教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/10 テレ東系 ガイアの夜明け「見えない敵と戦う~"新型コロナ"に立ち向かう企業~」

 現在日本国内ではコロナ騒ぎでパニックであるが、そのコロナに立ち向かう企業を紹介。

 

新型コロナ簡易検査キットを開発しているベンチャー企業

 最初に登場するのは新型コロナの簡易検査キットの開発に挑んでいる企業。大阪大学発のベンチャー企業ビズジーンはDNA解析により、コロナ感染を簡単に検査できるようにする開発を進めている。社長の開發邦宏氏(すごい名前だ)はウイルスの遺伝子を研究してきた研究者である。これまでにデング熱の検査キットなどを手がけてきたという。患者の粘膜や血液から採った液をキットに垂らすだけ。15分で結果が出るという(しかも費用は1500円ほど)。現在の検査手法であるPCR法は高価な特殊機械が必要な上に4~6時間かかる。しかしこの検査キットだと町のクリニックでも検査が可能となる。開發氏は既に武漢でのコロナウイルスと遺伝子パターンから固有の遺伝子配列を見つけ出し、それに反応するキットの試作品を製作している。

www.visgene.com

 しかし完成間近で大きな問題が発生した。それは検体分与を受けられないということ。厚生省と国立感染研究所が管理しているコロナウイルスは、一定レベルの基準を満たす施設でないと分けてもらえず、ビズジーンのようなベンチャー企業ではコロナウイルスの検体がもらえないのでウイルスを使ったテストが出来ないでいるのである。開發氏は厚生省に持ち込んでの検証を相談するが、これは拒絶される。

f:id:ksagi:20200311230147j:plain

開發邦宏氏(出典:ビズジーンHP)

 番組では触れていないがこれには裏がある。まさに安倍政権に常につきまとう「利権」の問題である。現在国立感染研究所がコロナに対する検査や治療の開発の利権を独占しようとして、民間企業の参入を徹底的に妨害しているのは知られている話。つまりは開發氏の検査キットが非常に実用性も完成度も高いがゆえに、厚生労働省としては絶対にこれを妨害しないといけないわけである。国民の命よりも利権が最優先の今の政権を象徴している話でもある。

 

ダチョウの抗体を利用した抗ウイルスマスク

 次はダチョウを利用してコロナウイルスに挑もうという話。京都府立大学の塚本康浩教授はダチョウを使った感染症研究の第一人者である。ダチョウというのは非常に強い動物であり、ほとんど病気にならないのだという。例えばインフルエンザのウイルスを投与すると2週間ぐらいで抗体を生成し、その抗体は卵を守るためにそこに含まれるのだという。塚本氏は6年をかけてダチョウの卵から抗体を取り出す技術を開発した。これによってインフルエンザウイルスの抗体を大量に低コストで作れるようになったのだという。その抗体を浸透させたマスクを商品化した。1つのダチョウの卵からマスク8万枚分の抗体を取り出すことが出来るという。このマスクはマスク自体がウイルスを殺す能力を持っているので、通常のマスクのようにマスクの表面に付着したウイルスに感染するというリスクを防ぐことが出来る。

www2.kpu.ac.jp

 塚本氏の研究室には各地の医療機関から新型コロナに対応したマスクの開発以来が殺到しているが、塚本氏の研究室でもコロナウイルスは扱えない(上と同じ厚生労働省による利権の独占工作である)。そこで塚本氏は新型コロナウイルスと表面の突起が76%一致していると言われているSARSのウイルスを使用して抗体の開発を行うことにした。ダチョウから抗体を取り出すことに成功した塚本氏は、コロナウイルスでテストすることが出来ないため、コロナウイルスの遺伝子情報と培養した人間の細胞から無害な疑似ウイルスを作成してテストを実施した。その結果、見事に抗体は効果を示した。塚本氏は出来上がった抗体を携えて福岡のマスクメーカーのクロシードを訪問、抗体マスクの製造を依頼した。メーカーでは土日返上で1日8万枚のマスクを製造し、医療関係者を中心に使用を始めているとのこと。

 マスクに付着したウイルスで感染の危険性があるのは一般人よりも、ウイルスの最前線で働いている医療関係者であるので、医療関係者にとって重要な技術である(一般の人にはそう重要性は高くない)。だからこそ医療関係者に行き渡るように願いたいところだ。一つだけ気になったのは、こうやって放送することで製造メーカーに一般人からの問い合わせが殺到しないかということだ。そこのところは良識ある行動を期待したい(のだが、昨今のトイレットペーパーパニックに見るように、日本人の民度もあてにならないから・・・)。それとこういうのが登場すると、必ずと言って良いぐらい偽物も出るんですよね・・・。今でもコロナウイルスに効くサプリとかインチキなものがゴロゴロ出てるようですから。科学的なエビデンスを客観的に保証するシステムというのも必要だと思われる。

