教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/6 BSプレミアム ダークサイドミステリー「「学校の怪談」子どもがささやく怪異の闇」

学校の怪談の発祥

 バブル時代の日本で流行したのがいわゆる「学校の怪談」。その話には様々なバリエーションがあるが、子どもにとって日常生活の舞台の一つである学校が怪談の舞台となったのである。

 ブームのきっかけとなったのは1990年に発行された子ども向けの2冊の本だという。一冊はその名もそのままの「学校の怪談」。講談社から発行されたこの本は各地で伝わる学校に纏わる怪談を集めた物で、夜の美術室でモナリザに首を絞められたとかの定番どころの話が掲載されている。もう一つはポプラ社から発行された「先生にあいにくる幽霊」は少し長い怪談を物語として描いており、壁に浮かび上がった謎の染みがかつてこの学校で病気で吐血して死んだ先生のものだというエピソードなどが掲載されている。民話のような描き方であるが、実際にこれらを描いたのは民俗学者であり、そもそもは学術的研究として題材を集めているという。そしてこれらの本が出版されてアンケートを集めると、あちこちからあらゆる怪談エピソードが寄せられたとか。

 このような学校を舞台にした怪談はいつ頃から生まれたかだが、もっとも古い事例は明治35年のもの八代のものが記録されており、それは便所から手が出てくるという定番のものだという。明治45年の遠野のものは見知らぬ子どもが一人混ざっているというものである。八代のものはカッパ伝説がベースになっており、遠野のものは座敷童子など元ネタが比較的明確であり、学校独自のものではないという。それが都市に人口が集まりだした頃に、都会の学校の寄宿舎などで独自の話が伝えられるようになったという。それは「学校七不思議」の類いで「あかずの便所」「十三階段」「鳴り出すピアノ」という今日でも定番になっているものが多いが、各学校でのオリジナルなものも多いという。

 

 

戦後にエンターテインメント性を増す

 戦後になって学校が大人数の集まりの場となった頃に流行しだしたのが「赤い紙 
青い紙」というもので、一人でトイレに入ると紙がなく、上から「赤い紙がいいか、青い紙がいいか」という声が聞こえるのだという。赤と言えば血まみれになって死に、青と言えば体中の血が抜かれて真っ青になって死ぬというものである。このような挑発、反応、結果を伴うのは民話のお約束の形だという。しかしそれが時代が進むと選択肢に黄色が増え、それを選ぶと助かるというパターンになるとか。助かる選択肢が増えることでただの恐い話からゲーム感覚になったと分析している。なお黄色だと助かると言っていたが、私が以前に聞いたパターンでは黄色はキ印で頭がおかしくなるという結果だったのだが・・・。

 なお学校の怪談の舞台となる場所は第10位が職員室、第9位保健室、第8位プール、第7位宿泊施設である。プールなんか定番の夜に一人で泳いでいると足を引っ張られるというものだが、夜に学校のプールで一人で泳ぐシチュエーションが想像できん。第6位は運動場で、ここで出てくるのがド定番の走る二宮金次郎。第5位は体育館、第4位は通路(廊下ってことか?)だという。そして第2位は音楽室や理科室などの特別教室で、夜に鳴るピアノとか動く人体標本などのド定番が登場、そして第1番がやはりトイレ。ここで登場が学校の怪談のスーパースターであるトイレの花子さんである。ちなみにすっ飛ばした第3位は普通教室で、ここで何かが起こるのは時間や特定の儀式などの制約があるのが特徴だとか。

 なおスーパースターたるトイレの花子さんは、最初は呼びかけに応じるだけだったが、その内に首を絞めたり傷付けたりなどと攻撃的に変化したりして子どもがスリルを求めるようになったとか。さらには今度は逆に子どもを助ける鬼太郎のようなヒーロー的存在になったりかなりエンターテインメント性を増すことになったが、これが逆に学校の怪談ブームを終わらせることになったのではとの分析をしている。

 ちなみに現代の学校の怪談であるが、今日では時代に対応してネット世界から現れる妖怪の類いが登場しているとか(テレビから登場する貞子か?)

 

 

 以上、学校の怪談についての分析。確かに学校の怪談はブームと言われるような一種の社会現象になった感があるが、実際に私が小学生だった1970年代にも既に存在していた。基本は日中は多くの人で賑わっているのが、夜になると全く人気がなくて静まりかえるというそのギャップに起因していたように感じる。ちなみに私の通っていた小学校など、裏が墓地で廊下の窓から常に墓地が見えているようなところだったので、その手のエピソードには事欠かなかった。もっともこのおかげで私は墓地は見慣れていて心理的抵抗が全くないので、山城巡りでいきなり墓地に出くわしてもギョッとすることがないのであるが。
 学校の怪談が社会的ブームとなり、エンターテインメントになったことで、そのものズバリの「学校の怪談」という映画やアニメも出たが、

     
こういう映画がありました

それをネタにした漫画なんかも結構あった。

     
学校の怪談ネタ漫画では、これが一番記憶に残っている

 

 

忙しい方のための今回の要点

・学校の怪談ブームは1990年に発行された2冊の本がきっかけとなっているが、それらの本はそもそもは民俗学者が研究素材としてエピソードを集めたことが元になったものだった。
・学校の怪談自体は古くは明治35年の記録があるが、当時のものは明らかにその地の民話をベースにしたものであった。
・都市化の進行で人口が集まってくると、学校の寄宿舎などで学校独自の怪談が語り継がれるようになり、その中には「あかずの便所」「十三階段」「鳴り出すピアノ」などの今日の定番もある。
・戦後になると「赤い紙 青い紙」などが登場するが、これも民話の定番の形を取っているという。さらにこれらは進化し、黄色を選ぶと助かるパターンなどゲーム性を帯びるようになる。
・学校内での怪談の舞台はやはり1位はトイレであり、そこからトイレの花子さんが登場する。最初は呼びかけに応じるだけだったのが、危害を加えてくるバターンが発生したり、逆に子どもを守るヒーローになったりなどのエンターテインメント性を増す。
・学校の怪談は結局はエンターテインメントコンテンツとして消費されてブームが終了するが、今日では時代に合わせてネットから妖怪が登場するなどのパターンも見られるとか。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあこの手の定番はいつの時代でも消えないでしょう。学校もさることながら病院なんかも定番舞台ですが、病院の方は夜でも無人にならないので、定番は廃病院など。
ちなみに国会には昼間っから人の生き血をすする妖怪が跋扈してますが。こちらは桃太郎侍にでもぶった切ってもらうしかないか。

次回のダークサイドミステリー

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