教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/6 サイエンスZERO「潜入"KAGRA"望遠鏡 天文学革命はじまる」

神岡に登場する新型重力波望遠鏡KAGRA

 スーパーカミオカンデがあることで知られる神岡。ここの長さ7キロに渡る長大なトンネル内に設置された巨大装置、それが間もなく稼働を始める重力波望遠鏡KAGRAである。

 重力波とはアインシュタインの相対性理論から存在が予測されていたが、なかなか検出が難しく、つい最近までその存在の確認が出来ていなかった。2016年にアメリカで稼働していたLIGOが初めて重力波を観測した時には世界中が大騒ぎとなった

 重力波とは巨大な質量が動いた時に空間に起こる歪みの波である。これは光速で減衰せずに周囲に伝わっていくとされている。これを発生するのはブラックホールの合体や超新星爆発、さらに中性子星の合体などの超巨大質量に纏わる現象だけである。2016年に発生したのは中性子星の合体であった。

 

重力波望遠鏡の原理とKAGRAに投入された最新技術

 重力波望遠鏡とは2本の長大な真空のパイプを90度で伸ばし、その中に超強力なレーザー光線を通す。するとこのレーザーはパイプの末端で反射して戻ってくるのだが、全く何もない時だと戻ってきた光がお互いに打ち消し合うので何も見えない。しかし重力波がやって来ると空間が歪むことでパイプの長さが微妙に変化するので反射光が完全には消し合わずにズレることになる。これを検出するのである。

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重力波望遠鏡の原理(出典KAGRAホームページ)

 といってもその変化は水素原子の直径の1億分の1以下というとんでもないレベルの微小変化である。これを検出するにはレーザーを反射する鏡の精度が重要となる。鏡が振動や熱の影響を受けて歪むと検出が不可能になる。そこでKAGRAでは鏡に巨大な人工サファイアを使用している。サファイアは熱伝導率が高く超低温に保つことが出来ることから、その鏡を-253度という超低温に冷却することで、熱による表面の歪みを排除することで観測精度を上げることが可能となっている。これはKAGRAで初めて採用される技術だという。この鏡を長さ14メートルの防振装置から吊すことで、振動の影響も極限まで排除している。KAGRAの制御は本体から離れた管制室から遠隔でコントロールされることになる。これは近くで人などが活動するとその影響が現れるからである。

 

KAGRAが拓くマルチメッセンジャー天文学の時代

 重力波は今までの電磁波中心の天文学を大きく変える存在であり、マルチメッセンジャー天文学なる考えが提唱されている。中性子星の合体の時などは、重力波は電磁波に先駆けて現れるため、まず重力波観測の結果から大体の方向を見定め、直ちに可視光望遠鏡によってその発生源の光を確認、さらに電波望遠鏡等で新たな観測データを得るなどといった国を超えての連携がなされた。マルチメッセンジャー天文学が新時代を迎えたのである。KAGRAが稼働すると、既に先行している欧米の3台の重力波望遠鏡と連携することで、地球レベルの巨大な観測が出来るようになる。重力波の発生方向の探査などがより迅速かつ高精度で行えるようになると期待できるとのこと。

 また従来の望遠鏡の方にも新たな計画が登場している。ハワイに国際計画で建設が進んでいる超巨大望遠鏡TMTは鏡の大きさが30メートルにもなるという。またNASAでは新たな宇宙望遠鏡の計画が進んでおり、2021年には宇宙に打ち上げる予定となっている。これらの望遠鏡もマルチメッセンジャー天文学に参加することになる。


 国際協力による天文学の新時代である。確かに天文学の世界の技術の進歩はかなり早く、私が学生の頃に教科書で学んだ知識なんかは、既に大部分が書き換えられてしまっている。今度もドンドンと新技術の投入と共に、国際協力の進展に期待したいところである。人類とはトランプのようにあえて国の間に垣根を作って対立を煽ろうとする愚かな者もいるが、一方でこのように国の垣根を越えて協力する英知ある者もいる。人類の未来のためにも是非とも英知が愚かさを超越して欲しい。でないと人類の未来自体がなくなる。

 

忙しい方のための今回の要点

・神岡に建設された新たな重力波望遠鏡KAGRAが間もなく稼働しようとしている。
・重力波望遠鏡とは、垂直な2本の管の中を通るレーザー光が重力波による空間の歪みでズレることを観測することで重力波を探知する。
・重力波は電磁波よりも先駆けて観測されるため、重力波の検出から各波長の電磁波での観測につなげるマルチメッセンジャー天文学が進められている。
・従来の望遠鏡でも超巨大望遠鏡であるTMTの建設が国際協力で進められたり、NASAが新たな宇宙望遠鏡を打ち上げるなど、さらなる発展が期待されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・人類が本気で国際協力すればかなり凄いことが出来ます。国同士の争いなどと言う愚かなことは次元の低い愚かな政治家共の世界です。やはり人類の英知を司るべき研究者はより高い次元で人類を協力させる方向に動く必要がありますね。そしていずれは愚か者共を駆逐していく必要がある。

 

前回のサイエンスZERO

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