、この都市は雨を蓄える構造になっており、周囲に降った雨は残らず水路を通って貯水槽に蓄えられる。このような貯水施設はペトラ全体で200以上存在するという。メインストリート沿いには噴水の跡もあり、さらには巨大なプールまで存在したという。豊富な水を湛えた砂漠のオアシス都市だったのである。
中心部には岩を積み上げて作った建物の跡がある。議場が存在し、ここに王や部族の代表が集まって会議を行ったとされる。
紀元前1世紀から200年に渡って繁栄を続けたペトラだが、3度の大地震に襲われている。これで多くの建物が倒壊したが、今でも残っている建物は、制震材として岩の間に木材が挟まれている。非常に高度な構造である。
砂漠の交易路の中継点として繁栄
ペトラの繁栄を支えたのは砂漠の交易路の中継点としての価値である。砂漠を通るキャラバンはここに立ち寄った。ペトラには交易商人のための施設もあるという。岩を削って作った家の壁には漆喰が塗られて壁画が描かれていたという。また床下暖房の施設もあり、砂漠の夜の寒さをしのげる構造になっている。
今では幻の民と言われるナバテア人だが、アラブ人系の高度な技術を持つ民族であったと考えられるという。非常に薄い独自の高度な土器を製作していたことが分かっている。
忙しい方のための今回の要点
・ヨルダンのペトラは200年前に発見された、岩山の中の2000年前の古代都市である。
・多くの建物は砂岩を削り出して作られており、議場や劇場なども存在した。
・また周囲から雨水を集める構造となっており、噴水やプールなどまである水に恵まれたオアシス都市であった。
・ペトラの繁栄は砂漠の交易路の中継点であったことに由来し、キャラバンのための施設も用意されている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・秘密都市という印象ですね。空からの視点がなかった時代にはまず見つからなかったでしょう。日本なら「平家の隠れ里」なんて言われるところかな。
・こういう岩山の砂漠では洞穴式住居というのはよくあり、中国の奥地なんかには今でもありますが、ここのはかなり高度で洗練されてますね。となれば逆に、なぜかこの都市が放棄されたか、ナバテア王国は一体どうなったのかというのが気になるところ。
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