教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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"コロナ時代だから考える、ウイルスとは一体何なのか?" (7/12 サイエンスZERO「"withコロナ時代"に いまこそ知りたいウイルスの正体」から)

 コロナウイルスが社会問題になっている現在だから、そもそもウイルスとは如何なるものなのであるかを、京都大学ウイルス学教授の朝長啓造氏をゲストに迎えて勉強しようという内容。

 

ウイルスと細菌の違い

 病気を起こす原因となるものとしては、ウイルス以外にも細菌が知られている。ウイルスと細菌は何が違うかといえば、まずはその大きさ。細菌に比べるとウイルスは圧倒的に小さい。人間の細胞が直径10マイクロメートルに対して、細菌は大体数マイクロメートル、これに対してウイルスは0.1マイクロメートルほどの大きさしかない。だから細菌は17世紀にレーウェンフックが光学顕微鏡によって発見したのに対し、ウイルスの姿が初めて見られたのは1939年。電子顕微鏡が発明されるまで直接にその姿を観察することは不可能だったのである。

 また細菌は小さいなりにも生物であり、自ら増殖したりする能力を持っているのに対し、ウイルスは単独では増殖する機能を持っていない。ウイルスは細胞内に自らの遺伝子を送り込むことによって、侵入した細胞の機能を使って増殖するのである。そしてやがては侵入した細胞を殺してそこから飛び出すことになる。

 

コロナウイルスとはどんなウイルスか

 さて今話題となっているコロナウイルスであるが、まずコロナウイルスの名前が付いたのは1968年。いわゆる風邪のウイルスがこのコロナウイルスになる。2003年にはSARS-CoVが流行、2012年にはMERS-CoVが流行した。そして現在流行している新型コロナはSARS-CoV-2が正式名称だという。ちなみにこれはウイルスの名前で、よく聞くCOVID-19というのは病名だという。ちょうどHIVとAIDSの関係に当たるという。コロナウイルスの特徴は表面にフリンジ(飾り)のようなものが付いているのが特徴で、これがコロナを連想させると言うことでコロナウイルスと命名された。

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表面にフリンジの付いたコロナウイルス

 この突起であるが、細胞の表面のレセプターに引っ付く時に必要になる。ここに引っ付くことでウイルスが細胞内に入り込めるのだという。エタノールなどの消毒薬を使うとこの突起を取ることが出来るので、感染を予防することになるという。

 

ウイルスの脅威とは

 ウイルスの怖さを決める要素としては増殖力、免疫の反応、感染する部位、伝播力がある。実はウイルスによる人体の被害はウイルスによって細胞が破壊されることよりも、免疫が暴走して過剰反応することによるものの方が大きい場合が多いという。だから穏健なウイルスは免疫反応をほとんど起こさず、人体と共存することもあるという。また感染部位も重要で、通常の風邪のコロナウイルスとのどや鼻に感染するのに対し、新型コロナは肺に感染して肺炎を引き起こす。これ以外にも神経細胞に感染する狂犬病ウイルス、リンパ球に感染して免疫系を破壊するHIVウイルスなど恐ろしいウイルスが存在する。伝播力に関しては、空気感染するかしないかだけで相当変わることにもなる。

 なおウイルスは長期的に見た場合には段々と毒性が弱まってくる可能性があるという。かつてオーストラリアで増えすぎた兎の駆除のために、兎にだけ感染するミクソーマウイルスを広げたところ、2年後には全体の85%の兎が死滅したのだが、その後はウイルスで死ぬ兎の割合が減少し続け、7年後には25%の兎しか死ななくなったのだという。この原因としてはウイルスに耐性の強い兎が生き残ったという兎側の原因も考えられるが、ウイルス自体の変化もあるのだという。ウイルスの中で強毒性のものは宿主を死に追いやるのでそこで絶えてしまい、比較的弱毒のもののみが生き残って拡大をしていくことになるのだという。つまりはウイルスにとっては宿主を殺してしまうようなものは失敗ウイルスということである。

 このような変化は新型コロナにもあり得るが、しかし少し考えれば分かるように、この変化は強毒性ウイルスでバタバタ死者が出た後であり、残念ながらそんな数年で起こるようなものではない。現在の対策としてはやはり隔離などによって伝播を防ぐしかないという。

 

最新のウイルス研究で分かってきたウイルスの役割

 ウイルスの研究はここ数年、ゲノム解析の進歩によって劇的な発展があったという。2015年に見つかったウイルス候補の数4225に対し、2020年にはこれが86万種類に急増しているという。あらゆる場所や限界環境などにもたくさんのウイルスが見つけられたという。これらの結果からネオウイルス学という分野が立ち上がったという。これは新たなウイルスに対抗するための研究や、ウイルスの知られていない重要な側面を調べる(ウイルスが進化に関与しているなどの例もあるという)研究であるという。

 ウイルスの興味深い側面としては、例えば赤潮の拡大に関係するウイルスがあるという。赤潮の際に発生するプランクトンに感染して、プランクトンを死滅させることで赤潮を消滅させるウイルスなど、海洋環境を守っているウイルスが存在するという。ウイルスが「密を解消させている」という考え方も出来るとのこと。実際にアブラムシが密集していたら、アブラムシに羽根をはやしてしまうウイルスが登場するという。羽根が生えたアブラムシは別の場所に飛んでいくというわけである(こんなことが人間に起こったらとんでもないな)。


 ウイルスについての紹介と新しい知見を紹介。ウイルスが密を解消させるというのは興味深い見解であった。となると、コロナウイルスも増えすぎた人類による密を解消するために登場した? しかしそうだとするとこれから大量の死者が出るのが前提なのでとても容認しがたいものである。しかし私はコロナウイルスよりも先に、実は人間の脳に感染してトランプや安倍のような馬鹿な指導者を選ばせ、そのことによって人類を減らすことを企んだウイルスが存在するのではなんて考えてしまう。

 

忙しい方のための今回の要点

・ウイルスは細菌よりもかなり小さく細菌が数マイクロメートルに対して、0.1マイクロメートルほどの大きさしかない。
・また自身では増殖する能力がなく、細胞内に入り込んでそのメカニズムを使用することで初めて増殖できる。
・ウイルスの怖さを決める要素としては増殖力、免疫の反応、感染する部位、伝播力がある。
・ウイルスは感染細胞を破壊するが、そのことよりもむしろ、免疫の暴走による人体への影響の方が大きい。
・ウイルスは長年の間で、宿主を殺してしまうような強毒性のものは生き残れず、宿主と共生できるような毒性の弱いものが生き残っていく傾向がある。
・自然界のウイルスには、赤潮のプランクトンに感染して赤潮を消滅させたり、アブラムシが密集したらアブラムシに羽を生やして拡散させるなど、密を解消する働きをしているウイルスが存在する。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ウイルスにはついては実のところはまだまだよく分からないところがあるようです。コジルリが「意志はないですよね・・・」と聞いていたが、しかし本当に意志がないとは断定できない。そもそも意志とは何なんだという哲学的な話になりますが。
・ウイルスにもいろいろな形がありますが、しかし何と言ってもまるで虫のようなT4ファージが一番インパクトがあります。

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T4ファージ(出典:https://ameblo.jp/rozaroza-s/entry-12568746626.html)

・そう言えばあさりよしとおの「宇宙家族カールビンソン」におとうさんが巨大T4ファージを焼いて食材にしちまう話があったな。

       

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