教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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"再生医療の鍵ともなるプラナリアの再生の秘密"8/9 所さんの目がテン!「切っても死なないプラナリアの神秘に迫る!」

都丸沙也華がプラナリアの飼育に挑戦

 今回登場するのは、切っても死なないどころか、切ったら数が増えるということで知られており、全国の生物部での定番研究材料のプラナリアについて。これを虫は苦手で科学には興味なしという都丸沙也華が育てて観察するという内容。

 まずは標本の採取から。プラナリア研究の第一人者で「プラナリアはハムスターよりも可愛い」と断言する変態プラナリア愛に満ちた基礎生物学研究所の阿形清和所長に連れられて都丸が向かったのは、阿形氏がプラナリアを見つけたことがあるというくらがり渓谷。プラナリアはこのような清流の日陰で岩陰などにいるという。水の温度が12~18度を好み、水温が高いと溶けてしまうとか。

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プラナリア 出典:Wikipedia

 おっかなびっくりで河原の石を拾ってはひっくり返している都丸であるが、見事に阿形氏でさえ「こんな大きいのは初めて見た」というプラナリアを発見。阿形氏の研究室に戻ると早速実験。現地の水を凍らせたものの上に濾紙を置いてそれを湿らせて、そこの上に置くとプラナリアの動きが止まるので、それを上から3分割する。それぞれを戻したところ、バラバラになった破片がいずれも普通に動いている。そして傷口は見る見る塞がっていく。

 その後は都丸が連れ帰って二週間飼育。なお最初は餌は必要なく、一週間後ぐらいから鳥のレバーなどを餌にすれば良いとのこと。最初は気持ち悪がっていた都丸も段々と愛着が出てきた模様。で、二週間後だが見事に全て再生している。

 

プラナリアの再生メカニズムの秘密

 と、以上までならそのまま夏休みの自由研究だが、ここからが科学番組らしいところ。まずプラナリアの生態であるが、餌が豊富な環境だったら自ら身体を千切って無性生殖をするとのこと。餌が不足してくるとプラナリアは両性具有なので互いに精子を交換して有性生殖するという。つまりは住みやすい環境だと単純な方法でバンバン数を増やし、環境が悪化してきたら環境対応のために多様性を目指すと言うことか。

 そしてプラナリアの脅威の再生能力の秘密だが、プラナリアは体内にあらゆる細胞に変化できる幹細胞を20%有しているので、これがプラナリアの再生の秘密である。このような幹細胞は成長した人間ではないので、人間は手や足が生えてくるということがないというわけである。最近はこのような臓器などを再生するための幹細胞としてiPS細胞などが研究されているのは有名な話。

 ただこれらの細胞を適切に狙った細胞に変化させるのが難しい。遺伝子が関わっているようであるが、どこがどのように関与しているのかがまだ不明である。なお阿形氏はプラナリアの脳を作ることに関与していると考えられる遺伝子の働きを止めるという実験を行ったところ、再生したのは脳がないプラナリアではなく、全身のあちこちに脳が出来たプラナリアだったという。このことから、制御の遺伝子には「脳を作る」と言うものだけでなく、「脳を指定の場所に作る」という遺伝子もあるということが分かったとか。阿形氏はこの遺伝子に「脳だらけ(nou-darake)」と命名してNatureに発表したとのこと。プラナリアが最新の再生医療の研究にもつながっているという話です。

 

 プラナリアの研究は私が中学の時の生物部でもやってましたね(この時の私は化学部)。彼らはプラナリアをみじん切りにしたところ、流石に死んだとのこと(笑)。だけど三斬りとか頭から真っ二つぐらいなら余裕で再生するし、頭だけ真っ二つにすると、二つ首のプラナリアが再生します。下等生物ならではの荒技ですが、これが人間に上手く適用できたら画期的な医療になるのは確か。これが実用化したら、ある程度損傷した臓器はそれを治すのではなくて全摘して新しいのに置き換えるというのが医療の中心になり、糖尿病治療なんかも外科的療法が取られることになるでしょう。またガンなんかでも発症した臓器は全摘が出来るので、全身に細かく散ってしまわない限り手術に制約がなくなる。

 まあしかしこの手の研究には倫理の問題が付きまとうのが常。人間の失った手足が見る見る生えてくるなんてことになれば、これはまさしくモンスターの世界。アニメなんかではあったとしては実際になったらこれはこれで問題。また機能が暴走なんかしたら、まさに異形のモンスターが登場することになりかねない。この辺りはかなり難しい問題が潜んでいるので、単に科学の分野だけの問題ではなくなります。

 

忙しい方のための今回の要点

・プラナリアの飼育について都丸沙也華が挑戦した。
・プラナリアは清流の岩陰などを好み、水温は12度~18度を好む(温度が高くなると溶けてしまうとのこと)。
・またプラナリアは身体を切っても再生できるので、3つに切ると3匹に増える。餌が豊富な時には自ら身体を千切って無性生殖で増殖し、餌が少なくなると有性生殖する。
・プラナリアの再生の秘密は体内の細胞の内、20%が幹細胞であること。このために身体全体を再生できる。
・プラナリアの研究から、遺伝子の中には「○○を作る」だけでなく、「○○を決まった位置に作る」という制御の遺伝子もあることが判明したという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・なかなかに面白い生物です。しかしやっぱり私はああいう粘性動物は苦手だな。あれを可愛いと言える精神は理解不能(笑)。あれが可愛く見えだしたら、その内に蛭もナマコも可愛く見えだしそう。

前回の目がテン

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