教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

"今年の夏は甘酒のパワーで熱中症予防を"(8/9 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「必見!熱中症の最新治療&予防法」から)

 これからのシーズンに急増するのが熱中症。特にここ数日は全国で熱中症警報が出ずっぱりの状況。この熱中症の治療法や予防法について紹介する。

 

命にも関わる危険な熱中症

 まず熱中症とはどういう病気かだが、体温調整が破綻することで全身不調を起こす病気である。初期は目眩や発汗、筋肉の硬直などの症状が出る。この時に水分補給して涼しいところで休憩などすれば症状が治まる場合が多い。しかしこれを過ぎると頭痛、嘔吐、倦怠感などが出て、これは病院レベル。さらに悪化した場合には中枢神経障害やカンゾウ・腎臓などの多臓器不全で亡くなる場合がある。実際に昨年は救急搬送される例は7万1317人もあったという。

 さて救急搬送された場合にどういう治療がされるかだが、ERでまずは体温を測定。この時に熱中症では体温が外に放出できない状態なので皮膚温を測っても仕方なく、膀胱などで身体の深部体温を測定するという(膀胱にカテーテルを挿入するらしい)。そしてこれが39度以上だと危険と判断される。

 次には体温を下げる措置に入る。体温が39度を越えて意識障害がある場合などは一刻も早く対応しないと命に関わる。ここでは冷却水を流したパッドを胸や足に付ける体表冷却法を用いるという。また現在は現場で措置できる方法として、尿素と水を使用して身体を冷却するベストなども開発されている(イギリス製)という5度まで冷えるというのでかなりの冷却効果である。

 しかしこれでも体温が十分に下がらない場合があるという。この時には体内から冷却する。サーモガードシステムという装置で、カテーテルを静脈内に入れ、心臓付近の血管で内部のバルーンに0.5度の水を循環させて血液を直接に冷却するのだという。これを深部冷却法というそうな。それで38度の体温にまで下げるのだという(そうしないと脳がやられてしまう)。装置を止めると再度体温が上昇する場合があるので、最長7日間ぐらい使うことがあると言う。

 なお今年の特殊事情として、熱中症の初期症状(高体温、倦怠感など)がコロナ感染と区別しにくいことから、感染予防をしながら熱中症対策措置をする必要があるので、例年よりも医療崩壊の危険性が高いとのこと。つまりは事前に熱中症を予防することが例年以上に重要となっているのである。

 

熱中症対策の落とし穴

 さて熱中症予防であるが、こまめに水分補給をと言うのは大原則だが、それに気をつけていても飛んだ落とし穴があるという。

 三泊四日の旅行で水分を摂りながら36度の屋外で観光していて熱中症になったという男性のケース。彼の場合は水分を摂っていたにも関わらず熱中症を発症した原因は睡眠不足による自律神経の乱れなどによる体温調節機構の乱れが考えられるという。なお旅行中などはアルコールによる脱水なども原因になりそう。

 もう一人の女性は、買い物から帰った途端に熱中症の症状が出て、朦朧とする意識の中で必死に119番をしたらしい。到着した救急隊員はまず「この部屋暑い」と言ったそうな。彼女は冷房が苦手なために普段から扇風機だったらしい。こういうのは非労作性熱中症というジワジワと進行する熱中症だという。日頃からジワジワと疲労が蓄積して、突然に熱中症が現れるのだという。と言う訳で無理せずにエアコンは使用した方が良い(特に感覚の鈍い高齢者が要注意)。

 なお専門家によると1時間ぐらい休養して回復すれば大丈夫だが、それでもおかしな場合には病院にかかるべきとのこと。また汗腺が未発達な乳児や機能低下している高齢者が特に要注意とのこと。確かに閉め切った車内でパチンコ中毒の親に殺される乳児や、エアコンの止まった部屋で死んでいた高齢者の例は非常に多い。

 

熱中症対策にお勧めの甘酒

 最後は熱中症予防のためにお勧めする飲料として甘酒を挙げている。糖分や塩分など栄養豊富の上に乳酸菌が腸内環境を整えて水分の吸収効率を高める働きがあるために、江戸時代からも夏バテ防止の飲料として愛用されており、最近などは「飲む点滴」などと呼ばれていたりする。

 番組では乳酸菌がさらに多い「白神さらら」が良いとか、黒麹を用いた「黒甘酒」がクエン酸も含まれているから良いとか宣伝しているが、この辺りはサラッと流しておけば良い。クエン酸が疲労に良いのは事実だが、別に甘酒で取らなくても果実などでも補給可能なので。この辺りをあまり番組が強調するようになれば、私は直ちに「あるある認定」しますので。

