教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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"オリオン座が消滅する?ベテルギウスは爆発するのか" (8/2 サイエンスZERO「超新星爆発直前!?赤い巨星ベテルギウス」から)

ベテルギウスが爆発する?

 オリオン座の赤い星ベテルギウス。この星が近い将来に超新星爆発をするのではと話題になっている。ベテルギウスは明るさが変化する恒星だが、2019年の年末、今までになかったほどに暗くなったことから、超新星爆発の可能性が指摘され始めたのだ。

 ベテルギウスが注目されているのはその距離が近いから。実は1987年にも超新星爆発が確認されたのだが、その星は我々の天の川銀河の隣の大マゼラン雲(イスカンダルのあるところですな)内にあり、16万光年の距離がある。しかしベテルギウスは天の川銀河内の恒星であり、その距離は640光年しかない

 もし超新星爆発が起こればどういう光景になるか。まず超新星爆発によって星の温度が上がるので、現在の赤い星が青くなって段々と明るさを増していく。そして3時間後には満月の100倍もの明るさになる。だから昼間でもハッキリと見ることが出来る状態が3ヶ月は続く。星の回りに吹き出されたガスが見え、4ヶ月後には温度が下がり始めて中心部の星が青から赤に変化する。さらに温度が下がり続けて星は暗くなり、4年後には星は見えなくなる。このように予想されている。

 

で、本当に爆発するのか?

 ではベテルギウスは本当に爆発するのか。明るさの変化を辿ってみると、昨年の11月頃には0.8等だったのが、今年の2月頃には1.6等まで暗くなっていた。しかしその後、明るさは増し続けて、今年の4月では昨年の11月よりも明るくなっているという。この変化の理由は不明だが、星の表面に何かが吹き出して光を遮っただけで、星の本体は変わっていないのではないかとのこと。で、ベテルギウスはいつかは爆発するが、それは50万年以内ということで、見事に肩透かしである。

 もっとも赤色超巨星は天の川銀河内に多くあるので、100年に1回ぐらいはどれかが爆発するのではないかとのこと。なので、超新星に巡り会う可能性は0ではないということ・・・だが、コジルリとかだったらその可能性があるかもれしないが、私なんかはもうチャンスがほとんどない。

 なおベテルギウスはよく観測されている星であり、形が歪であるということが分かっているという。だから明るさが変化するとのことだが、2009年に大仲圭一氏の観測でベテルギウスは大きなこぶを持つ奇妙な形をした異形の星だと言うことが分かったという。

 

超新星と生命の関わり

 なお記録に残る超新星としては、藤原定家が明月記に「東の空にそれまでなかった星が現れ、2年間輝き続けた」と記しているものが残っている。それはカニ星雲であり、現在は望遠鏡でガスの存在を見ることが出来、そこには様々な元素が存在していることが分かっているという。超新星爆発はこのように元素を合成することが知られており、これが我々の身体の材料にもなっていると考えられる。

 超新星爆発は生命の源を産み出すだけでなく、生命に危機を与える可能性も指摘されている。それはガンマ線バーストという現象で、太陽の一生分のガンマ線を一気に吹き出すのだという。かつて地球もそれに襲われたことがあるのではないかとされており、4億4千万年を境に三葉虫の化石の中で、海面近くに棲息する種が絶滅して、深海で暮らす種のみが生き残っているのが確認されているという。これは4億4千万年前に地球をガンマ線バーストが襲撃、オゾン層が破壊されることで太陽からの紫外線が地表に降り注ぐことになり、浅い海で暮らす三葉虫は絶滅してしまったのではないかというのである。

 となると、ベテルギウスの爆発で人類は大丈夫なのかと心配になるところだが、まず心配はないだろうとのこと。ベテルギウスではガンマ線バーストが星の表面を突き破れないと推測されるし、もしガンマ線バーストが吹き出すとすればベテルギウスの地軸方向である可能性が高いが、その方向は地球の方向と20度ほどズレているという。ガンマ線バーストはかなり絞られた状態でピンポイントで吹き出すので、まず地球を直撃することはないだろうとのことである。

 

超新星を待ち構える観測装置

 さらに超新星爆発を観測しようとしている施設が日本にある。一つはスーパーカミオカンデ、もう一つは重力波望遠鏡KAGRAである。もし超新星からの重力波を検出すれば世界初となる。もし爆発が起これば、まずスーパーカミオカンデがニュートリノを検出し、次にKAGRAが重力波を検出ということになるだろうとのこと。


 久々に壮大な話でした。しかし私はベテルギウスは明日にでも爆発する可能性があるように聞いていたのですが、蓋を開けたからドッチラケでした(笑)。まあ天体ショーなんて、そう頻繁にあるものではないでしょう。それに間違ってガンマ線バースト直撃なんてのは御免です。ガンマ線バーストはかなり絞られたものとして出てくるとのことなので、それならいっそのこと直径1メートルぐらいまで絞って、トランプと安倍を直撃してくれと思う今日この頃。

 

忙しい方のための今回の要点

・オリオン座のベテルギウスは昨年の年末にかけて急激に暗くなったことから、超新星爆発が近いのではないかと話題となった。
・ベテルギウスが話題となるのは地球から距離640光年とかなり近いからで、もしベテルギウスが超新星爆発を起こせば、満月の100倍もの明るさになるという。
・しかしベテルギウスの明るさはその後急激に回復しており、何かの表面物質が光を遮ったと考えられ、星の本体は変化なかったのではないかとのこと。
・超新星爆発では星の中で合成された多くの元素が放出され、それらが我々の身体を構成する元となっている。
・また超新星爆発ではガンマ線バーストが起こることがあり、これの直撃を食らうと生命は甚大なダメージを受ける。地球では4億4千万年前にガンマ線バーストの直撃を受けた可能性があるという。
・現在、超新星爆発を検出するためにスーパーカミオカンデと重力波望遠鏡KAGRAがスタンバイ中である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・超新星爆発は星の最期の中では一番華々しいものですが、こういう最後を迎えるのは質量のかなり大きな星だと言います。太陽ぐらいの恒星だと、もっと地味な最後になるようです。で、こういう地味な星の方が寿命も長いので生命などを誕生させる可能性があるということになる。

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