教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

9/22 NHK-E サイエンスZERO「人新世 地層が語る"人間の時代"」

人による新しい地層年代

 人新世とは聞き慣れない言葉だが、最近になって唱えられるようになった言葉であると言う。そもそも更新世などの地質区分の言葉であるのだが、近年は人間の経済活動が地層の堆積物などにも影響を与えており、そのような痕跡が世界中に広がっていることから、それらの時代を人新世と呼ぶべきなのではということらしい。

 地層の呼び名が変わる時には特徴的な変化が起こっており、例えば白亜紀の終了時には隕石由来とされるイリジウムが発見されている。この後、恐竜の化石が見つからなくなるなどの地球規模の大きな変化が起こっている。このような特徴的な変化が存在するかということが問題となっている。

 世界的に12ヶ所で大規模な地層調査を行ったところ、例えばバルト海の海底には1950年代頃から明らかな変化があった。窒素などの栄養分が急激に増加しており、これは化学肥料による富栄養化の影響であるという。またメキシコ湾の珊瑚からはバリウムの量が20世紀後半に増加しており、それは海底油田の切削の影響であるという。また別府湾では1950年頃から化石燃料の燃えかすである球状炭化物が見つかっており、これはカナダの湖の底や南極などの世界中において発見されている。この時代はちょうど第二次大戦後に石炭や石油の消費が大量に増加した時代だという。

 

 

人新世の決定的な基準?

 さらにはマイクロプラスチックや鉛などの重金属など明らかに人間の経済活動の由来である物質が1950年代以降の地層から見つかるようになっている。なお中国の奥地の湖の底からは放射性物質であるプルトニウムが見つかった。この湖には大気中からの物質しか入り込まないことから、核実験で世界中に散った物であると考えられるという。これは1952年以降に急激に増加していることから、白亜紀のイリジウムに匹敵するまさに時代を特定出来る基準として考えられるという。なお「1952年から人新世という地質時代にする」という提案が国際機関に出されたが、これは否決されたという。それについては人の環境への影響はもっと前からあるということなどが言われたとのこと(どうもそれだけでなく、大国とかの思惑もありそうに思えるが)。

 なおこの時代から二酸化炭素の急増も起こっており、このままでは2030年から52年の間に後戻り不能の事態が発生するとの報告もあり、環境問題はかなり逼迫している。


 というわけで、人類による地球環境破壊がかなり決定的なレベルに達しているのではと言う話。確かにここのところの気象異常はある意味で臨界突破寸前のような気がする。こんな時にこそ人類が一丸になって立ち向かう必要があるのだが、こんな時にも戦争している馬鹿な独裁者はいるし、リーダーシップを取るべきアメリカの大統領には、トランプのような自分の目先の利益しか考えない現実逃避のアホが候補に挙がるような状況(言うまでもなく日本のリーダーも惨憺たるものだが)。このまま行けばイリジウムの層の後で絶滅した恐竜のように、人類もプルトニウムの層の後で絶滅する可能性がありそうに思えてならない。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・近年は人の経済活動の拡大により、その影響が地層にまで現れるようになってきた。そのことから更新世などのように人新世と名付けた地層区分を新設するべきとの意見が出て来ている。
・世界12ヶ所で同時に調査を行ったところ、1950年頃から球状炭化物やマイクロプラスチックなどの明確に人間の経済活動による影響が急増している。
・また世界中で明確に増加しているのがプルトニウムなどの放射性物質。これは核実験によって全地球上に広がったと考えられる。これを人新世を特定する基準にするべきとの提案もなされたが、とりあえずは否決された。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ人間の英知だけでなく、愚かさの象徴でもあります。かつては産めよ増やせよ地に満ちよだった人類も、ついには地球の大きさの限界に行き当たっています。そろそろ頭を切り換えないと本当に滅亡への道が待っている。

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