フジツボ愛の人々
今日の主人公はフジツボ。と言っても一般的にはあまりメジャーな生物ではないし、漁師などには船にこびりつく厄介者扱いされている。しかしこのフジツボに注目する人達がいる。
最初に登場するのはフジツボの美しさに惹かれているという海洋生物研究家の冨士うらら氏。彼女はフジツボを使ったアクセサリなども作っているらしいが、確かにフジツボも様々な姿をしたものがいるとのことである。番組は彼女のフジツボ採取に同行しているが、そのあまりのフジツボ愛っぷりには少々ドン引きしているのが見える(笑)。なお私はどうも彼女の喋り方が苦手です。
フジツボを高級食材に
またミネフジツボを料理に使用している人もいる。高級料亭の料理長の浪内通氏。何と美味しんぼにも登場したという人物である。フジツボを料理に使い始めたきっかけが「フジツボが呼んでいたから」という筋金入りのフジツボ愛である。彼が考案したのがフジツボの酒塩煮なる料理。今ではフジツボ料理の講習会を開いており、今まで捨てられていたフジツボが高級食材に変化したという。コジルリが試食に挑戦しているが、甲殻類の味だそうな。
ちなみに実は私もフジツボを食べたことはあります。と言っても、蠣殻にひっついていて牡蠣を蒸した時に一緒に蒸し上がったものを興味本位で突っついてみただけ。その時の印象が「ちょっと生臭みがあるがカニみたいだな」というもの。と言うわけで、実は私もフジツボの食材としての可能性に注目していた一人です(笑)。
フジツボの養殖研究
フジツボは船底などに付着して、速度を落としたり燃料消費を増やすため汚染生物と呼ばれている。フジツボを防ぐ塗料の開発をやっていた 八戸学院大学特任教授の鶴見浩一郎氏は駆除する側からフジツボ愛に転じたという強者。彼がフジツボ愛に転じたきっかけは、実際にフジツボを食べたからとのこと。思いの外美味かった事から、フジツボの養殖の研究を開始したという。
フジツボも幼生期には自由に動き回っており、気に入った場所に到着するとそこに付着して一生を送ることになるのだという。そこで鶴見氏はフジツボを狙った場所に付けるために、フジツボから採取した成分をプラスチック板に付着させる方法を考えたという。フジツボが集まる習性を利用しているという。さらにプラスチック板を用いる事で、剥がしにくいフジツボも容易に剥がせるとこと。
岩手生物工学研究センターの山田秀俊氏はフジツボの栄養面の研究を行っている。彼の研究によるとフジツボの脂にはDHAやEPAが含まれていることが判明したとの事。やはり甲殻類系の優れた栄養素を持っているようだ。
フジツボから新たな水中接着剤開発
フジツボから接着剤の研究を行っているのが製品評価技術基盤機構の紙野圭氏。フジツボは水の中でも強力な接着力を持つが、その粘着力はフジツボ1個辺り100キロ以上とのこと。紙野氏の研究の結果、フジツボの粘着剤は5種類のタンパク質が混ざったものであることが判明した。まず2種類のタンパク質が表面の水を弾いて引っ付き、さらに殻の側に付くタンパク質、そしてこれらを結びつける2種のタンパク質になっているという。このうち3種のタンパク質の合成には成功しているので後は2種とのことだが、これまでの結果からでも新たな接着剤を生み出せる可能性がある。水中で使えると言うことで、紙野氏は歯科用接着剤などをイメージしているようだ。
なおこの接着剤について、自然由来と言うことで環境を破壊しないのでサンゴの人工着床の接着剤に使えるのではとコジルリがなかなかに鋭い指摘を。彼女、たまに鋭いことを言うことがあるんだな。
フジツボは汚染生物などといってましたが、確かに船からするとたちが悪いですよね。フジツボが大量に付着すると抵抗の増加と重さの増加で覿面に燃費が悪化するそうです。だから定期的にフジツボを落とすための手間とコストが馬鹿にならないとのこと。そのフジツボを逆に利用しようというのだから、いろいろなことを考える人がいるものだ。まあまずは食材利用でしょうかね。食材の多様化という意味でも意義がありそう。
忙しい方のための今回の要点
・フジツボをアクセサリにしたり、フジツボ料理をしたりするフジツボ愛の人々を紹介。
・フジツボは甲殻類のため、意外に美味いとのことで今では高級食材としての利用も進んでいるとか。
・さらにそのフジツボを容易に採取できるように養殖の研究を行っている人もいる。
・さらにはフジツボが岩に貼り付くメカニズムを調べて、そこから新たな水中接着剤の研究も行われている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・冨士うらら氏が海岸にフジツボ観察に行ってましたが、正直私にはフジツボは「気持ち悪い」としか見えませんね。コジルリの反応もこれについては微妙でした(笑)。ただ食材としての可能性は私も感じますね。増えすぎるやっかいなものは、とりあえず食べてしまうのが一番(笑)。
次回のサイエンスZERO
前回のサイエンスZERO