教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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2/21 サイエンスZERO「超巨大雷スーパーボルト!謎の"対消滅"を追え!」

桁外れの雷・スーパーボルト

 身近な現象である雷だが、この雷の中で反物質による対消滅という宇宙創生や加速器の中で発生するような現象が起こっているということが発見されたのだという。

 北陸の石川県は雷が多い地域として知られている。年間の雷観測日数は42.4日と全国一であるという。石川県の雷の特徴は冬に多いということ。地元では鰤おこしと呼ばれているという。その雷は強烈なエネルギーを持っており、最近テレビ塔に落雷した時には、安全装置が焼き切れて広範囲でテレビが見られなくなるという事態まで発生したという。

 この巨大すぎる雷が冷戦時代に騒ぎを起こしたこともあると言う。アメリカの核監視のための衛星が1973年1月21日に北陸沖で巨大な閃光を検知。そのエネルギーは500ギガジュールと小型の核兵器並。ソ連からの攻撃ではないかと騒然となったという。しかしその後、これは巨大な雷であったことが判明した。エネルギーは通常の雷の1000倍以上だという。このような雷はスーパーボルトと呼ばれるようになったという。

 この石川の冬の雷は一般的な夏の雷とどこが違うのか。夏の雷は積乱雲で発生する。積乱雲は高さ10キロほどで大きさは数キロ程度なのに対し、石川の冬の雷は雲の高さこそ3キロ程度だが、水平方向に100キロ以上の長さがあり、つまりは雲の体積が全く違うのだという。そしてこの大量の雲の中に電気が溜まって発生するので、とてつもないエネルギーを発するのだという。なお世界の雷の内でスーパーボルトは0.03%に過ぎないという。

 

何と雷の中で反物質が生成していた

 そして今回の標題となっている対消滅を発見したのが、理化学研究所の榎戸輝揚氏。元々の専門はX線天文学だという。きっかけは日本間沿岸の原子力施設で、何も起こってないはずなのに放射線が検出されるという現象が起こったことだという。その内に「どうやら雷雲が来ると放射線が増えてくる」という論文が出始めたことから、それなら観測してやろうと取り組んでみたのだという。2006年から手作りの装置で観測を始めたところ、2017年に雷からガンマ線が数十秒にわたって吹き出していることが分かったのだという。しかも陽電子と電子の対消滅のエネルギーに当たる511キロ電子ボルトのガンマ線が発見されたのだという。この発見に物理学会は騒然としたという。

 対消滅のメカニズムだが、まずスーパーボルトから大量のガンマ線が発生すると、これが大気中の窒素原子に衝突し、窒素原子が炭素原子に変換する際に陽電子が飛び出すのだという。そしてこれが周囲の電子と対消滅するのだという。対消滅のエネルギーが511キロ電子ボルトというのは、物理の世界の常識だという。

 榎戸氏のチームは、現在各地の高校や企業に観測装置を置かせてもらって雷雲の観測を始めているという。これによってデータの精度などもさらに上がっていく。

 

宇宙に向かう雷もある

 一方、雲から宇宙に向かう雷というのもあるという。神戸の高校生達が雷の観測を行っているのだが、それはまるで花火のようにも流星群のようにも見えるものだが、これはスプライトと呼ばれる現象で、1990年代に初めて宇宙から観測されたという。北陸で巨大雷が発生したらこのスプライトが観測されるのだとのこと。そして神戸高校と静岡の磐田南高校が同じスプライトを観測した結果から、その3次元配置が明らかとなった。その結果、直径70キロ、高さ90キロの範囲に円形に広がっていることが分かったのだという。雷は地上だけでなく宇宙に向かってもエネルギーを放出していたのだという。なお雷から宇宙に向かってのエネルギー放出は、エルブスと呼ばれる直径200キロ以上の光の輪や、雷雲から宇宙に青い光が突き上げるブルージェットなども観測されているという。

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ISSから観測されたスプライト

 

 宇宙創生か加速器の中の世界だったと思っていた反物質の対消滅が、まさか地球の大気圏内で発生していたとは驚いた。つまりはスーパーボルトがそれだけとてつもないエネルギーを持っていたということだろう。

 ガンマ線はかなり透過力の高い放射線であり、高エネルギーであることから、ガンマ線が数十秒にわたって降り注ぐと聞いたら「健康面は大丈夫なのか?」と気になったところであるが、被爆が問題となるレベルではないようである。スーパーボルトが小型核兵器並のエネルギーと言っていたので心配になったが、どうやら何も核反応起こしているわけではないので、そのエネルギーが全部ガンマ線に向かうってわけではないのだろう。

 私が子供の頃は、反物質なんて一応理論的に存在が予測されていても、およそ実際に存在が観測されるものではなく、完全にSFの世界での話だった(そう言えば宇宙戦艦ヤマト2に登場するテレサが反物質の身体とか、反物質をコントロールする力があるとかの設定だったな)。それが現代は実際にその存在が観測されてきているわけだから、時代も変わったものだ。そもそも私が子供の頃は陽子や電子と言えばそれ以上分割不可能な素粒子だったのだが、現在はその下のミューオンとかが登場していて、もうわけが分からん。

 

忙しい方のための今回の要点

・石川県は日本で最も雷の多い地域だが、特に冬にはスーパーボルト言われる通常の雷の1000倍のエネルギーを持つ超巨大雷が発生する。
・スーパーセルを起こす雷雲は100キロ以上の長さを持つ巨大なものであり、それだけの体積の雲がエネルギーを溜め込むのでとてつもないエネルギーを発する。
・最近の観測で、スーパーボルトからガンマ線が発生し、そのガンマ線によって反物質である陽電子が生成し、電子と対消滅を起こしているということが発見された。
・雷雲から放出されるエネルギーには宇宙に向かうものもあり、それらがスプライト、エルプス、ブルージェットなどとして観測されるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・こんなところで反物質が登場するなんてのを聞いていたら、その内にワープなんかも可能になるんではと発想がワープしてしまう(笑)。対消滅なんてヤバい現象がまさか大気圏内で起こっていたとは・・・。

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