 最後は甘酒を飲みやすくするアレンジとしての炭酸割りを紹介。炭酸による胃腸の刺激でさらに効果アップとのことだが、西尾氏が「これ飲みやすい」と言っているところを見ると、彼女は甘酒を「飲みにくい」と感じていると言うことでしょう。実際に加糖したようなインチキな甘酒は特に冷やの状態では飲みにくいなんてレベルでなく「飲めたものではない」というレベルです。本当に上質の甘酒を見分ける方法としては、冷やで爽やかに飲めるかとということを私は挙げておきます。本物の上質の甘酒はもれなく冷やで美味しく頂けます。私も山梨で熱中症寸前のフラフラになった時、この冷やの甘酒で回復した経験があります。

 

 以上、今回は熱中症の対策について。まあ甘酒を持ち歩く訳にも行かないので、外出時には水筒を持参して「こまめに」水分補給は鉄則です。なお以前にも紹介されていましたが、一気飲みしても尿に出てしまうだけなので、あくまで「こまめに」が重要。ポイントはのどの渇きを感じる前に飲むこと。特に今年はマスクのせいでのどの渇きが鈍くなってますので要注意です。

 私は酒を一滴も飲めない人間ですが、全国の古い街並みなどを回ることが多い関係から、酒蔵を見学することが多いです。そういう時によく調達してくるのが甘酒。やはり本物の良い酒蔵では、本物の良い甘酒も造られている場合が多いです。普段から添加物の多いインチキな酒を製造しているところは、甘酒も酒粕に砂糖を加えたようなインチキなものが多く、そういう甘酒は「冷やにするととても飲めたものではない」甘酒になります。甘酒の品質でその酒蔵の酒の品質まで評価できるという次第。炎天下での街並み見学で死にかけている時に、一杯の最上の甘酒はまさに命水です。炎天下行動時の私の宇治金時ドーピングに並ぶエリクサーがこれです(笑)。だから私が酒蔵の経営者なら、この時期に甘酒に「エリクサー」とネーミングして、それっぽい瓶に入れて売り出しますね(笑)。うまく商売したら、エニックスに寺銭払ってもペイするのでは。

 

忙しい方のための今回の要点

・熱中症は体温調整が破綻する病気で、最初は目眩、発汗、筋肉の硬直などの症状から始まるが、悪化すると意識を失って多臓器不全などで命を落とすこともある。
・昨年も7万人以上が救急搬送された危険な病気でもある。
・病院に運ばれると、膀胱内の深部体温を測定してから、まずは体温を体表から下げる措置が行われるが、それでも十分に体温が下がらない場合は、静脈内にカテーテルを挿入して血液を直接冷却する深部冷却法が施される。
・なお熱中症の初期症状はコロナの症状と判別しにくいため、今年は感染症予防対策をしながら措置する必要があり、医療の負担が大きい。そのため、今年は例よりも熱中症予防が重要となる。
・予防にはこまめな水分補給が原則だが、寝不足などによって自律神経が乱れていたら、水分補給を行っていたのに熱中症になる場合がある。
・また日頃からエアコンを使用しない人などは、疲労が蓄積して突然に熱中症を発症する非労作性熱中症を起こす場合があるので、室温には注意する必要がある。
・熱中症予防飲料として甘酒を番組は勧めている。糖分・塩分などの栄養が豊富の上に、乳酸菌の整腸作用で腸での水分吸収を高める効果が期待できる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・昔は「運動中には水分を摂るな」という戦前型の精神主義に毒されたキ○○イ指導者などが多くて、よく熱中症による死亡者が出てましたが、さすがに最近は熱中症に対する警告が行き渡って、少なくともまともな指導者でこれをいう奴は駆逐されたはずです。もし未だにこんなことを言う戦前の遺物のような奴がいたら、直ちに解任しましょう。そもそもそんな奴がまともな指導できる訳がないので。
・昔は「苦しい思いをすればするほど鍛えられる」という妙な精神主義があり、ドSな変態指導者が幅を利かせてましたが、近年は「非合理な苦行は鍛えるどころか害がある」ということが明らかになってきています。にもかかわらず、こっちの精神論はまだ完全には滅んでないのですよね。確かに何の苦労もしたことのない奴は、ろくでもない育ち方をする場合が多いが(今のトップのあいつとか)、それと肉体的な苦行は別物。筋肉のカリスマでさえも「筋肉は裏切らない」と言いつつ、過度のトレーニングは筋肉を痛めるだけになるので回復期間が重要と強調してますから。

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