教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/1 NHKスペシャル「三千万年の旅 列島誕生 ジオ・ジャパン」

日本列島の成立メカニズムを解説

 日本列島の成り立ちを紹介するというシリーズの総集編。ちなみにシリーズ後半は以前に放送された内容を私のページにも記載している。

tv.ksagi.work

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大陸から引きちぎられた日本列島

 さて日本列島が出来るまでには3000万年かかったそうだが、それを番組では1年のカレンダーに喩えて紹介しているが、まず最初の6ヶ月は「パッカーンの時代」。要は大陸が裂けて日本列島の基本となる島が誕生した時代だという。

 日本海沿岸は例えば鳥取県の浦富海岸、新潟県の佐渡の尖閣湾などのように切り立った荒々しい断崖という風景が多いのであるが、これらが生成したのは日本列島の誕生と関係しているのだという。

 1億年前のユーラシア大陸の東には日本列島は存在していない。岐阜県の飛水峡にはチャートと呼ばれる独特の岩石が存在するのだが、これと全く同じものが存在するのがロシアのハバロフスクだという。含まれる化石まで全く同じだったという。これが何を意味するかだが、ここがかつてつながっていたということである。つまり日本列島は大陸から引きちぎられたのである。

 今から3000万年前、恐竜が絶滅して哺乳類の時代となった頃である。突然にユーラシア大陸の東端に亀裂が入り、大地がゆっくりと切り裂かれていった。そして2500万年前、カレンダーでは3/1に亀裂に海水が入り込んで日本海の元が生まれる。そして1000万年かけて亀裂は広がっていく。海底では大噴火が起こって火山灰が滞積する。これらの火山灰は後に隆起で地表にも現れている。

 この大変動を起こした原動力はプレートである。ユーラシア大陸の東端の下で太平洋プレートが沈み込んでいたが、この時に沈み込むプレートによって太平洋プレートが東に押される力が生じる。そして太平洋プレートが東に押される時に、それに乗っかったユーラシア大陸の東端が「パッカーン」とちぎれたのだという。こうして日本列島の原型が現在の位置に到達したのが1500万年前、カレンダーで6/30のこととなる。なおこの時の割れ目に地底からの金が湧き出したので、これが後の「黄金の国ジパング」の元になったという。

 

伊豆諸島が日本に衝突し、紀伊半島ではカルデラ噴火

 ここからは「ドッカーン」の時代となる。伊豆諸島は巨大な火山の山頂が連なったものである。これが大激動をもたらしたという。丹沢山地には海底に溶岩が吹き出したことで出来る枕状溶岩や珊瑚の化石などが見つかっている。これらは伊豆の火山島に存在するものである。

 これらの火山島が丹沢山地にたどり着いたのはまたもプレートが関係している。フィリピン海プレートが北上する時にそこに乗っかっていた伊豆諸島が次々に日本列島に衝突していった。このために丹沢山地には枕状溶岩や珊瑚の化石が存在することになったのだという。これで日本列島は東西がつながることになる

 さらに紀伊半島でも大地殻変動が起こる。紀伊半島には古座川の一枚岩のような巨岩が存在するのだが、熊野地方のこれらの巨岩の位置を並べていったら半円形になる。これは実は巨大カルデラの痕跡だという。

 1400万年前のまた起伏の少ない湿地の紀伊半島で、地球史上最大規模のカルデラ噴火が発生する。南北40キロもの火口から大量のマグマと火山灰が噴出した。そして半円の火口に残った岩の中の硬い岩が長年の浸食に耐えて今日まで残ったのだという。1400万年前には紀伊半島だけでなく、西日本の各地で発生しており、これはフィリピン海プレートの作用によると言う。これで西日本の大地は成長した。

 さらに東日本でも洞爺湖のようなカルデラが存在し、カルデラ噴火は東日本でも起こっていた。太平洋プレートの沈み込みで110カ所のカルデラ噴火が発生したという。これらが日本の原型がほぼ完成する。この時代がカレンダーで11月中旬まで続く。

 この後が「てんやわんやの時代」らしいが、ここからは私も紹介した第二部に突入するので説明はかなりすっ飛ばすので、詳細は上で紹介したページを見てもらいたい。

 

