岩山を削り出して作った巨大建築
今回紹介するのはインドの岩山に忽然とそびえるエローラ石窟群。この建物、1000年以上前に岩山を手作業で掘って作った彫刻作品だという。さらにヒンドゥー、仏教、ジャイナ教の3つの宗教の施設が共存しているのだとか。
エローラは南北2キロの岩山に34もの石窟が連なる。各宗教ごとにエリアが分かれている。ヒンドゥーのエリアには6世紀後半~9世紀に17もの石窟が作られた。最大の目玉は巨大な一枚岩を掘り抜いた巨大なヒンドゥー寺院。高さは30メートル余り奥行きは80メートルもある。壁にはヒンドゥーの神々が掘られている。かつては鮮やかな色彩に塗られていたという。聖なる動物である象の巨大な像も多数彫られている。岩をくり抜いて作られた祭壇には破壊と再生を司る最高神シヴァの像が彫られている。この寺院はシヴァが住むとされるカイラ山をかたどっており、カイラーサナータ寺院とも呼ばれる。寺院の一番奥にはシヴァ神のシンボルであるリンガが祀られており、ここには多くの参拝者が訪れる。
150年に渡って削り出した執念
この巨大な寺院は150年もかけてのみで削られて作られた。硬い玄武岩の一枚岩を人の手で削り出したのだという。この地では今も石の彫刻が多数作られている。のみで溝を掘って巨大な塊を削りだしていったのだという。石工は7代に渡ってこの作業に従事した。当時の技術ではこのような巨大な建造物を作るには石を積み上げるよりも、こうやって削り出す方が現実的だったのだという。
仏教エリアは7~8世紀に修行僧のための僧院として作られた。それ故に参拝施設であるヒンドゥーエリアよりも質素な造りとなっている。狭い通路で各石窟がつなげられた構造となっている。インドには石窟寺院は他にもあり、それらはシルクロードを渡って日本にまで影響を与えている。
さらに仏教と同じ頃に成立したジャイナ教のエリアも作られた。5つの石窟がエリアをなしている。インドの中では少数派だが、それでも4万人の信者がおり、卵や根菜を食べないという独得の厳しい戒律を守って生活している。9~10世紀頃に作られ、それがヒンドゥーや仏教と共存しているという希有な例であり、この宗教の共存が世界遺産認定の理由の1つだという。
忙しい方のための今回の要点
・インドのエローラ石窟群は1000年以上前に岩山を手でノミで彫って作られた巨大建築。
・34の石窟が存在し、ヒンドゥーのエリア、仏教のエリア、ジャイナ教のエリアが共存している。
・ヒンドゥーのエリアは巨大な寺院であり、最高神シヴァなどが祀られて今でも聖地である。
・仏教エリアは修行僧のための僧院であるから比較的質素な造りである。
・さらにジャイナ教のエリアも同時に作られており、3つの宗教が共存している珍しさから世界遺産認定をされた。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・まあ多神教は良い意味で他人の信仰する神に無頓着だからこういう共存が出来ることもある。これが一神教になると「あいつらは誤った神を信仰している」とか言いだして、その信仰を改宗させようとしたりするからおかしなことになる。
・これが一神教が戦争の原因にしかならず、私がクソだと言っている最大の理由。
・なお新興宗教はもれなく設立目的が教祖の美味しい生活を信者に支えさせるためなので、形式上神や仏を戴いていても実際は教祖に対する一神教です。ですから新興宗教はもれなくクソです。
前回の世界遺産