堀に囲まれた古代都市遺跡
タイのバンコクから200キロのシーテープは堀に囲まれた古代都市である。円形の都市を囲む堀は外敵を防ぐのに7世紀頃に作られたという。雨期の雨を溜めたもので、生活用水としても使用された。
現在は観光地となっていて内部の遺跡を見学出来る。20世紀初頭には森に埋もれていたが、46年前に発掘調査が始まり、傷んでいた遺跡の修復もなされた。日干しレンガを積み上げた高さ13メートルの寺院遺跡も甦った。また120メートル四方の貯水池も発見された。これも生活用水である。堀の外側には長方形の都市も10世紀頃に拡張された。こちらには遺跡は見つかっておらず、地元の人々の放牧地となっている。
この遺跡は6世紀頃にチャオプラヤ川流域にいくつも都市を作り上げたモン族が築いたものである。その連合体がドヴァーラヴァティ-王国であった。彼らが崇めた聖なる山・カオ・タモーラット山(584メートル)の山頂付近には洞窟がある。洞窟内には自然の岩に仏陀の浮き彫りがなされている。モン族は仏教や自然の山を信仰していたという。
仏教遺跡にヒンドゥーが融合
古代都市からも仏教遺跡は見つかっており、仏教寺院のカオ・クランナイでは漆喰で作られた小さな像が見つかった。神聖な遺跡を肩で支えているのだという。この原点はインドにあり、インドの寺院もヤクシャという鬼神が支えている。これが仏教に取り入れられて守り神になったのだという。ヤクシャの中には動物の顔をしたものもあり、様々な守り神が宇宙を支えているのだという。
古代都市の北のカオ・クランノークも仏教遺跡。縦横64メートルの正方形の遺跡で、現在でも敬虔な仏教徒が遺跡で儀式が行われるという。ここは9世紀頃に作られた仏塔だという。インドネシアのボロブドゥール寺院のような姿をしていたのではと推測されている。
仏教を信仰したモン族の遺跡であるが、ここからはヒンドゥー教の神像も見つかっている。シーテープができる前にカンボジアにヒンドゥー教を信仰するクメール人の国が存在したことから、そこからヒンドゥー教が伝わったのだという。このクメール人は後にアンコールワットを建設する。シーテープもそのアンコールの影響を受けるようになり、やがて衰退していったという。
忙しい方のための今回の要点
・タイのシーテープは堀に囲まれた古代都市である。
・この都市は6世紀頃にモン族が築いたものであり、仏教を信仰した彼らは多くの仏教遺跡を残している。
・しかし隣のカンボジアではヒンドゥーを信仰するクメール人の国家があり、シーテープにもヒンドゥーが伝わっている。そしてクメール人のアンコールワットの影響が強くなるにつれて、シーテープにもヒンドゥーの遺跡が増えている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・仏教とヒンドゥーって根っこは共通のものがある兄弟宗教みたいなものですからね。対立したり馴れ合ったりなど歴史的にはいろいろあったようですが。
・まあ仏教の神々の中には普通にヒンドゥーの神様が入ってますからね。また仏教も地域によって様々で、ネパール仏教なんてかなりヒンドゥーの色が濃い。
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