教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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10/25 所さんの目がテン!「食品パッケージに隠された驚きの技術」

 地味でほとんどの人が注目しない分野だが、実は日々進化を続けているという食品パッケージの技術について紹介。

 

多層フィルムを使用することで開けやすくなった豆腐パッケージ

 まず最初に登場するのは豆腐のパッケージ。これって確かに昔はパッケージをはごうとしたら、表面のフィルムの端だけちぎれて、結局はキッチンばさみを突き立ててパッケージを破らないといけないということがよくあったのだが、最近のパッケージは比較的簡単に開くようになっている。

 これを開発したというDICに取材したところ、そもそも密封性を高めるために接着部分が容器と同じ素材であり、それを溶融接着していたから最初からはがれない代物だったのだという。それが今のイージーピールフィルムというのは、フィルムが多層構造になっていて最下層のフィルムは容器と同じ素材なので容器と密着し、はがす時にはその一層上の接着強度の低いフィルムの部分で容器の縁の部分がはがれ、底が切り離される形でフィルムがはがれるのだという。だから容器の縁を見るとフィルムが一層残っているという。

 言われてみると確かにその通り。またフィルムをはがした時に極薄いフィルムが豆腐の表面に残るという失敗例もあるのだが、そういうことが起こるわけが今回非常に良く分かった。

 

簡単に開くようになったチューブわさびのフタ

 次に登場するのがチューブわさびのフタ。かつてはクルクルと2回転しないと開かなかったのが、今は1/4回転しただけで蓋が簡単に開くようになっている。その程度だと大したことはないように思うのだが、フタを2回転させるにはその時にフタを持ち直す必要があり、年寄りなどになってくると動作が不正確になることから、その時にフタを持ち損ねるなど意外と手間取るのだという。そう言われてみればうちの親父を想像すれば、確かに指先が不正確でこの手の動作は非常に手間取ることが推察が付く。

 このパッケージを作ったヱスビー食品によると、従来は1本のらせん状のネジだったものを、4本の短いネジを組み合わせた4条ネジという形にしたことで1/4回転で開くようになったのだという。さらには閉める時にもカチッと言う感触があり、閉めたことが分かりやすいようになっているという。これは感覚フィードバックと言って、人間が動作をした時に何かの情報が返ってくることで安心感があるのだという。そう言えば私もボタンを押したことの感覚が全くない最近のタッチセンサーは苦手である。と言うわけで私はキーボードは長年、カチカチというクリック感があるメカニカルタッチのものを愛用している。ちなみにこのキャップは特許まで取った技術とのこと。と言うことはハウスの方は普通のネジ蓋なんだろうか。商品の差別化ってやつだな。

 

クリームが全く付着しないフィルム

 さらに登場するのはケーキの回りを巻いているフィルム。これをはがしたら大量のクリームが付着するので、まずはそれを舐めるところから始まるというのが定番だが(笑)、この付着が全くないフィルムというのが開発されているという。番組でも厚切りジェイソンが体験して驚愕しているが、テレビを見ていた私も思わず「嘘っ」という言葉が出たぐらい。

 これを開発した東洋アルミによると、表面にハスの葉を参考にした凸凹構造を導入すると共に、化学的に油をはじく材料を使用したとのこと。ちなみにこのような生物構造から機能を取り込むのはバイオミメティクスという技術であるらしい。モルフォ蝶の構造色なんかもこれに属するんだろうか? 東洋アルミではこのフィルムの開発に6年かけたそうだ。このフィルムの表面に油を流すと全く付着せずに流れて行く。

 

野菜の呼吸を抑える保存用袋

 最後は野菜用のパッケージフィルム。住友ベークライトのフィルム営業部を訪問している。まずはブロッコリーについて、袋に入れない、普通の袋に入れる、特殊な袋に入れるで4日放置したものを比較しているが、まずそのままのものは色も黄色くなって明らかに劣化している。つまりは成長して枯れてきてしまったわけである。これに対して袋に入れていたものは見た目は変化していないが、袋を開けると沢庵のようなくさいにおいがするという。これはブロッコリーが酸欠になることで硫黄を含む成分が化学反応することで生成する臭いなのだとか。これに対して特殊な袋では見た目も変化せず、開けても臭いはしない。

 野菜類を保存する時には野菜の呼吸をどう抑えるかがポイントになるという。呼吸をそのままさせていたら栄養分が消費されて劣化するが、かといって呼吸を完全に抑えてしまったらこのように異臭が発生するということになりやすいという。そこで呼吸量を適切な量に制御するように微細な穴を袋に開けているんだという。なおこの適切な呼吸量は野菜によって違うので、野菜に合わせて100種類もの袋を作っているのだという。だから袋を間違えると野菜が傷むことになってしまうとか。全くすごい技術である。

 

 地味だけどすごい技術といういかにも日本らしいところを紹介しました。こういう分野に光を当ててくれることは大いに結構なこと。こういう企画はこの番組か後はガッテンぐらいしか考えられないところです。

 厚切りジェイソンが言ってましたが、アメリカではこういう直接的に売り上げにつながるかどうかがハッキリしないところには力を割かないという。まあそういう細かいことの蓄積が、とにかく使いにくくてユーザーのことを全く考えていないアメリカ製品という現在の状況につながっており、アメリカ製品が各地で惨敗する原因となっている。もっとも昨今は日本のメーカーも目の前の超短期利益しか考えなくなり、この手の配慮は「無駄」として省かれる方向に向かいつつあるので、いずれはアメリカ的な雑な製品ばかりになる可能性は高いが(既に電化製品などでその傾向は顕著になりつつある)。私は以前から日本に最近に導入されたアメリカ式の会計システムは、日本の経済競争力を削ぐためのCIAの陰謀だったと考えている。同様に最近に日本で台頭している新自由主義も、日本の国力を削ぐためのアメリカの陰謀に、日本の利権政治家が乗っかった結果である。

 

忙しい方のための今回の要点

・進化を続けている日本の食品パッケージについて紹介。
・豆腐の放送はイージーピールフィルムといって、多層構造のフィルム使用することで、密閉性は保ちつつ開けやすい構造になっている。
・わさびのチューブは4条ネジを使用することで、フタを1/4回すだけで開くようになっている。高齢者なども開けやすい配慮である。
・またクリームが全く付着しないフィルムなども開発されているが、これはハスの葉の構造を参考にしたという。
・さらに野菜の呼吸量に合わせて鮮度を保つためのフィルムなども個別開発されている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあとにかくこういう「目につかないような細かい点」ってのが実は日本の一番の強みで、それが積もり積もってかつてのメイドインジャパンの強さにつながってました。しかしそれが分かっている者は少ないでしょうね。
・で、こういう細かいところは実は中小企業が手がけたりするんです。しかし今の政権なんかは自分達に献金しない中小企業を敵視して、全部つぶして大企業だけにすることなんて考えている。だけど実際にそうなったら、日本の経済は間違いなく回復不能の状態になります。

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