教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/3 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「肩こりと思ったら心筋梗塞!〜体のSOS」

 今回は患者の訴えから隠れた病名にたどり着く総合診療医ドクターG・・・に完全になっちゃってます(笑)。そもそも今回登場した総合診療医の先生(千葉大学医学部付属病院総合診療科・生坂政臣医師)、あの番組で見た記憶があるし。

 

肩こりだと思ったら心筋梗塞だった

 まず冒頭に登場するのは50才男性のケースなのだが、これは肩こりだと思っていたら心筋梗塞だったと言う例で、これは実際に非常に多いケース。要は関連痛という奴である。内臓にはそもそも神経が少ないのでそこが直接に痛みを感じる場合はほとんどなく、その痛みは別の場所の痛みとして現れる。心臓の不調が肩こりとして現れるというのは良くあるケース。

 関節を動かしてみた時に痛みが変わるかどうかが見分けるポイントになるという。肩こりなどの整形外科的な症状だったら関節を動かすと痛みが変化するが、関連痛の場合には痛みの原因がそこにはないので痛みが変化しないという。

 

痛みのオトノマペから原因を診断

 患者から痛みの種類を聞き出すことが問診における貴重な情報となるのだが、その痛みを表現するのにオトノマペを使用している。番組ではまずは2人の頭痛持ちからその症状を聞き出している。

 1人は寝不足などのときにズーンとした頭痛があると言う。診断は緊張型頭痛。筋肉のこわばりなどから来る頭痛で、原因はストレスと考えられる。

 もう1人はドクドクくる頭痛で入浴したりすると軽くなる。ニオイなどがきっかけで発症し、またワインを飲んだ後に頭痛が悪化すると言っている。これは混合型頭痛だとのこと。入浴で軽くなるのは緊張型頭痛の特徴であり、ワインで発症しやすい(チラミンという物質が血管に作用するらしい)のは偏頭痛である。ニオイや音などの神経刺激がきっかけになるのは典型的だという。

 また腰痛の場合も、ズキズキとする痛みが移動するという症例が出た場合があり、これは尿管結石が原因だったとのこと。結石の移動に伴って痛みの箇所が移動したのだとのこと。

 なお番組司会の西尾由佳理氏は目がチカチカすると頭痛が起こるとと言っていたが、これは私でも病名が予測できたが目がチカチカするというのは閃輝暗点という典型的な偏頭痛の症状である。

 ゲストの藤井サチは食べ過ぎると頭痛が起こると言っていたが、これは低血糖性頭痛とのこと。日頃小食の人が突然に食べ過ぎると、インスリンが過剰分泌になって食後に低血糖症状を起こすのだとのこと。この病名は私も初めて聞いた。

 

問診で謎の腹痛の原因を解明する総合診療科

 番組ではこの後、総合診療医が10年来謎の腹痛で苦しんでいる患者の病名を診断する課程を追っている。医師はまずは問診で患者の痛みの原因を絞り込んでいく。精神的な原因まで考えて問診を行っているのが印象的。そしてある程度の推測が付くと、さらに別の医師と議論、さらに問診を行ってという風に複数の医師で議論しては問診という形を繰り返している。

 そうして2時間後、判明した診断名は腹壁神経痛。腹部の神経が何らかの圧迫を受けることによって痛みを発症する症状だという。命に関わるような病気ではないと言うことで、10年来の謎の腹痛に苦しめられていた患者も原因が判明したことでホッとしてめでたしめでたしと言う結果である。

 何らかの不調を抱えている患者は、その原因が分からないと言うだけで多大なストレスと不安にさらされるわけなので、それが判明するだけでも大分気が楽になるだろうと思われる。ましてや診断が付いたことで治療が出来ればめでたしめでたしであるということになる。とかく「それは専門外だから」といって逃げる医師が今でも少なくないが、そういうのに対するアンチテーゼでもある。謎の病状が出た時に専門家が議論して原因を究明するなんてのは今まではVIPしかあり得なかったのだが、謂わばそれに近いものが一般人に対しても成されるようになってきたとも言える。

 もっともこれは医師にも負担が大きいものだけに、誰でも彼でもというわけにはいかないのが難点だが。ちなみに番組でも注意が付いてましたが、いきなり生坂先生のところに駆け込んでも、医師の紹介状がないと駄目ですので。なおここの診療は自由診療と書いてあったということは、保険が効かなくてそれ相応のコストもかかるということ。やっぱり誰でも彼でもというわけにはいかないようだ。

 

忙しい方のための今回の要点

・内臓の疾患の場合、例えば心筋梗塞の痛みが肩こりとして現れるなどの関連痛の形で出ることがあるので注意。見分けるポイントは関節などを動かしてみて痛みが変化するかどうか。
・痛みの原因を判別する総合診療科などでは痛みの状況をオトノマペで表現して、そこから原因を推測するなどということも行っている。例えばズーンという肩の痛みは緊張性頭痛、ドクドクなら偏頭痛などというように推測が付く。
・総合診療科ではこのように問診から謎の痛みの原因を判断するということを行っており、これによって10年来の原因不明の腹痛の原因が判明した事例も。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・総合診療科って例のドクターGなんかもあって、最近非常に脚光を浴びてますね。これってやっぱり「それは私の専門でないから」ってすぐに逃げを図る医師に対する不満の裏返しでもあると思います。ただこの診療科はいろいろな知識がないとなれないので、医師の方も大変だろうとは思います。
・今まで医師の縄張り意識とかつまらないものがいろいろありましたからね。だけど病気には縄張りなんてない。まあこういうのが登場するのは良い傾向でしょう。

 

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