教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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6/18 BSプレミアム 偉人たちの健康診断「独眼竜・政宗 水もしたたる伊達男」

 天下への野心を持ちつつも、秀吉や家康よりも20年ほど遅かったばかりにそれを逃してしまった東北の覇者・伊達政宗。彼は70才で亡くなるまでほとんど病気らしい病気はしていないという(子供の時に疱瘡で片眼の視力を失ってはいるが)。その政宗の健康法について。

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伊達政宗

 

政宗の飲水健康法

 政宗がようやく東北の覇者になった時には既に天下はほぼ秀吉のもので定まっていた。結局は秀吉に臣従するしか手はなく、秀吉の没後に関ヶ原の合戦の際にチャンスが生まれるが、これも関ヶ原がわずか1日で決着し、家康の天下が定まってしまったために政宗にはチャンスはなくなってしまった。こうなると政宗が天下を覗うには家康の死を待つしかない。そういうわけで政宗は何が何でも長生きせざるを得なくなったという。しかし家康も徳川体制を固めるために長生きに執着した健康マニア。そこで鷹狩りをしていた家康に合わせて政宗も鷹狩りに川狩り(魚取り)で運動をし、さらには自ら薬を調合していたという家康に対抗して、政宗も自ら医学を学ぶと共に常に複数の医師と相談して薬の処方を決めていたという。さらに政宗は家康もしていない健康法を見つけるべく、長寿の者を集めて秘訣を聞いたという。その結果浮上したのが「水を飲む」というもの。そこで政宗は青葉城裏手の山からの湧き水を城内に引き込んでそれをよく飲んでいたという。

 この水を飲むというのは健康に効果があるという。体内の水分が減少すると血液の循環が悪くなり、細胞の代謝が悪くなる危険があるという。また高齢になるほど体内の水分量が減少してきて、脱水症状を起こす危険が増してくるという。体内の水分が2%減少すると運動機能の低下などの症状が現れることがあるという。これは日常普通に暮らしていてもその危険があり、注意すべきは不感蒸泄だという。これまは汗など以外に皮膚表面などから知らぬ間に蒸発する水分だという。人は一般的に1日に2.5リットルの水分を失うが、この内で不感蒸泄は1リットルを占めるという。1リットルの水は先ほどの運動能力の低下が始まる2%の水分量に匹敵するので、知らない間に脱水症状になるということである。特に暑い夏よりも冬の方が要注意だという。夏は汗をかいてのどが渇くので水分を取るが、冬は乾燥した部屋などで隠れ脱水になることが多いという。実際に年間の不感蒸泄量を見ると、むしろ冬の方が多いのだという。また水分を摂取する場合には一度に吸収できる量には限界があるため、こまめに複数回に分けて飲む方が吸収量が多くなるのだという。こうして政宗は家康より長生きすることに成功するが、家康が長生きしたことで幕府の体制は盤石に固まってしまい、結局は政宗の出番はなくなってしまう。なお政宗が飲んでいた水は今でも湧いているらしいが、水質検査をしたところ、湧き水によく混入する大腸菌などが一切検出されない実に上質な水であるとのこと。

 

政宗の眼帯の秘密とストレス解消法

 政宗は5才の時に疱瘡で右目の視力を失っている。しかし政宗は片眼にもかかわらず鉄砲の名手だったという。実は片眼でも経験などで遠近感を把握できるのだという。目はあくまで映像を映しているだけで、それは脳で処理されることで初めて認識されるので、脳に様々な追加情報が加わることで遠近感を把握することが出来るのだという。人間は「脳で見る」ために様々な錯覚を起こすことにもなるのだという。

 ちなみに伊達政宗と言えば眼帯のイメージがあるが、実はあれはドラマの演出であって実際の政宗は眼帯を付けていないとのこと。これは政宗を眼帯マニアとして描いている「殿といっしょ」の立場がないな・・・。

      
政宗をガンター(眼帯マニア)として描いているコミック「殿といっしょ」

 また政宗は高ストレスの暮らしの中で、独自のストレス解消法を持っていたという。彼は「心が晴れない時は竹を割るに限る」と書き残しているという。彼はよく茶杓を作っており、実際に彼が作った茶杓がいくつかのこっているらしい。茶杓を作るには竹を削るなどの細かい作業が必要になるのだが、それがリラックスにつながるとのこと。