その後も各地で様々な地殻変動が発生する

 これらの時代には日本の各地で様々な地殻変動が起きているのだが、それらは悉くフィリピン海プレートの働きによって生じている

 この時期にフィリピン海プレートの移動方向がそれまでの北向きから北西向きに変化したのに伴い、列島が東西に圧縮されるという現象が発生した。この力によって北アルプスでは大地に亀裂が生じ、巨大なカルデラが直立するという地殻変動が生じている。

 なお元の番組ではこの後に関東平野生成の話が来るが、本番組ではそれはカットしている。

 さらに瀬戸内海の生成だが、これはフィリピン海プレートの移動方向が変化した時に、脆い中央構造線を境に地面がズレ、この時に大地がしわになり、さらに後にそこに海水が入りこむことで瀬戸と灘がつらなる今の瀬戸内海の風景が出来た。

 また九州では地下のマントルが上昇する時にフィリピン海プレートを押し込み、その結果として九州を南北に引き裂く力が発生して、九州中央に巨大な地溝帯を発生させることになった。しかし九州で桜島や阿蘇などの大規模なカルデラ噴火が相次いだことで、その火山噴出物でそこを埋めたので九州が南北に分裂することにはならなかったのだという。

 こうやって日本列島が形作られて今日に至っているという話。

 

 元々の番組内容は、劇団ひとりや指原が料理を食べたりなどという「無駄な」シーンが異常に多い上に、彼らの「ホエー」というマヌケな相づちが解説中に入るなど、非常に間延びしている上に下品な作りであったのだが、それらを省いてしまったら、4本分(だと思う)の番組内容が70分ちょっとで収まってしまった上に、内容的にはむしろ分かりやすいものになった。

 劇団ひとりが落語家調で全体を紹介する狂言回しをしており、これが若干鬱陶しくないわけでもないが、まあこの程度なら許容範囲。とりあえず料理シーンがなくなり、指原が出なくなったことで番組の内容が各段にグレードアップした。先の放送時に私は「無駄なシーンをカットしたら2本分が1本でまとまってより分かりやすい内容になると言ったのだが、今回の内容を見るとまさにその通りだったことが見事に証明されていた。

 番組は日本列島の生成のメカニズムについて最新の研究成果に基づいての報告を行ったいるのだが、こうして見ているとやはり近年の地質学の進歩も著しいことが分かる。私が若い頃に学んだ内容では、太平洋プレートの沈み込みのところではマグマが発生しやすいので、そこで海底火山の噴火などが相次いで、それを繰り返しているうちに段々と日本列島が生成したなんて程度の説であり、日本列島が大陸から引きちぎられたなんてのは初めて聞いた。伊豆諸島の北上ぐらいは知っていたが、瀬戸内海や九州なんて細かいことは考えたこともなかった。しかしここで紹介されいる最新の説は、実際に各地を回った私としては非常に納得の出来るものであり、妥当性は高いと感じられる。

 

忙しい方のための今回の要点

・日本列島が生まれたのはまず3000万年前、ユーラシア大陸の東端が太平洋プレートの動きに伴って大陸から引き裂かれたことによって原型が誕生した。
・この断片が現在の位置にたどり着いたのが1500万年前。この後、伊豆の火山島が北上するフィリピン海プレートの動きにのって次々と衝突することで、現在の丹沢山地が生まれ、東日本と西日本がつながることとなった。
・300万年前、日本の地下で太平洋プレートに押されてフィリピン海プレートの進行方向が変化するという大事件が発生し、この影響によって北アルプスでは巨大なカルデラ噴火を起こった挙げ句に、それが直立するという大変動が発生した。
・またフィリピン海プレートの動きにより、四国で中央構造線を境に大地がズレ、皺の寄った大地に海水が入り込むことで、今日の瀬戸内海が生まれた。
・さらに九州ではマントルの影響で南北に大地が裂かれたが、巨大カルデラ火山の噴火で割かれた大地がつながることとなった。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・科学の世界は日進月歩で進化していき、その度にそれまでの通説が覆るということがありますので(今日主流となっている巨大隕石の衝突で恐竜が絶滅したなんて説は、私が子供の頃はとんでも扱いだった)、常に知識のアップデートは必要です。テレビにはそういう役割をしっかりと果たしてもらいたいところです。