教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/17 サイエンスZERO「"地中の王"驚異の実力 きっとミミズが好きになる」

生態系で重要なミミズの役割

 今回は好感度は極めて低いミミズ。しかし生態系における役割は重要であり、まさに地中の王であるという。そのミミズの実力について。

 今回登場するゲストはミミズ研究一筋というまさにミミズオタの南谷幸雄氏。彼が溢れるミミズ愛を語ってくれるのだが、それについてはコジルリでなくても少々ついていけないところがある。

 まずミミズの役割としては「土を作る」と言われている。地上に落ちた葉っぱなどを餌として、それを消化して糞を出す。実は地表の土そのものがミミズの糞で出来ていると言っても良い。ミミズは毎日体重の1/3以上を食べて排出、地中生物の50~80%はミミズで、1平方メートル辺り多い土地では1200匹以上いるという。

 これだけのミミズが1日に作る土の量は40グラム。1年では15キロの土を作るという。こうやってミミズが土を作ることによって、遺跡などは土に埋もれて風化を逃れるので今日まで残ったのだという。

 

 

ミミズの生態

 またミミズには様々な種類がいると言うことで、番組では南谷氏のミミズハントに同行している。まず最初に出てくるのは虹色に輝くシーボルトミミズ。表面のガラス質のせいで独得の光沢を持つのだという。その美しさからシーボルトが持って帰ったという。さらには体長が1メートル以上にまで伸びるというハッタミミズなど様々な種類がある。南谷氏はミミズの糞を見つけてその穴の中に唐辛子液を流し込んで、ミミズが飛び出してきたところを捕らえるという方法を取っている。この方法で南谷氏は与那国島で超巨大ミミズまで発見している(コジルリが若干ビビっているが、確かにこれはキモい)。

 なおミミズの生態系の役割としては、土を作るだけでなくて「餌になる」ということも大きいという。ありとあらゆる動物がミミズを餌としており、ウナギの餌もミミズだったという研究報告もあるという。水の中に落ちたミミズが魚の餌のかなり大きなものになるという。

 番組ではミミズの生態としてミミズの食事シーンや排泄シーンを放送しているが、ミミズは歯がないにも関わらず筋肉で歯をかんで食べている。なお地中の細菌は通常は眠った状態であるが、ミミズの腸内を抜けることで活性化するので、これも土壌の生成に効果があるのだという。

 

 

田んぼから宇宙までのミミズの活躍

 またイトミミズを使用して有機農法の雑草対策を行うという研究もある。通常は6月頃から田んぼに水を張るが、3月から水を張って田んぼの中のイトミミズを増やすことで、田んぼの土壌の表面がイトミミズの糞で覆われ、雑草の種に日が当たらなくなることで雑草が生えにくくなるのだという。これは農家にとっての負担軽減になるので注目されているという。

 さらにはミミズから貧血治療薬の成分を抽出したり、血栓分解成分を抽出、さらにはミミズ自体を高タンパクな食料として使用という研究もあるという(世界では実際に既に食べているところもあるという)。ミミズ愛に溢れる南谷氏は当然のように中国のミミズ料理をいつか食べてみたいとのたまっている(うーん、私にはちょっと無理)。

 最後はミミズと宇宙開発という壮大なもの。中央大学の中村太郎氏の研究室が開発したのはミミズの蠕動運動を再現したロボット。この移動方法だと狭い配管なども移動できるので配管の検査などに使用可能だという。さらには月面などの重力の低い場所での掘削にも最適として宇宙用のミミズロボットも開発されているという。通常のドリルなどだと重力が低いと空回りしてしまうが、ミミズの運動だと穴の壁を押さえながら前進するので、低重力下でも確実に穴を掘って進めるのだという。これは開発者の中村氏でさえも考えていなかった用途だという。

 なおNASAが火星を模した環境下でミミズの繁殖に成功したという報告もあり、将来的には火星のテラフォーミングに活躍という壮大な話につながる可能性があるという。

 

 

 というわけで生態系になくてはならない役割を果たしているミミズについて。実際にどこかの惑星をテラフォーミングするというようなことになれば、一番最初に移植する必要のある動物はミミズでしょう。これが土を作ってくれないと植物も育たないですから。多分最初はミミズと餌になる有機分を送り込み、表土が出来はじめたら植物を植えてということになると思います。

 まあ砂の中をニョロニョロと進むミミズというのはそれなりのインパクトがありますから、「砂の惑星」なんかにも超巨大ミミズであるサンドワームなんかが出てきます。まあある種のモンスターの定番ですね。ちなみにミミズには歯はありませんが、モンスターのミミズの場合は怖さを増すために歯のあるものが多いですね。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ミミズは生態系において重要な役割を果たしているが、特に地表の土はほとんどがミミズの糞であると考えても良い。
・またミミズは生態系において多くの動物の餌となっている。イノシシなどの地上動物だけでなく、魚の多くも水中に落ちたミミズを餌としている。
・イトミミズを有機農法の田んぼで繁殖させることで雑草の生育を阻害するという研究や、ミミズの体内から薬の成分を抽出したり、さらにミミズ自身を高タンパクの食料として利用する研究もある。
・またミミズの蠕動運動による前進は、狭いパイプの中などを移動できるので配管を検査するロボットに採用したり、月面などの低重力下での掘削ロボットとしての開発も進んでいる。
・NASAの最新の報告では火星を模した環境でミミズの繁殖に成功したというものもある。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ非常に優れた生き物であるということは良く分かるが、やはり生理的に抵抗があるのはどうしようもない。なお食用ミミズの話ですが、確かにアフリカなどでも食べられていると聞いたことがある。なお昔、マクドナルドのハンバーガーがアフリカの食用ミミズを使用しているという都市伝説があった。
・もっともアメリカでパテなどに使われるピンクスライムなんかを見ていたら、食用ミミズと大差ない気もするが。

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