 で、実際に実験しているのだが、今までそういう作業をしたことがない人が体験すると、脳がフル回転で働いていてリラックスどころかストレス一杯の状態になってしまっている。しかし茶杓作りの名人が行うと、脳はごく一部だけがたまに働くだけで、全体的に明らかにリラックスした状態になっているという。脳で指を動かす時などに使うのき側頭連合野であるが、作業に熟達している人の場合にはそこが働くだけで脳の後の部分は休憩状態になるのだという。それに対して作業に慣れない人の場合には、力加減の制御などで脳全体がフル回転せざるを得なくなってしまうのだという。要するに慣れている作業の場合は脳がほぼオート状態で働くのでリラックスになるということ。さらにはこういう作業には達成感もあるので、快感物質のドーパミンの分泌なども起こり、心の健康につながるという。なお番組では悪のりして、高級な茶杓を見分けるという「格付けチェック」まで行っているが、これは蛇足のお遊び(笑)。ゲストの西田ひかるは正解したが、関根勤と竹山は見事にハズレ。ここまでやったなら彼らは「映す価値無し」として画面から消すぐらいまでやっても良いのでは(笑)。ちなみに登場した茶杓は500万とのこと(小堀遠州によるものだったらしいが、政宗のもそのぐらいの値段らしい)。単なる竹を削っただけのものでこの価格とは・・・。ペキッと折れたらそれで終わり。

 

政宗の健康チェック法

 また政宗は健康チェック法として、常に脈を取る脈診を行っており、異常を感じると医師に相談していたとのこと。これは経絡に乱れがあると脈に出るので、脈で全ての健康状態が分かるという東洋医学の考え方らしいが、実はこれは現代医学の観点からも一部は理にかなっているという。脈拍は通常1分間に60~100回だが、これが増えると心臓に何らかの負担がかかっていると考えられるという。アメリカでの調査によると、心拍が増加すると死亡率が増すという結果が出ているという(以前にガッテンでも紹介していたな)。脈拍が多い場合に考えられる病気としてはまずは心不全。心臓のポンプ機能が低下することから心拍数を増やして補おうとするという。さらには肺気腫や慢性閉塞性肺疾患などの肺の病気も考えられる。血液中の酸素量が低下するので、やはり血流量を増やして補おうとするのだという。さらには貧血。これも血液中のヘモグロビンが減るのでやはり血流量で補おうといるのだという。さらに脈を打つリズムが一定であると言うことが重要。これが乱れるのは心房細動という不整脈の状態で、血液がスムーズに流れないために心臓内で血栓が生成して、これが脳の血管などに流れ込むことで脳梗塞を起こす危険があるという。脳梗塞患者のうちの3割は心臓内で生成した血栓が原因となっているという。

 なお政宗の死因は食道・胃噴門ガンであると推測されるという。これは東洋医学では発見しようのない病。しかも当時には治療法はない。結局はこれで政宗は70才で亡くなったという。

 

 以上、独眼竜政宗の天下を狙うための健康法について。実際に家康が執念の長生きで徳川幕府の体制を固めたが、家康がもう少し早死にしていたら、息子の秀忠では天下を手に入れることは難しかった可能性が高い。そうなっていたら伊達政宗にも可能性があったところである。前回は「上杉謙信がアル中の糖尿病でなかったら」という話でもあったが、今回は「家康がもっと早く亡くなっていたら」という話でもある(笑)。

 水を飲んで健康にという話が出てきたが、実際に年を取るほど体がひからびてくるらしい。確かに年寄りはのどの渇きをあまり感じなくなるので、段々と水分不足になりがちだという。皮膚の感覚も鈍ってくるので、気温などにも鈍くなるので熱中症に注意です。実際にうちの老親などは、半分認知症が入ってきているせいもあり、今日が暑いのか寒いのかさえもまともに分からないようです。昨日は暑かったからクーラーを使ったが、今日は涼しいので不要という判断が全く出来ません。そして水の飲み方も滅茶苦茶。まあ年を取ってくると代謝も落ちてくるので、以前ほどに血流が必要なくなるのかもしれませんが。

 

忙しい方のための今回の要点

・政宗は健康法として湧き水をよく飲むということをしていたという。
・実際に老化とともに体内から水分が減少するし、水分が減少すると血流が悪化して細胞の代謝に悪影響があるので水分を取ることは重要だという。
・特に汗などでない自覚しない水分減少である不感蒸泄に注意という。これは冬の方がむしろ増えるので、のどの渇きを感じなくてもこまめに水分を摂取した方が良いという。
・政宗のストレス解消法は茶杓を削ること。このような作業は熟練すれば脳の一部のみが働くことになるので、残りの部分がリラックスできることになるという。
・また政宗は定期的に脈を調べる脈診を行っていた。心不全などの心疾患、さらには肺の障害、さらに貧血などで脈拍が増加するし、脈拍が不定期だと血栓が生成して脳梗塞を起こす危険があるので、脈を調べるには意味があるという。
・政宗の死因は食道・胃噴門ガンであると推測されるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・政宗は天下を狙う気満々だったのに、それを断念して幕府の下で生き残ることに切り替えるのはなかなか精神的に大変だったろうと推測される。と言うわけでメンタルヘルスが一番重要だったんではという気がするな。それが茶杓を削ることだったとは、実に意外な話である。確かにあの手の単純作業って、心を無にできるんですよね。私もほとんど自動で作成できるような報告書作成の時とかに、無になっていることがよくあるわ(笑)。

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