教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/13 BSプレミアム プロジェクトX 挑戦者たち(リストア版)「東京タワー恋人たちの戦い ~世界一のテレビ塔建設・333mの難工事」

世界最高のテレビ塔建設

 今回は東京タワー。今でこそその使命は東京スカイツリーに譲ることになったが、長年東京一円に放送電波を送り続けた電波塔で、この番組放送時点でも自立型の鉄塔としては世界最高だったという。これを建設した男たちの愛と情熱の物語。

 というわけで今回もとりあえず私のアーカイブから。

 

東京タワー恋人たちの戦い ~世界一のテレビ塔建設・333mの難工事

 日本中が力道山の活躍に狂喜し、テレビ時代を迎えようとしていた昭和30年。テレビ局増加に伴い電波塔が乱立する状態を解消するため、首都に巨大な統合電波塔を建設する計画が持ち上がる。しかし当時の最高の鉄塔が180m、巨大クレーンもない中で333mの塔を建設する計画は常軌を逸しているように思われた。

 設計図は出来上がったが、それはミリ単位の精度を要求する難工事であった。それに挑んだのが鳶達である。

 今までこの番組は企画や開発側の人間を描くことが多く、実際に工事を行った現場の人間を描くことはあまりしなかったのだが、今回は現場監督や鳶といった実際に作業を行った人物を中心に描いていた。特に若手鳶の筆頭であるボーシンを務めた桐生五郎(当時25歳)と現場監督を務めた竹山正明(当時31歳)という若手達の恋愛状況も含めて描くという方法をとっていた。

 この仕事を成し遂げてから彼女に結婚を申し込もうと決意する竹山や、工事の最中に舞い込んできた見合いで一目惚れした相手とタワー完成の翌日に挙式の予定を組んだ桐生の熱い物語が、難工事の裏で描かれている。

 驚くべきはこのタワーがほとんど手作業で作られていたことだ。ほとんど人力で組み合わせた鉄骨に対して、鍛冶職人が焼いた鋲を投げ渡し、鳶がそれを受け取って次々と固定していくといったやり方は、あまりにもハイテクとはかけ離れており、よくこんなやり方でこれだけのものを作れたものだと感心する。

 番組全体から感じるのは「職人のプライド」そのものである。特に桐生も竹山も、未だに自分が作り上げたこの鉄塔に大きな誇りを持っていることが印象的だった。これだけ誇りを持てる仕事を成し遂げた職人はある意味で幸せである。またこのプライドがあったからこそこれだけの一大プロジェクトが立ち上がったのだろう。最近はこれが日本から失われつつあるのが危うい兆候である。

 

今日的な補足を

 以上、アーカイブから。やっぱり結構淡々と要点だけ抜粋してある。

 少し補うとこのタワーを設計したのは日本の塔博士こと通天閣も設計した内藤多仲で、多仲の塔六兄弟で名古屋テレビ塔、通天閣、別府タワー、さっぽろテレビ塔に次ぐ五男で、ウルトラマンエースである。これの弟は博多ポートタワーになる。

 現場監督の竹山正明は絵に描いたような仕事人間で、一度結婚で失敗しているらしい。その彼がこの頃に付き合っていた女性に求婚するのに「この大仕事を成し遂げたら、相手も両親も結婚を承諾してくれる」と考えたらしい。いかにも仕事人間である。

 一方の鳶の桐生五郎は、群馬から一旗揚げてやると東京に出て来た男で、鳶で名を上げて独立して親方になって嫁をもらうということを目標にしていたらしい。そして工事中に親の勧めで見合いした女性に惚れて求婚したという。塔の完成の翌日に挙式するとして、チケットまで送ったというからなかなか強引。無骨な鳶との結婚になかなか踏み切れない奥さんは、密かに現場に彼の姿を見に行ったら、鉄塔のてっぺんで輝いていたのだとか。仕事一辺倒の男は女に愛想尽かされますが、やっぱり仕事の出来る男は女にモテます。

 かなり工期が厳しかったから風速15メートルの風の中で作業を続けたという。しかしスタジオで国井氏がその風を体験しているが、目を開けられないような風とのこと。しかも風向きが突然に変わるので危険極まりなかったとか。実際に鳶が一人転落して即死するという事故も発生したらしい。

 とにかくこの頃は日本中が行け行けドンドンで、東京タワーもその勢いで建設したというところがある。まあ古き良き時代の物語でもある。

 

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