教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/4 BSプレミアム ダークサイドミステリー「驚きの地底世界 アンダーグラウンド伝説」

東京地下に広がるアナザーワールド

 地下と言えば、アナザーワールドが存在したり、地底人がいたり、霊が封じられていたりなど昔から創作意欲を掻き立てる世界である。しかしそういうファンタジーな世界でなく、今回はもっとリアルに東京の地下に広がるアンダーワールド世界を紹介とのこと・・・なんだが、そう言えば少し昔にもろに「東京アンダーグラウンド」ってタイトルの作品があった記憶が。

     
少し前の作品になります

 

 

地下ツアーの人気スポット

 まず最近は地下ツアーなるものが大人気だとか。で、まずはその人気地下ツアーについて紹介。最初は埼玉県春日部市のグラウンドの地下にあるのは巨大な地下トンネル。直径30メートル深さ70メートルもあり自由の女神もスッポリ入るという縦穴である。この施設は防災地下神殿こと首都圏外郭放水路につながる縦坑だという。洪水時にはここから水を地下に流し込むのである。

gaikaku.jp

 次は滅多に開催されないハードルの高いツアーだが、それは共同溝。工事が進むとここは水道管や電気配線などの配管や配線でみっちりと塞がるので一般公開は不可。と言うわけで見学ツアーがされる時期は限られるのでレア体験度が高いという。

銀座共同溝、みっちりと配管が入ってしまうと見学の余地なし

 最後は東京新宿で最近公開されることになったという地下施設。それは太平洋戦争時の大本営地下壕跡。ここで戦争末期に軍の幹部たちの会議がなされたという歴史の舞台である。最近になって補修をして一般公開が始まり、1日限定20人で公開となったという。

www.jiji.com

 

 

地下鉄の廃駅に地下新幹線駅や謎の地下通路の都市伝説

 次は地下鉄絡みの地下施設。台東区の地下鉄に乗っていると謎のホームの奥に頭を地面に突っ込んだ謎の巨大ウサギが見えるというのだが、これは京成線の旧博物館動物公園駅で、件の巨大ウサギは廃駅になってから作られたアナウサギのオブジェだという。地下鉄関係の廃駅などの地下施設は他にも多く、地下鉄銀座線の表参道駅の隣には使われていないかつての神宮前駅のホームがあり、また秋葉原には1年10ヶ月だけ使用された銀座線万世橋駅が残っているという。このような廃駅は都内に7箇所ほどあるとか。

bunshun.jp

 また新宿駅の地下3階に宇宙人が利用する新幹線ホームがあるという都市伝説があるというが、その元ネタはかつて40近く前に新宿駅再開発の時に書かれた図面で、その時には上越新幹線を乗り入れさせる計画があったのだという。

kakuyodo.cocolog-nifty.com

 さらに浅草寺の地下にVIP専用地下通路があるとの伝説があるが、これについてはゴルバチョフが使ったなんて言われているが、実際にゴルバチョフが来日時には彼は仲見世の人混みの中をもみくちゃになりながら歩いており、地下道なんて影も形も出てこないという。またもう一本の地下道の伝説はかつて計画はあったらしいが地元の反対で頓挫したものだという。

 

 

高度な利用が進む地下空間

 実際の地下は地下鉄以外にも配管などが埋まっており極めて雑多な世界になっている。また地下鉄の場合は権利関係で道路の下を通すためにかなり曲がりくねっているという。一番最近に開通した大江戸線ではそのような湾曲が多いことから、カープに強いように小回りの利く車両設計になっている。

 また正真正銘の秘密にされている秘密基地が地下変電所。サイズはデパート並とのこと。これらはテロ防止などの観点から所在は秘密とされているが、200箇所ほど都心部に存在している。

 さらには自然の脅威と戦う地下施設。上野駅の地下ホームなどは地下水位の上昇で丸ごと浮上してしまうので、ワイヤーを地盤に打ち込んでの固定などをして1日4000トンの排水をしながら浮上と戦っているとか。

 最後は地下の最新利用。千葉で使われなくなった共同溝ではLEDライトを使用してレタスの水耕栽培が行われており、栃木県の大谷石採掘場跡にある地底湖の安定した水温を使用して夏に収穫できるイチゴの栽培を行っている。また丸の内の地下には地域冷暖房配管ネットワークが築かれて、空調の共同管理が行われるようになっている。これは地下空間の有効活用だとか。

www.oya909.co.jp

 

 

 以上、ファンタジーとは無縁のリアルな地下空間のお話。この番組は時折こういう真面目なネタが出てくるのが面白いところ。

 なお東京で地下空間が発達しているのは、この都市の異常な過密に原因があり、本来なら地上に置けば良いようなものまで地下にしか置き場所がないという異常さに起因していたりする。私は以前からこの限界に達した都市を解体することを主張しているので、もしその構想が実現したら、これらの地下施設のかなりの部分もいずれは廃墟と化すかもしれない。なお私が「都市のあるべき姿」として提案している大都市の姿は、都市交通網は地下鉄でなくて路面電車で賄える規模レベルの都市である。この規模の都市を各地域の中核都市として、その周辺の農業地域と組み合わせて地域ブロックにし、それらの中核都市を高速鉄道で結ぶというのが、私が提案している中郭都市構想の骨子でもある。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・東京の地下には実はあまり知られていない巨大空間が多数ある。
・最近地下ツアーで人気は、防災地下神殿こと首都圏外郭放水路につながる巨大縦穴、工事中にごく稀に見学可能となる共同溝、新宿で最近公開され始めた太平洋戦争時の大本営地下壕跡などがある。
・また地下鉄の廃駅なども都内で7箇所ほどが存在するという。
・ちなみに新宿駅地下3階に宇宙人用の新幹線ホームがあるというのは、かつての駅前再開発図から発祥した当然ただの都市伝説。また浅草寺地下のVIP用地下通路伝説もデマとのこと。
・なお所在が秘密となっているのは巨大地下変電所で、都内に200箇所はあるという。
・また上野駅地下ホームなどは地下水位上昇に伴う浮上圧に抵抗するために、多くのアンカーを打ち込んだ上で1日4000トンの排水を行っている。
・最近は地下を使用してレタスの水耕栽培とか、地底湖の水温の安定した水を使用して夏に収穫できるイチゴのハウス栽培などの利用、さらに丸の内では地下に配管を巡らせて空調の共同管理が始まっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・本来は「地下までフル活用しないと行けないような都市は異常」というのが私の考えです。これだけ地下が大変なことになっているのは、既に東京がその過密さで沈没寸前なことを示しています。