地球外生命探査のための大型国際プロジェクト発動
木星の月の生命探査を目的として、23カ国2000人以上の研究者の国際協力でJUICE(JUpiter Icy moons Exploler)が間もなく打ち上げられるという。今回はそのJUICEについて紹介。
木星には92個の衛星があるが、その内のエウロパ、ガニメデ、カリストには海があると考えられている。これらの衛星の表面は氷に覆われているが、木星の重力によって星が歪む時の摩擦熱で、この氷の下には海があると推測されている。そこでその海に生命が存在するのではないかとのこと。JUICEはかなり大型の探査機で、多くの観測機器を搭載している。これらの機器を駆使して多方面から生命の痕跡を探査するのだという。
JUICEが最も綿密な観測をするのはガニメデ。ここは以前の磁場の探索で海が存在すると考えられている。JUICEはガニメデの表面にレーザーを発射して、その往復に掛かった時間から距離を測定するガニメデレーザー高度計GALAを駆使して表面の地形を詳しく調べるのだという。重力による地表の変形から内部の構造が推測できるという。その精度は東京と大阪から1メートルの差を検出するレベルとのこと。
生命指標を見つけるための試み
ただ海があっても生命に必要な物質が存在しないと生命は生まれない。そういう点で生命存在の可能性が最も高いと注目されているのはエウロパだという。エウロパの南極から水が噴出しているのはハッブル望遠鏡でも観測されており、海の底には熱水噴出口があるのではと推測されている。エウロパの海はマリアナ海溝の10倍の100キロもあるという。実験によるとこの深海で水圧と温度によって岩石から水素が生まれるということが分かっている。水素が存在すると微生物の餌となる。サブミリ波分光計SWIを使用することで地下から噴出した海水や大気の成分を分析して量を調べるのだという。さらにこれで分子の種類を分析できる。特に注目しているのが硫化水素で、硫酸還元菌が存在すれば硫酸と水素から硫化水素を生み出すので、これが生命の可能性(生命指標)の検出につながるのではという。
また海の歴史を木星のオーロラを使って解明しようという研究がある。オーロラからはプラズマが発生しているので、これが衛星の表面に当たることで宇宙風化と呼ばれる変化が起こるのだという。この進み具合で表面に噴き出した海水がいつ噴き出したか、どう組成変化したかなどに迫れるという。JUICEには電波・プラズマ波動観測機RPWIが搭載されているので、宇宙風化の元になるプラズマの量などが細かく観測でき、これによって宇宙風化が詳細に調査できることになる。
ちなみにJUICEの打ち上げは今月中、観測が始まるのは8年後とのこと。
地球外生命探査と言えば夢物語のような印象だったが、ついに現実的に始動し始めたようである。特にエウロパには生命がいるのではというのは最近でもSFのネタになり続けたのだが(A.C.クラークの「2010年」など)、いよいよそれを本当に確認できるようになったか。
なお2010年は原作小説も映画も私は見ましたが、例のツァラトゥストラが高らかに流れる「2001年宇宙の旅」と違って、普通に良く分かり理解できる作品でした(笑)。
忙しい方のための今回の要点
・木星の衛星に生命の痕跡を調査するために国際協力による探査機JUICEが今月中にも打ち上げられる予定である。
・木星の衛星の中でもエウロパ、ガニメデ、カリストには氷の下に海がある考えられており、ここに生命が存在すると期待されている。
・ガニメデではレーザー光線で地表を精密に観測することで、衛星の内部構造を調査することが試みられる。
・もっとも生命存在の可能性が高いと考えられているエウロパでは、サブミリ波分光計SWIを使用して、地表に噴き出した海水や大気の成分を調査、生命指標の検出につなげることを目指している。
・また木星のオーロラから降り注ぐプラズマを精密に測定することで、プラズマによって発生する衛星表面の変化(宇宙風化)を分析することで、衛星の海の歴史を解明することも目指している。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・科学の進歩はすごく、新たな発見によってそれまで定説は次々と覆ったりしてますが、今回の探査でもまた大きな発見が生じることが期待できます。要注目ですが、8年後ですか・・・結果が解析されて発表されるのは10年後ぐらいですね。私は生きてるかな?
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