教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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4/14 NHK ガッテン「知らずに買ってる!?劇うま"第3の豆腐"とは」

あまり知られていない第3の豆腐が存在した

 豆腐と言えば木綿と絹こし、用途によって使い分けたりするものだが、世間にはよく知られていないが実はメジャーな第3の豆腐が存在するという。

 それは充填豆腐と言われる豆腐。絹こし豆腐だと思って買っている人が多いらしいが、実際にパッケージにも「絹こし」と書いてあることが多く、細かな記載を見て初めて充填豆腐と分かるという次第。一体この充填豆腐とはどういうものでなぜ登場したのか。

 充填豆腐が登場したのは昭和47年という。この頃に起こった社会変化に対応するために誕生したのだとか。その社会変化とはスーパーマーケットの増加。それまで個別の商店で行うのが普通だった買い物が、スーパーでまとめて行われるようになった。しかし豆腐だけは賞味期限が2日程度なのでスーパーの店頭に置くことが困難だったのだという。そこで日持ちがする豆腐として開発されたのが充填豆腐だという。

     
充填豆腐は賞味期限が長いのでAmazonでも販売できます

 充填豆腐はまずパックに材料を入れてから密閉し、容器のまま加熱して豆腐を固めるという行程で作られる。これは鯖缶などをつくる行程とほぼ同じで、内部がほぼ無菌状態になるので日持ちがするということである。実際に賞味期限は2週間程度から半年のものまであるという。パックを見た時にバックに水が入っていない(豆腐が一杯)なのが充填豆腐の特徴。水が入っているものは従来の木綿豆腐か絹こし豆腐だという。

 

充填豆腐の特徴を生かした調理法

 これらの豆腐の違いを見分けるために、番組では豆腐をドラムの上に置いて叩いてみるという奇妙な実験を行っているが、ここで登場するドラマーがさっき充填豆腐の取材に行って説明をしてくれた日本豆腐協会専務理事の町田秀信氏というオチはなかなか笑えたが(こんな趣味を持っていたらしい)、とにかくこれらの豆腐が違うのは柔らかさ。特に充填豆腐のプルプルと震える様は印象的である。

 というわけでこの充填豆腐の料理はこの柔らかさをいかに上手く使うかがポイント。そこで登場するのが京都で充填豆腐を作っている豆腐店のおかみの藤野久子氏。彼女は二代目で彼女の店は京都ではまだ新しい創業55年の店とのこと。京都の豆腐を持って帰りたいという客のニーズに応えて充填豆腐の製造を始めると共に、その美味しい料理法の研究を行ったらしい。

どうやら豆腐スイーツなんかも出しているお店のようで、こちらが豆乳ばうむ

 

 その彼女が編み出した方法というのは、充填豆腐をパックのままお湯の中で5分温めるという方法。充填豆腐のパックはそのまま高温調理されているので耐熱性があるのだという。なおここで「木綿豆腐や絹こし豆腐ではしないでください」との注釈付き。これらの豆腐は出来上がった豆腐をパック詰めしているので、耐熱性のあるパッケージになっていないのでパックのまま茹でるのは禁物。

 こうして温めた豆腐はプルプルの食感になっていると言う。おかみのお勧めはそのままご飯に載せて醤油をかけて食べる食べ方。なお麻婆豆腐にする際にはこれにそのままタレをかけるのだそうな。充填豆腐が過熱するとプルプルになるのは、充填豆腐は最初から低温で豆乳とにがりを混ぜてから加熱するので、全体の組織が均一になっているからだという。これに対して木綿や絹こしは温めた豆乳ににがりを投入して固めるのでなかにムラがあり、それが独特の食感になっているという。

 

独自で生き残りを図る町の豆腐屋さん

 なお番組では最後に町のお豆腐屋さんの紹介をしている。最盛期の1960年には51596軒もあった(今のコンビニの数と同じぐらいだという)あった町の豆腐屋も、スーパーに押されて2019年時点で5713軒にまで減少しているという。しかし今でもこだわり豆腐で生き残りをしている豆腐屋さんはあり、その土地独自の豆を使用するなどしてオリジナリティのある味を保っているという。またこのような豆腐は給食で使用されることが多いとのこと。


 以上、豆腐でした。私が神戸に住んでいた頃には豆腐は豆腐屋で買うのが当たり前で、私が子供の頃には美味いので有名な豆腐屋が近くにあったのですが(そこの豆腐の冷や奴は絶品だった)、そこも後継者がいなくて店を閉めてしまいました。次に豆腐を買っていた豆腐屋も高齢化と阪神大震災で閉めてしまいました。今から思い返しても、スーパーの豆腐とは違って豆の味がしていたということを覚えています。充填豆腐は食感がプルプルなんて言ってましたが、私にとってはそれが「頼りなさ」に感じられて、正直なところ昔の豆腐屋の豆腐に比べるとあまり美味しいとは思いません。

 ですので今回の内容は私には「充填豆腐を使って絶品のレシピを」という内容ではなく、「不味い豆腐をいくらか食べやすくする調理法」というようにしか見えませんでした。残念ながら。私はスーパーで買った豆腐は常に「豆腐、のようなもの」という認識ですので。

 

忙しい方のための今回の要点

・スーパーなどで売られている豆腐には充填豆腐という豆腐が存在している。
・充填豆腐はスーパーが増加した昭和47年に、それまで2日程度だった豆腐の賞味期限を延ばすために開発された。
・充填豆腐はパックに材料を流し込み、密封してから加熱して豆腐を固める製法で作られているので、缶詰と同じように内部はほぼ無菌なので日持ちがする。
・また充填豆腐は均一なために柔らかくてプルプルの食感になるという。
・お勧めの調理法はパックごと5分温める方法。充填豆腐はバックのまま高温調理されているので、耐熱性のあるパックを使用している(木綿や絹こしではしないように)。
・一方、スーパーに押されて年々減少している町の豆腐屋さんだが、こだわりの豆腐で生き残りを図る店もあるし、学校給食などにも使用されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・昔は豆腐は豆腐屋、漬け物は漬け物屋、味噌は味噌屋で買っていたものですが、今は全部スーパーです。便利はなったんでしょうが、正直なところ味は昔よりも大幅に落ちてますね。所詮大量生産は大量生産です。豆腐もさることながら、特に漬け物のまともなものがスーパーでは入手できません。私は今でもまともな白菜のぬか漬けを常に探しています。キチンと浸かった白菜のぬか漬けをお茶漬けで頂くのは至福の時だったのですが、もうそういうことも出来なくなって10年以上経ちます(行きつけの漬け物屋が阪神大震災で廃業してしまった)。

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