教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/19 TBS系 世界遺産「大草原に2500万本!闇に輝くナゾの塔」

ブラジルに広がる熱帯の草原

 南米ブラジルのセラード保護地域。ここは果てしなく続くような草原に土の塔が2500万本も立っている光景が続く。これは自然の産物である。

 セラードと呼ばれる熱帯の草原には茶色く変色した地域が見つかるが、これは火事で焼けたところだという。1年の半分は雨が降らないために極度に乾燥しているために自然発火での火事が相次ぐのだとか。

 ヴェアデイロス平原国立公園では筋状の森が見える。この森の水は周囲の山脈から地下水脈でやって来ているのだという。上流の山岳地帯には豊富な水がある。これらの水は雨期の間に岩盤の割れ目に染みこんで、それがゆっくりとしみ出してくるために年間を通じて豊富な水を湛えているのだという。これらの割れ目は硅岩が地下から地表に現れた時に、解放された圧力によって生成したのだという。この森の枯れ木の中には巣を作るオウムも棲息している。

 

闇に輝く土の塔

 エマス国立公園にある多数の土の塔は蟻塚である。大きなものには300万匹ものシロアリが住んでいる。シロアリが土を唾液と糞などで固めて作ったもので、岩のように硬くなっているという。この大地にある条件が揃った時に幻想的な風景が繰り広げられる。雨期の始め、雨が降って夕暮れまでに止んで湿度が高く風がないとき、これらの蟻塚が緑色の光を放つ。これは蟻塚に寄生している蛍の一種であるヒカリコメツキの幼虫が放つものだという。ヒカリコメツキは羽アリを食料としており、羽化した羽アリを引きつけるために光を放つのだという。1つの蟻塚辺り平均で180の光が瞬くという。

 

独特の生態系

 この平原ではシロアリを中心とした生態系が確立している。ここに住むオオアリクイは鋭いかぎ爪で蟻塚を崩すと、長い舌でありを絡め取って食べる。また地面に穴を掘ってくらす昼行性のアナホリフクロウなどもこの地に棲息する。アナホリフクロウは蟻塚の頂上から獲物を探す。

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オオアリクイ 出典:Wikipedia

 またこの地で頻発する火事も新たな再生を促す。この地に生える木は分厚いコルク層の外皮をまとっており、火事で焼けても中は生きているのだという。また地面の草も深く根を張っているのでそこは生きている。また蟻塚も分厚い外皮のために内部は温度が上がらない。だから1年経てば青々とした草原が復活するのだという。

 この独特の生態系は世界遺産に認定された。

 

 蟻塚が光るという話は以前に「ダーウィン」で見た記憶があります。あのように虫が光を放つ場合は、大抵は餌を引きつけるかメスを引きつけるかのどちらか。幻想的な光景ではありますが、すべては虫によるものと考えると少々気持ち悪い(笑)。

 ただこの地域の生態系もかなり微妙なバランスの上に成り立っているような印象を受けますね。一つバランスが崩れるとあっという間に砂漠化してしまいそうな気がする。ブラジルと言えばトランプと丙丁つけがたいと言われている大統領がいますから、バカやらなければ良いですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・ブラジルには熱帯の平原セラードが広がる国立公園がある。
・この地域は1年の半分は全く雨が降らないので自然火災が多い。
・周囲の山々は岩盤に染みこんだ雨期の雨によって年間を通じて水が豊かで、それが地下水脈を伝って草原にも流れている。
・この平原には2500万もの蟻塚があり、条件が揃うと寄生するヒカリコメツキの幼虫が光を放って蟻塚が電飾で飾られたように光る。これはヒカリコメツキが羽アリをおびき寄せるためのものである。
・この地域の植物は火災でも生き残れるようになっているので、火事が起こっても1年も経てば青々した草原が復活する。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・特定の条件が必要なので、光る蟻塚の撮影は大変だったろうと思われます。ただ映像自体はやはり「ダーウィン」の方が上手かった気がする。そこは予算とキャリアの差か。

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