 

コロナ対応を迫られる企業

 またコロナ蔓延の中で日本の企業も対応を迫られている。GMOでは80%の社員を在宅勤務にしたとのことでオフィスは閑散としている。このような在宅勤務を進める企業は増えている(とは言うものの、在宅勤務不可能な業種の最たるものが工場なんだが)。

 1着2万円、3着5万円の激安スーツで業績を伸ばしてきたオーダースーツ専門店のツキムラでは、中国の工場が停止してしまったことで危機に瀕していた。スーツは人生の節目での使用が多いので顧客の希望する納期を守ることは重要なのだが、その納期を守れない可能性が高まってきたのである。

 そこで急遽国内での生地調達及び縫製工場を探すことになった。昔からつきあいのあったメーカーなどを何社か回ってまずは現在の生地に近い生地を調達。今の生地は中国で開発したものなので日本ではないのだとか。何とか似た風合いの生地を調達できたが、それはイタリア製の高級品。価格にしたら数倍になるという。しかし現在は非常事態ということで信用第一でコストは度外視だという。この生地を使用して国内で縫製することで何とか納期に間に合わせようとしている。なお今後のことも睨んでのリスクヘッジとして、インドネシアへの進出も検討中とのこと。

 というお話なのですが、その後さらに日本でも蔓延して日本の製造現場の稼働率も落ちてきているので、果たして大丈夫なんでしょうか。なお顧客の方も「息子の卒業式が云々」なんて話が出てましたが、もしかしたらその卒業式自体がこの騒動でぶっ飛んでいる可能性もあり。

 

開發氏と塚本氏のその後

 なお簡易検査キット開発の開發氏はメーカーに協力してもらって大量生産の体制を構築しようとしていた(協力するメーカーの「利益の問題より、今絶対に必要だから」という言葉が重い。「国民の命よりも自分の利益」の安倍に聞かしてやりたいところだ(聞いたとして何も感じないだろうなあいつは)。

 一方、ダチョウの抗体の塚本氏はさらに新製品としてダチョウの抗体を含む消毒スプレーを開発中とのことである。

 

 以上、コロナに対抗しようとしている民間企業の紹介。なおこの番組は経団連の宣伝番組でありますので、当然ながら現政権に対しては「忖度」が要求されます。もし政権批判に見えるような内容を流せば官邸に呼びつけられて「放送免許を停止するぞ」と脅されることにもなってます。ただそれでも制作者の良心のようなものが行間に滲む場合があります。ですから我々視聴者はそのような行間に滲む思いというものをくみ取る必要が、特にこの番組の場合にあります。今回の番組を見て「なぜ厚生省はそんなに頑なにテストに反対するの」と違和感を持てばそれが真実です。ちょっと調べると裏で国立感染研究所と政権の利権がもろにあるのが分かります。実際に少し前に国会で「民間の検査キットなども使用するべき」という質問に対して安倍はグダグダの答弁で誤魔化して、「すぐに希望者は検査できるようになる」と言っていましたが、それが大嘘だったのはすぐに判明しました。要はコロナに関する情報や利権をすべて独占したい国立感染研究所と、情報をそこに集中したら感染者数などのデータを隠蔽・捏造しやすいと考えている政権側の思惑が一致しているわけです。番組では直接出ていないところこそ最重要というのは、この番組には結構多いです。

 

忙しい方のための今回の要点

・大阪大学発のベンチャー企業ビズジーンの開發氏は、15分で新型コロナの感染を診断できる簡易検査キットの開発を行っているが、最後のテストの段階で厚労省の妨害にあって停滞している。
・京都府立大学の塚本康浩教授はダチョウの抗体を使用してウイルスを繁殖させないマスクを開発した。現在、メーカーに協力してもらって1日8万枚の体制で製造しており、医療関係者中心に使用してもらう予定。
・各企業でもコロナ対策のための在宅勤務を進めるところが多く、GMOなどではほとんどの社員が在宅勤務となっている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回はかなり「行間読み」が要求された内容だと思います。この番組のように様々な制約の多い番組には特にそういうのが出ます。後、番組中に出てきたデータや実験結果なんかを客観的に見る目というのも大事です。こういうのをひっくるめて「メディアリテラシー」という話になります。

 

次回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work