北欧のヴェルサイユ
今回の世界遺産スウェーデンの湖上にある北欧のヴェルサイユともいわれる美しい王の居城、ドロットニングホルムの王宮である。広大なフランス式庭園を持ち、華麗なる室内装飾は王国の権威の象徴である。
ストックホルムは小さな島々が橋でつながれて水門が築かれた水の都である。ここは500年前に王国の都となった。ここに王宮があり、国王の執務や国の行事が行われる。しかし国王が暮らしているのはここでなく、メーラレン湖に浮かぶ島であるドロットニングホルムに40年前に移っている。広い庭があり、子育てに適した環境を求めた結果だという。
ヴェルサイユを思わせる広大な庭園はフランス式庭園であり、長さ720メートル、幅180メートルもある大庭園である。350年前に工事が始まり、噴水は14もある。この庭園が完成した後、隣に自然の風景を再現したイギリス式庭園が作られた。沼地を整備して、十数種類の樹木を植えたのだという。二つの庭園を合わせると90ヘクタール、東京ドーム19個分の広さがある。
宮殿にある中国風の館
宮殿は元々は16世紀に立てられた夏の離宮だが、今の姿になったのは300年前だという。中には庭園に続く通路や吹き抜けの階段があり、彫刻や絵画が内部を飾っている。部屋数は220、金箔を施した装飾がなされている。礼拝堂では王家の儀式が今でも行われている。ここは王家の生活の場である。
この中には中国風の館もある。18世紀に東洋への憧れが中国趣味を産み、中国の館といわれる建物が建てられた。内部には東洋の装飾品が飾られ、スウェーデンの画家が感じを真似て書いたものまである。ここは王が王妃のために建てたのだという。その王妃はロヴィーサ・ウルリカ。18世紀半ばにドイツから来た好奇心旺盛な彼女は、世界中の知識をかき集めたという。蔵書の数は7400もある。中国に船を送ってイギリスやオランダと争って磁器やシルクを輸入したという。これらで館を飾ったのである。
彼女の息子が偉大なる国王・グスタフ三世である。20年の治世で社会福祉事業に力を入れ、言論の自由の確立に力を入れたという。そしてもっとも偉大な功績がスウェーデンアカデミーの創設だという。ここで今でもノーベル賞の選考が行われている。
ドロットニングホルムには世界最古の宮廷劇場も存在する。18世紀から変わらない舞台装置がまだ健在である。ここにイタリアやフランスから檄団を招いて国王が鑑賞したという。
忙しい方のための今回の要点
・世界遺産のドロットニングホルムの王宮はスウェーデン国王の生活の場である。
・湖上に築かれたこの宮殿は、16世紀に夏の離宮として建てられたが、40年前に子育てに適した環境を求めた国王がここに生活の場を移した。
・ここには広大なフランス式庭園とそれに隣接するイギリス式庭園があり、その面積は合わせて90ヘクタールもある。
・また中国風の館は18世紀に国王が王妃ロヴィーサ・ウルリカのために建てたもので、彼女は中国に船を送って磁器やシルクを輸入した。
・彼女の息子が社会福祉事業や言論の自由の確立に力を入れた偉大なる国王・グスタフ三世である。彼が設立したスウェーデンアカデミーでは今でもノーベル賞の選考が行われている。
・また王宮内には世界最古の宮廷劇場が残っており、今でも18世紀から変わらない舞台装置が生きている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・北欧のヴェルサイユとはまさにそのままで、確かにあの庭園を見たらフランスの宮殿だと思う。もっとも周辺の風景はあからさまに北欧のそれであるが。
・グスタフ三世は専制君主でありながら啓蒙君主であることから専制啓蒙君主といわれているとか。政治形態は国王親政だが、言論の自由を法律化したらしい。なかなかに複雑な人物のようである。
次回の世界遺産
前回の世界遺産