教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/3 テレ東系 ガイアの夜明け「家の整理が金を生む」

家財道具を丸ごと査定して買い取る会社

 最近、家の中のものを丸ごと査定して買い取るというビジネスが流行し始めているという。トレジャーファクトリーでは、家の中の品を査定して価値のあるものは買い取ると共に、さらには家の中の不要物は処分して家のクリーニングまで行うのだという。これらの作業には手数料がかかるが、それ以上に買い取り額があれば手元にいくらか戻ってくるというシステムである。

 昨今は親世帯が亡くなったり、ホームに入居したりなどで家族が実家の整理のために依頼する例が多いという。また中にはホームに入居する本人が依頼する場合もある。家の鍵を預かって家の中に入り、家財道具をチェックしては査定する作業であるので依頼主との信頼関係が命である。最近この業界に異業種からの参入も増えていると言うが、それと共に消費者センターに持ち込まれるトラブル事例も増えているという(私もいわゆる押し買いという例を聞いた事がある)

 また最近は家自体も合わせて処分したいという相談も増えている。そこでトレジャーファクトリーでは不動産業の経験のある社員を雇い、中古住宅の売買まで含めてトータルで生前整理をするという方向でビジネスの展開を図っている

 

死蔵されている昭和ヴィンテージの洋服を販売

 一方、家で死蔵されている昭和の洋服を古着として再利用するビジネスを手がけているのが大西澄江氏。昭和の洋服というのは今の大量生産のお気楽ファッションと違い、基本的に一着一着オーダーが多いので生地の選択から縫製の技術までかなりしっかりしたものが多いのだという。また大西氏は依頼者から洋服を譲ってもらう時に、その洋服の背後にあるエピソードなども聴取する。デートのために気合いを入れて仕立てたとか、各人がそれぞれの思いを持っている服が多い。大西氏はそういう思いまでまとめて洋服を引き取っているのである。

 このような昭和レトロの洋服は、クリーニングして場合によっては修繕した上で昭和ヴィンテージの古着として販売する。大西氏の「スミックス」ではネット販売やイベント出店などで販売を行っている。昭和の洋服なんかが売れるのかと思うところだが、現在は「他にはない」などの価値で若い女性などに人気なんだという。

 ただし問題は価格。彼女は価値のあるものに価値を感じてもらいたいという意味(それ以外にもかなり手間がかかるので収益を多めに乗せたいと言う本音もあるだろう)で、10万円などのかなり高めの価格をつけている。そのために蔦谷で出店した時は、興味を持って見に来る客はいるのだが、いずれも価格を見て尻込みし、ほとんど売れないという結果になってしまった。価格設定に問題があるのかと悩む大西氏。

 しかし次に東急ハンズにイベント出店で交渉した時、東急ハンズのバイヤーからは「その価格設定で問題ない」というアドバイスをもらう。東急ハンズでのイベント出店ではその洋服が持つ歴史を併せて紹介するなどでなかなかの反響があり(ファミリーヒストリーなどが受ける時代の背景もあろう)、5着の売り上げがあったという(蔦谷とハンズの客層の違いが大きいと思われる)。

 

 家に眠っているものが思わぬ金になるという話だが、前半はそれよりは実家の整理をどうするかという話だったように思われる。これが今は難問となっており、実際に親が死んだ後に手がつけられなくなり、半ゴミ屋敷のまま廃屋同然で放置されるような家が各地で問題となっている。家の売買にまで手を出したトレジャーファクトリーだが、現在の不動産過剰の状態の中で、中古家屋の販売が軌道に乗るかは危ういところがあると思う。

 大西氏のビジネスは古着ではなく昭和ヴィンテージ。かなりしっかりしたものを作っていた時代の洋服だから、古着になっても価値があるということ。確かに私が子供の頃ぐらいまでは少し気合いの入ったファッション着は仕立てか自分で縫うというのが当たり前でした。あの時代は普通の家庭に普通にミシンがあり、裁縫は主婦の基本技術でしたから。子供服なんて母親が縫うなんてのが当たり前の時代でした。またあの時代の既製服って、見るからに安っぽい物ばかりだったので。それだけに洋服の一着一着に愛着を持っていた時代です。今みたいなわざとらしい流行に煽られて洋服を使い捨てしていた時代と違うので。もっともこのタイプのビジネスは仕入れる洋服が続くところまでがビジネスの限界なので、拡張性はなくていずれ終息していくビジネスでもあります。まあ大西氏は会社を拡大して大ビジネスにという意識はあまりないような印象を受けましたので、向いてはいるかも知れません。

 

忙しい方のための今回の要点

・トレジャーファクトリーでは家財を丸ごと鑑定して買い取りし、合わせて家の不要品の処分から清掃まで行うというビジネスを展開しており、親が亡くなった後の実家の整理などに困った家族などからの依頼を受ける事が増えている。
・昨今はホームに入居する人から家丸ごと処分することを依頼されるようになり、それに合わせて中古不動産の売買などにも事業を拡張しているという。
・一方、大西澄江氏は家に眠っている昭和の洋服を昭和ヴィンテージとして販売するビジネスを行っている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・これらの事業も3年後どうなっているかとかが気になるところです。どちらの事業もそれなりに意味を持っていますが、それぞれに問題を抱えていますから。特にトレジャーファクトリーのビジネスについてはその後の追跡も欲しいですね。東京オリンピック(実際に出来るかどうかがかなり怪しくなってきましたが)後に確実に訪れる不動産不況下で果たしてこのビジネスが成り立つかなんてことが気になります。正直なところ、この話は私にも全く無関係なわけではないので。

 

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