巨岩の山頂に建つカラフルな宮殿
ポルトガルのシントラ山脈の標高500メートルの岩山の山頂にカラフルな宮殿が建っている。この奇妙な宮殿はポルトガルの大航海の成果である。
『世界遺産』1/17(日) シントラの文化的景観 〜 大航海が生んだカラフルな宮殿【TBS】
ロカ岬から始まる山脈がシントラ山脈、森が広がり海風で夏は涼しく冬は暖かいこの地は地上の楽園とされたという。シントラは1000年の歴史を誇るという。先ほどのカラフルな宮殿は19世紀にポルトガル王が天空の宮殿を作りたいと50年の年月を費やして建造したものだという。海の神トリトンの飾りなどがあるが、これは大航海時代の名残である。海洋王国ポルトガルの過去に思いを馳せながら王はここで暮らしたという。
宮殿から見下ろす位置にはイスラム勢力のムーア人が9世紀に築いた万里の長城を思わせる要塞が存在する。全長4キロ、最大の高さは9メートルもある。この地を奪還した後は放置されて荒廃していたのを、王が上から見下ろすために当時の姿に積み直させたんだという。
海洋国家ポルトガルの繁栄を伝える王宮
その要塞の下に旧市街ががある。町が今の形になったのは600年前、王族や貴族達の避暑地として栄えたという。その中で中心にあるのが王宮だが、この王宮には2本の真っ白い奇妙な塔が建っている。この目立つ塔は厨房の煙突だという。王家の大宴会のために巨大な厨房が必要だったのだという。
そして時代は下って19世紀になると郊外に対外貿易で設けた商人達の館が建つことになる。趣向を凝らした奇妙な屋敷が存在するという。織物商が建てたモンセラーテのようなエキゾチックな館もあるが、そのような建物の白眉がペナ宮殿である。
ペナ宮殿は岩山の山頂で巨岩にめり込んだような形で建っているが、これはあえて整地せずにそのまま巨岩の上に宮殿を建てたのだという。巨岩は建物内部の部屋にまで入り込んでいる。様々な趣向を凝らした部屋が回廊のように続く構造になっている。
城の周囲の緑は実はすべて人工的な森だという。岩山に世界中から集めた植物を一本ずつ根付かせたのだという。だから庭園内には様々な植物が存在する。中には日本のツバキも。
シントラがこの世の楽園と言われたもう一つの理由は清らかな水に恵まれていたこと。これらの湧き水は今でも住民に飲まれているという。
ポルトガルは16世紀の大航海時代に栄光を極めるが、王宮にある青と白のタイルがその栄光を伝えている。アズレージョと呼ばれる絵の入ったタイルは東洋からもたらされた技術による贅沢なもので、かつては王や貴族にしか許されなかったという。かつてポルトガルがアジア貿易の拠点としたマカオにもアズレージョが存在する。
自然と一体となった景観が認められ、このシントラの町は世界遺産に認定された。
忙しい方のための今回の要点
・ポルトガルの山地の町シントラは、王侯や貴族の避暑地として栄えた。
・巨岩の岩山の山頂にあるカラフルなペナ宮殿は19世紀に王が50年の歳月を費やして建てた。あえて整地せずに巨岩を建物に取り込んで建てられている。
・麓の町の中心には王宮が存在する。2本の厨房の煙突はこの街のシンボルとなっている。また王宮にある装飾タイル(アズレージョ)は東洋の技術を取り入れて作られた高価なものであり、大航海時代に栄えたポルトガルの繁栄ぶりを伝えている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・うーん、確かに美しい町なんですが、さすがにあのペナ宮殿だけはどうにも色が多すぎる気がして今ひとつ落ち着きませんね。むしろ麓のムーアの要塞の方が良い味を出している。
・ポルトガルって大航海時代に確かに繁栄しましたが、スペインとの対立なんかもあったはずです。あの山頂の城塞は要塞という意味もあったんでしょうか。確かに堅固そうではありますが。
次回の世界遺産
前回の世界遺産