フィリピンに伝わる巨額の埋蔵金伝説
徳川の埋蔵金だとか秀吉の埋蔵金が存在するという噂があるが、それらをぶっちぎるなんと600兆円にも及ぶ埋蔵金がフィリピンのどこかに隠されているという。それが山下財宝。現地ではこの埋蔵金探索に人生を賭ける者もいるぐらいの大フィーバー状態。その山下財宝とはいかなるものか。
フィリピンのルソン島に伝わる財宝伝説が山下財宝である。貧富の差の激しいフィリピンでは財宝獲得による一攫千金を目指して、人生を賭けて財宝を掘っている者も多く、山下財宝を探すグループは今も1200に上るという。
財宝を隠したと言われている山下とは、旧日本陸軍司令官の山下奉文。かつてマレーの虎とも呼ばれた司令官でこの地域を占領して日本でも人気のあった将軍である。しかしマッカーサーのフィリピン攻略でルソン島北部の山岳地帯バギオに逃れて抵抗することになる。この際に日本陸軍の兵士達が何かを埋めているのが原住民に目撃されている。これらの目撃証言から山下がバギオに財宝を埋めて隠したという話が伝わっているのだという。この地域では山下財宝は単なる都市伝説でなく、信憑性を持って語り継がれている話なのである。
謎のゴールデンブッダ登場
そして1970年、フィリピン全土が驚くニュースがバギオから飛び出す。純金製のゴールデンブッダがこの地から発掘され、中には宝石がギッシリ詰まっていたのだという。地元の青年ロジャー・ロハスの元を訪ねてきた元日本軍兵士が地図を示して、ここに山下財宝の一部が隠されていると教えたのだという。そしてその情報に基づいてロジャーが発掘すると、このゴールデンブッダとさらに金の延べ棒1トン以上を掘り当てたというのである。その後、怪しげな地図が次々と登場して、今や財宝の在処はルソン島のみならず、フィリピン各地に170カ所以上あるという。
そもそも財宝伝説が誕生したのは、開戦まもなく日本は東南アジア各地を席巻して次々と占領地を広げていったことから、こういう地域の財宝をかき集めていたはずだという考えがあるという。そして山下がこの地に赴任した時には劣勢になっていた日本軍はそれらを山下の元に運び、そして北部山岳地帯に逃走する際にはそれらを持っていたはずであるというわけである。戦後の日本側の記録によると、この時に米ドル95万ドル、ペソ銀貨300万ペソ、金銀塊若干、貴金属若干、砂金30~40袋のおよそ10億円相当の軍資金を輸送したということは残っているという。ただし山下達が運んだとされる物資の中にはさらにマル福金貨7000~1万枚というものが含まれているという。
マル福金貨が山下財宝? 独裁者まで絡んで深まる謎
このマル福金貨とは戦場で物資の調達のために使用された31グラムの金貨だという。日本からフィリピンに持ち込まれた時点でマル福金貨25000枚、57億円がマニラには存在したという。で、これが山岳地帯に運び込まれた時点で輸送が困難のためにあちこちに埋められたのが山下財宝ではないかという話。また山下大将が降伏して戦争犯罪人として処刑される時に、世話になったアメリカ兵の看守に礼としてマル福金貨を渡したという逸話もあるらしい。こういう風にあちこちでマル福金貨が登場することから、これがいわゆる山下財宝の伝説の元になったのではと考えられるという。
また山下財宝はフィリピンの独裁者だったマルコスにもつながる話がある。1986年にフィリピンから追われた彼らが不正蓄財で訴えられた時に、イメルダ婦人がマルコスの資産は山下財宝によるものと法廷で主張したのだという。この時にイメルダ婦人は山下財宝を金塊と表現しており、どうやらマル福金貨とは違うらしい。また現地での山下財宝のイメージももれなく金塊である。結局は山下財宝の話はロハスのゴールデンブッダの話から端を発しているのだという。なおゴールデンブッダのその後であるが、ロハスの子孫によると盗難品であるとして当局に差し押さえられたということなので、今となってはその真偽を確かめようがないという。
また山下財宝の伝説には日本とフィリピンにおける戦争の歴史が関係しているという。フィリピンは長年欧米の支配下にあったが、その欧米を日本が改選後に追い出す。しかしホッとしたのはつかの間で、日本の支配は欧米よりもひどいものであった。フィリピン人は物資などを収奪され、多くの人々が命を落としたという。つまりはそれだけのことをする日本軍なら、東南アジアの財宝をかき集めて持っていくぐらいのことはしただろうという考えだという。さらにはそれはアジアの宝なのだから、フィリピンに取り返したいという考えも根底にあるという。戦争の影もここに存在するわけである。
徳川の埋蔵金にしても、秀吉の埋蔵金にしても言えるんだが、そんな莫大な資金を隠していたのなら、隠したまま負けるのでなく、その前にもっと有効に活用したはずである。秀吉がそんな何百兆もの金をさらに隠していたのなら、淀君と秀頼はもっと浪人を雇うとか敵方を買収するとかも出来るし、徳川が埋蔵金を隠しているぐらないなら、慶喜に言わせれば「それだけの資金があれば、もっとマシな幕引きをしていた」と言いたくなるだろう。その時点で「敗者が再起のための資金を隠していた」なんてことはまずあり得ないと考えるし、本当にそんなものを抱いたまま負けたのだったらあり得ないほどに無能すぎる。もしあったとしても、財務担当者が素寒貧の金庫の中をかき集めた程度だろう。
山下財宝の件はなかなかに興味深かったが、私が今回の番組で興味を持ったのは、フィリピン人は日本人の支配下でひどい目に遭って反日意識が強かったのが、その後に大統領が日本を許そうと呼びかけて(日本との経済関係を結ぶことが目的だが)、その後に親日路線に転じたという話。と言うのは、日本はフィリピンを欧米から解放したことからフィリピン人に感謝されており、だからフィリピンは親日国であると言うことを散々吹聴している連中がいることを知っているから。やっぱりここでも歴史の捏造だったか。
忙しい方のための今回の要点
・フィリピンのルソン島では莫大な山下財宝が隠されているという噂が伝えられている。
・山下とはこの地に赴任していた山下将軍であり、フィリピンがマッカーサーの攻撃にさらされた時、山下が山岳地帯のバギオに移動した時に莫大な財宝を輸送してどこかに隠したのだと言われている。
・また純金製の仏像が発見され、それが山下財宝の一部だったという話題も存在するが、その仏像はその後に盗品としてフィリピン当局に差し押さえられたとのことで、結局は今となっては真偽不明とのこと。
・また不正蓄財の容疑で裁判にかけられたイメルダ婦人が、マルコス大統領の財産は山下財宝を見つけたことによるものと弁解したという話もあったという。
・とにかく客観的には眉唾のエピソードだが、貧富の格差の大きいフィリピンでは、一攫千金の夢を見て財宝発見に人生を賭けている者も少なくないという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ゴールデンブッダなるものが本物かどうかが分かりませんが、あれが本当に山下財宝で当局に差し押さえられたとなれば、マルコス大統領の資産が山下財宝によるものというのは、ある一部においては本当と言うことになるな(笑)。
・ただ何にせよ、あの仏像は日本で作られたものでないことは確かでしょうね。日本人が彫る仏像ならああいう雰囲気の顔立ちにはならないと思う。
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