教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/27 TBS系 健康カプセル!元気の時間「太る原因に新発見!~誰もが陥る「デブ味覚」とは」

 今回のテーマは肥満。なかなかキャッチーな内容です。この手の番組はこういうネタの時にその真価が問われます。と言うのも、肥満・ダイエット関係は一番内容が胡散臭くなりがちだから。だから肥満ネタはこの手の番組の試金石と言えます。

太りやすくなる「デブ味覚」とは

 さて冒頭で行っているのは、出汁を飲んでもらうという実験。これを飲んで味が薄い、しないと感じる人は太りやすい「デブ味覚」になっていると言うのであるが、スタジオの西尾氏、筧氏は共に「味が薄い」、日頃から濃い味が好きという木下桜に至っては「お湯?」という状態で見事にデブ味覚確定である。

 ここで言うデブ味覚とは何であるかだが、つまりはうま味に対する感覚が鈍くなっているのである。人間の味覚とは意味があり、甘味は当分、塩味はミネラルなどの栄養素を感知、これに対して苦味は毒、酸味は腐敗物をさけるためのものであり、うま味はタンパク質に対応している。つまりは味覚によって人間は体内に摂取すべきものを判別していることになる。

 このうま味が鈍くなるとどうなるか。番組では先の出汁実験の結果、うま味の感覚が鈍くなっていた3名を選んで観察を行っている。まずこの3名、男性2名は既に軽度の肥満であり、血液検査結果も要注意である。残りの女性は肥満まではいっていないが、この1年で2キロ太ったとのことでありLDL値が要注意になっている。

 

「デブ味覚」が肥満につながる

 この3人の昼食に同行して観察をしているが、うま味が鈍くなるとどうなるかといえば、どうしてもその分、甘味や塩味に頼ることになるのだという。3人が出向いたのは彼らが好きだという家系ラーメンの店。この時点で何をか言わんだが、塩分が多くなると味覚が鈍るために甘味を多く摂ることになるのだという。実際に塩分を多く摂る人ほど肥満が多いとのこと。そしてさらにこの甘味も取り過ぎることでさらに鈍くなるとのこと。どうしても食べ過ぎになってしまうのだという。しかも高カロリー食は依存性が強く、これがデブ味覚スパイラルだという。そして行き着くところは生活習慣病ということ。

 先程の被験者の夕食風景を観察しているが、男性の1人は奥さんが健康に配慮して薄味にしてくれているのに、それでは満足できずに隠れてマヨネーズを加えているという隠れマヨラー。このような調味料を足すというのは典型的なデブ味覚だという。

 女性はまず市販の弁当の濃い味付けが大好き。これはこの時点でデブ味覚。しかも食事終了後にアイスクリーム(ハーゲンダッツの抹茶のようだ)を食べている。この食後に甘いものが欲しくなるというのも症状だという。

 もう一人の男性はテレビを見ながらお菓子ストックからポテトチップスを取り出してムシャムシャ。こういうながら食いも食に集中していないので脳が満足できないと言うことでデブ味覚の特徴とのこと。

 これ以外に添付しているタレは最後まで使い切るとか、お腹が空いてなくても決まった時間になると食事を摂るなどと言うこともあると言う。

もう一つの味覚・脂肪味

 さらに昨年、人間は脂肪の味も見分けるということが明らかになったとのことで、デブ味覚の人はこれも鈍っているという。脂肪を感じないことで食べ過ぎるのだという。で、先程の3人にオレイン酸を加えた脱脂粉乳を選んでもらう実験を行ったが、3人中2人が脂肪味が測定不能(一番濃いサンプルでも分からなかった)という結果に。

 

デブ味覚改善の方法

 ではこのデブ味覚を改善する方法があるのかだが、これが冒頭で登場した出汁になる。これはかつお節30g、刻み昆布10g、煮干し10gに緑茶5gを加えてフードプロセッサで粉砕したもの。これを大さじ1杯に150~200ccのお湯を注ぐというもの。これを一番味覚が敏感になっている朝に毎日飲むのだそうな。

 10日後にテストしたところ、先程の測定不能が3回のテストの内1回は当てているので改善の傾向ありとのことだが、このテスト結果については確率論の内ということも言えなくもない。それよりも本人たちが味覚が敏感になってきたと申告している方がポイントだろう。女性はかき氷が甘くすぎて食べきれなかったと言っているし、例の隠れマヨラーの男性は3~4日目ぐらいから調味料を足さなくなったと言っている。また全員、食事中の塩分や糖分減少が見られ、血液検査の結果も良くなっている。

 実験結果がやや劇的に過ぎる気がするので(それと根本的に被験者が少なすぎるのは確かです)、結局は本人たちが自発的に食事を改善した可能性というのを否定できませんが(俗に言う「計るだけダイエット」効果)、ポイントとしてはそれでも血液検査の結果に改善が見られること。また対策が出汁を飲むだけなので明らかに悪影響はないところは大きいでしょう。これが「QPコーワを飲みましょう」なんかの対策だったら、私は直ちにこの番組を見切っていたところですが(笑)、そういうサプリや薬に頼らないのが一番。

 さらに決定的だったのは、この後の筧氏が専門家に質問するコーナーで、「糖質を取り過ぎたらすぐに太ってしまうのだけど」との質問に対し、「低糖質ダイエットなどは体重減少の効果がすぐに出やすいが、体が飢餓状態になるのでリバウンドしやすい」と明言していたこと。さらに「民間療法に頼るな!」と断言していたのは痛快でした。これをハッキリと放送するのは番組の良心と見て良いでしょう(それと担当医師がインチキな情報が氾濫している状況に憤りを感じているのも透けて見えた)。

 と言うわけで今回の試金石内容。見事に合格です。ただこういう良心的な番組ってやっぱり世間には受けにくいんですよね。そもそもこんな早朝に放送枠があるということ自体がすべてを示している。世間には「バナナを食べ続けるだけでダイエットできる」とか言うようなインチキな内容の方が受けてしまう。どうしても人間は現実を直視するよりは、安直なインチキ情報の方が耳当たりが良かったりする。これが世に詐欺師が万延する理由でもあります。ただ私はこの番組を支持します。

 

忙しい方のための今回の要点

・番組では出汁の味を感じるかの実験を行っているが、これを感じないことはデブ味覚になっている可能性がある。
・デブ味覚とはうま味に対する感覚が鈍ることで、うま味を感じないために甘味や塩味に頼ることになり、それらは取り過ぎることでさらに感覚が鈍るので、結果としては食べ過ぎにつながる危険がある。
・さらに最近の研究では人間は脂肪味も感じることが明らかとなったが、デブ味覚の人はこれも鈍っている可能性がある。
・回復訓練として、かつお節などから作った出汁を毎朝飲む方法を番組は提案している。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・ちなみにデブ味覚判定の内容。私は調味料を足すと言うことはしませんが、食後すぐに甘いものが欲しくなるというのはまさに該当です。ちなみに私は今回の被験者よりはさらに重度の肥満。多分原因は味覚よりも他にありそうです(家系ラーメンなどは塩っぱすぎると感じることが多いですから)。

 

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